外相殺し
「貴公は、今回の暗殺の件どう思う?率直に申して良いぞ」
「・・・・これはあくまでも私の考えですが、おそらく反帝国派の差し金かと思われます。帝国内に潜んだスパイの仕業かと」
ガルムは、深く息を吐き意を決したように語り始めた。
「ウィズ中将・・・今回の外相暗殺は、我が軍にも責任がある」
「閣下それは一体?・・・」
「帝国士官学校の在籍生がユスタリス神聖国と内通している」
ウィズは、眉ひとつ動かす事なくガルムに聞き返す。「士官生がですか。その根拠は?」「外務大臣が殺された時、その士官生は諜報部に拘束されていたが直後に自殺した」ウィズがタバコを咥えるとすかさず近くにいた将官が火を付ける。「それは、初耳ですな。参謀総長、仮にも私は教育長官ですよ。士官生が自決して事後報告など沽券に関わります」「まぁ続きを聞け。諜報部からの報告では、死んだ士官生が最後に接触したのは、第三師団所属デミトリ准将という事がわかっている……」「そのデミトリ准将とは?」ガルムが葉巻に火を付け煙を吐く。「以前より諜報部及び暗部がユスタリスと繋がっているとマークしていた人物だ」「暗部までも動いているなら早く処分すればいいものを……わかりましたよ私に考えがあります」「考え?」ウィズは、タバコの火を消しガルムを睨み付ける。
「教育長官の職を辞しデミトリの首を取りましょう」「それは、ありがたいが……貴公はそれで良いのか?」
「えぇ。私もそろそろ潮時だと思っていましたし」
「そうか……では、教育長官の後任には、私の信頼している人物を推薦しよう」
「ありがとうございます」ウィズは、深々とガルムに頭を下げるとそのまま部屋を出て行った。外務省から貴族の邸宅が並ぶローズマリア地区にあるウィシュターニア公邸通称【中将邸】に帰還したウィズは、4人の側近を執務室に呼んだ。
ウィズは、軍帽と軍服をスノーに渡し自席に座り面倒くさそうな表情で煙草に火を付け白い煙を天井に向けて吐いた。するとノックがされた。
「入りたまえ」ウィズの返答とともに軍服姿の3人の男女が部屋に入ってきた。
「閣下お呼びでしょうか」最初に発言したのは、エドワード・オルスタイン少佐だった。
「相変わらずだなエド」
「はっ元気だけが私の取り柄であります」エドは、人懐っそうな微笑みを浮かべる。
「まぁそうねそれしかないものね貴方・・・」次に話し出したのは、メアリー・ノットノア大尉であった。メアリーは、女性ながらウィズの側近としていた活躍する女傑である。
「なんだと!」「貴方が自分で言ったんじゃないの」
メアリーは、ゴミを見るような目をする。
「そこまでにしておけ」
「はっ申し訳ありません」
「メアもあまりエドをいじめるな」
「少し控えます・・・」
「外務省で何かあったのですか?」
最後に話し出したのは、ロイネット・ケリーノ少佐だった。
スノーを含めるこの4人は、ウィズと共にウィシュターニア公女エミリアに育てられた兄妹であり、ともに数々の戦いに従軍してきた最側近である。
「デミトリと言う第三師団に所属しているアホに唆された士官生が外相を暗殺して参謀本部はそれを影で指示したのが私だと思っているようだ」
「それは、馬鹿な奴らですね」とエドワード。
「ああ愚かの極みだ」ウィズは、煙草を吸いながら答える。
「ですが馬鹿な奴ほど死ぬときは、一瞬ですものね」
メアは、クスクス笑いだす。その姿を見てエドがジト目で睨む。
「でだこの馬鹿げた騒ぎを終わらすために俺はある行動にでることにした」
それを聞いた4人は、怪訝な顔をする。
「なんですか?」代表してエドが聞く。
「近いうちに戦争だ」ウィズは、笑いを堪えながら4人を見る。
「戦争ですか?」
「ああそうだ」
「それで何と戦うのです?まさかユスタリス神聖軍とか言わないですよね?」ロイネットが驚愕して聞く。
「それは、面白いな・・・そうするか・・・」とエドが不謹慎に答える。
「そうね最近ストレスが溜まっていたところだからいいかもしれないわね」メアも賛同する。
エドワードは、メアの発言を聞いてギョッとして止める。「メア、冗談だよ!そんなことしたら中将閣下がユスタリス神聖に命を狙われるじゃないか!」とエド。
「そうねそれは、面白くないわね」メアは、思案する。
ロイネットは、ニコニコしながら頷くだけである。
「まぁいい戦争といっても我々は、直接には戦わないがな」
4人が首を傾げる。
「まぁ黙ってみていろ・・・」ウィズは不敵な笑みを浮かべた。