時間の翼
あれから随分と時がたったと思った。私がそう思ったのは、我が子達を寝かしつけて、その寝顔を見て微笑んだ時だった。懐かしい……。
私、エミリア・ウィシュターニアが責任の2文字を意識しだしたのは弟ウィズが産まれた頃だ。初めて見る赤ちゃんはお猿さん見たいなお顔をしていた。
「父が居ない時はエミリアお前がこの子を守ってあげるんだよ」お父様は、優しく私の頭を撫でてくれた。
お父様が英雄になられたのは、それから間もなくだった。あとを追うようにお母様も……。帝国の武の象徴であるウィシュターニア公をいつまでも空位にするわけもなく母方の叔父バルトーニア公メイビスを後見に私は、齢8歳でウィシュターニア公女となった。それは重圧だった。叔父の助けがあっても。幼い弟の姉であり母でなければならない自分と大貴族の当主である自分との狭間で揺れていた。そんな時叔父のメイビスが戦地から赤ん坊を拾ってきた。その子は、私の腕に収まると笑顔を見せてくれた。「血よりも濃い絆。それが初代ウィシュターニア公の家訓だよエミリア」叔父上は、そう言った。ウィシュターニア公家の当主になって半年が経った頃叔父上は、今度は女の子の赤ん坊を連れてきた。「エミリア、この子を君の妹にして欲しいんだ」叔父上は、そう言った。断る理由など無かった。私はこの子をメアリーと名付けた。良いことがあれば、悪いことも続くもので父方の伯父夫婦が不慮の事故で亡くなり幼い赤ん坊だけが残された。私は、迷わずその子を引き取った。
ウィズ、エドワード、メアリー、スノーは私にとってかけがえのない存在となっていった。
子供たちは可愛い。あの子たちの為なら私はなんだって出来る。ある日あの子たちの様子がおかしく朝食を済ませると4人でどこかへ行っくので子猫か何かを拾ってきて隠れて飼っているのだと思い私はあとをつけることにした。やはり中庭で何かやっている。「何してるの?」突然うしろから、しゃべりかけられ4人はびっくり仰天。エドワードにいたっては少し漏らしていた。
4人の奥にはゆりかごに入った赤ちゃんが泣いていた。「本当に何してるの!!この子どこから拾ってきたの?」私は、呆れながら聞いた。「姉様、ごめんなさい。でもこの子捨てられていたから」ウィズが謝る。「まったく……なんで私に相談をしないのですか?」私は、ため息をつきながら聞く。
私は泣きじゃくる赤ちゃんをあやしながら、名前は?と聞くと。「わかんなーい」とメアリーが言った。私は、困った。その時エドワードが「うーんとね、ロイネットにする!」
と言い出した。私は、ロイネットを抱き抱えながら「ロイネット良い名前ね」と言うとロイネットは嬉しそうにキャッキャッと笑った。「ロイネット、これからよろしくね」私は、ロイネットにそう語りかけた。
時は経つのは早く。私は17歳で正式にウィシュターニア公女となり、同時に帝国軍少将に任官され女性だけで構成された【女剣隊】を創設し数々の戦いに従軍した。そして子ども達は私の背中を追うように軍人への道を進んでいき私も中将、大将へと出世していきついには、初の女性にして最年少の帝国軍最高指導者である参謀総長に就任する。
でも私の全盛期はここまでだった。
私は全てを捨てて弟ウィズに重荷を背負わせて逃げた。私は、ただひたすらウィズに謝る。涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていようと関係なかった。
結局私は弱い人間だった。心を戦場に忘れてきた弟を見てられなかった。「姉上、私は大丈夫。心配しないでください」
ウィズは優しい子だ。私は弟の優しさに甘えたのだ。そうして私は故郷であるウィシュターニア城に引きこもり、私は罪悪感の孤独の日々を送った。暗く先の見えない未来に光が差したのは没落した貴族の屋敷の引き継ぎの為出向いた時だった。一様は、私も公女であり弟の名代として出向いたが、そこで天使が舞い降りた。赤ん坊の鳴き声……。1人取り残された赤ん坊を抱き上げた私の頬には涙が流れていた。この子を育てよう。「貴女は、私の子です。私が守ります」私は何の躊躇もなく決断した。
それから、貴族の御落胤だったユリナンテ、戦争孤児となっていたユリウスを引き取った。あの子達が私に幸せの時間をくれた。この子達が私に明日へと向かう翼をくれた。
そんなことを考えていると可愛い寝顔をしているビオーネがニッコリと笑う。「マ……マ大好き……」
「あら、お可愛い寝言。ママもねアナタ達のことが大好きよ」私はビオーネの額にキスをすると再び眠りへとついた。




