無剣の太刀
「素晴らしい……」
ベルモットはそう言うと、不気味に笑いウィズの攻撃を受け流す。ウィズは構わずに何度も切りつけるが当たらない。「くそ!なぜ当たらんのだ!?」
その様子を見ていたライオネルスが言う。「落ち着け、闇雲に攻撃しても無駄だ中将殿!」
ウィズは一旦距離を取ると呼吸を整える。そして再び空の斬撃を放つ。しかし、またしても避けられてしまう。その後も何度も攻撃を繰り返すが全て防がれてしまった。
「はぁ……はぁ……何故だ?」
するとベルモットは答える。
「薬の効果さ」「!!!」その瞬間、ウィズは、激しく吐血する。「おのれ……」身体が崩れ落ち足が痙攣し力が入らない。「ウィズ殿!」ライオネルスが駆け寄ると、彼はウィズを支える。
しかしライオネルスも同じように血反吐を吐く。
ウィズは苦しみながらも答えた。「不覚だ……奴の薬で動けなくなった……無念だ」
ベルモットは笑いながら言った。「どうやら私の勝ちみたいだね。今度は白銀の騎士君が踊るかい?」
ウィズは悔しそうな表情を見せ、ウィズは言った。「ウィシュターニア公の名において貴様を捕縛する」すると彼の中で何かが燃え上がるような感覚を覚えた。それはまるで心の中に眠っていた闘志。否内なる狂気が呼び覚まされたような感覚だった。ウィズは立ち上がると空の剣を高く掲げた。「無剣の太刀【空螺一閃】!!」その瞬間、ウィズの身体から凄まじい光が放たれた。それはまるで稲妻のようであった。そしてウィズはベルモットに向かって突撃し、その一撃を繰り出した。
「ぐわぁ!」ベルモットはその攻撃を受けて吹き飛んだがすぐに立ち上がった。「まさかここまでやるとはね…しかし所詮は刃の無い架空の剣技傷は浅い」ベルモットは余裕の表情を浮かべていた。その瞬間、ベルモットの体に異変が起こった。
「何だこれは……」彼の体が徐々に焼かれていくのだ。その業火はベルモットの皮膚を焼き尽くすだけでは飽き足らず骨までも燃やし尽くした。「ぐわぁぁぁ!」ベルモットは悲鳴を上げた。ウィズは火に近づいていく。『空螺一閃』、この技は斬撃ではなく文字通りの螺旋状の刃。その刃を持たない斬撃は相手の体内に直接放たれるのだ」ベルモットは苦しそうにもがく。「おのれぇ!」ベルモットはウィズを睨みつけた。
しかし次の瞬間、ベルモットの体は砕け散った。その体が灰へと変わっていくのをライオネルスはただ見つめるしか無かった。
ライオネルは安堵の息を吐いた。ライオネルスが振り返るとそこにはウィズの姿があった。「大丈夫か?」「ああ、なんとかな」ライオネルスはふらつきながら答えた。「それにしてもあの薬は一体なんなんだ?」ウィズはベルモットの亡骸を見つめながら言った。「おそらく奴の作ったものだろう」
ライオネルスはウィズを見つめた。
ウィズはライオネルスの視線に気づいたのか、慌てて言った。「いや……なんでもないよ」ライオネルスは彼の態度に違和感を感じながらもそれ以上聞かなかった。「さて、帰るとするか……」
ベルモットとの死闘を終えた二人は帰路についた。ライオネルスは思わず呟いた。「これで終わったのか?」ウィズは答える。「いや、まだだ。奴なら消し炭からでも蘇るかもしれんな」「何?」「あの男は帝国を脅かしている……それに奴が与えた恐怖によって帝国の民が苦しんでいる……」
二人はベルモットの脅威を感じながらも次の行動に移る決意をしたのだった。中将邸に戻ると自室の扉を開けた。
「今、帰ったクレア」クレアは、驚いた瞳でウィズの、胸に飛び込んできた。「風呂に入ってないから血生臭いぞ」
「いいのです。貴方が生きていてさえすれば」ウィズは、潰れてしまう程に強くクレアを抱き締める。
「閣下!!」場の空気を乱す声。声の主は、奴しかいない。「エドの
奴。次は、何をやらかしたのだ!」
エドは、ユリナンテをおぶったままウィズの前に現れた。
「何だアホ。少しは、黙って行動しろ」 「これをご覧ぐださい!」
エドが見せた紙……書状には、以下のことが書かれていた。
「帝国陸軍少佐。エドワード・オルスタインとガルム参謀総長の息女アリッサの婚約?何だこれ」「こっちが聞きたいのです!」「けっこん!」慌てるエドにはしゃぐユリナンテ。「これ、誰から貰ったのだ」
「姉上からです」
ウィズは、頭を抱える。
「とにかく直ぐに断らなくては!」
エドは、驚きの声を上げた。




