帝国軍西へ
大陸暦424年1月13日
帝国と神聖国との戦況が、動いたのは、つい昨日の事だった。それは、外相公女エミリアによってもたらされた。「やはり、外交ではダメでしたか」帝国摂政イルマがため息を吐く。「はい。現在神聖国軍は西部ウィシュターニア地方フルバーニア高原に進軍中です」「となると、傭兵国家タルタロスも動くでしょうね..……」イルマは、暗い顔をする。「まずは、帝都にいる軍将官を呼びよせましょう」「そうですね……確かに私だけでは、判断が出来ません」そして、直ぐに主な将官達が帝城スタンベルに集められた。
帝国軍最高司令官ガルム参謀総長。
帝国騎士団ライオネルス騎士団長。
四公メイビス公。同じく四公アリア公女。大将グレイ・ジャッチメルバ
アルストリア書記長。そして、ウィズとエミリア、アリエルが出席した。
「エレラルド海軍総督は海の上。四公ボルケーニア公はアストロ諸国連合の抑えで不在……今帝都にいる軍勢はどれ程いるのですか?」
「動かせる軍勢は、ざっと5万程です。残り3万程は、帝都の守備とタルタロス軍の抑えとして残しておくべきかと」ガルム参謀総長が答える。
「敵の数は?」グレイが尋ねる。
「6万〜8万と報告を受けています」
「大きく出たな……第二次東西戦線の時くらいの軍事行動だ」メイビスが、ため息を吐く。
「でも、僕が提供したアレが、あれば数なんて関係ないでしょ?」
「アレですか?……しかしまだ実用的ではないかとリターニア公女様」
「アルストリア書記長、アレとは?」「リターニア公女様が発明された兵器ですウィシュターニア公」
「それは、どういった兵器なのだ?」ウィズが煙草に火を付ける。
「戦う車。名付けて【戦車】さアルベルトくん」アリアは、あまりない胸を張る。「それが、あれば戦況が変わると?」「もちのろんさ、騎士団長さん」「しかし書記長は、まだ実用的ではないと……」「まぁまだ実績がないからねおっぱいちゃん」
「誰かおっぱいじゃ!!」アリエルが顔を真っ赤にし席を立ちアリアの方に向かうもアルストリア書記長とエミリアに止められる。
「落ち着けバルベルデ嬢。じゃれ合いは、戦が終わった後でも良かろう」メイビス公が豪快に笑う。
「話を進める」ガルム参謀総長が葉巻に火を付ける。「まず、ライオネルス騎士団長とグレイ将軍には帝都の守護を頼みたい」ガルムが二人の将官に言う。
「ふむ……わかった」「承知した」二人は同時に頷く。
「東の抑えは、バルトーニア公にお願いしフルバーニア高原への進軍は、儂率いる本隊とウィシュターニア公、リターニア公女が率いる軍が神聖国軍を殲滅する。エミリア公女とアルストリア書記長は、戦後処理の準備を」「一切承知」エミリアは、短く返事しだ。
「ウィズ中将、貴殿には全軍の作戦指揮をお願いしたい」ガルムがウィズに向き合う。
「了解した」ウィズは、煙草の火を消す。「ライオネル騎士団長、イルマ様を任せたよ」「無論です」ライオネルは頷く。
「では、解散とする。各自持ち場にて待機してください」
イルマの一言により全員が席を立ち、帝城スタンベルを後にした。そして、帝国史上最大規模の戦争が幕を開けるのだった。「さて、戦争の準備だ」ウィズは、そう呟き帝城スタンベルを後にした。
中将邸は、軍備の準備で慌ただしくなっていた。「アルベルトくん、これ頼むね」アリアが書類をウィズの机に置いた。
「あぁ……わかった。これは?」ウィズは、一枚の紙を手に取る。
「それはね、戦車の発注書だよ」が笑顔で言う。
「戦車……?それってもしかして……」嫌な予感がするウィズは冷や汗をかき始めた。
「うん!今回の戦争にはどうしても必要だからね!」アリアはニコニコとしながら話す。「わかった」ウィズは、短く返事をして執務室を出て寝室に向かった。そこでは、心配そうに窓を見ている妻クレアがいた。「クレア……」ウィズは、優しく抱き寄せる。「大丈夫よ、旦那様」クレアも夫の体に手を回す。
「あぁ……大丈夫だ。帝国軍は無敵だ」ウィズは、自分に言い聞かせるように呟いた。「そうですね。旦那様は、帝国軍の英雄ですもの」クレアは、ウィズの唇に自分の唇を重ねる。「あぁ……そうだな」ウィズは、再び妻を強く抱きしめた。「あっ……旦那様」クレアは、ウィズに押し倒された。
「すまん……我慢出来ないんだ」
「いけません……今は貴方様が帝国軍の実質的指揮官ですよ。それが……」「構うものか。見せつけてやればいい」ウィズが口付けしようとするとクレアの手がそれを邪魔をする。「できません」「何故だ?」
「その……お腹に貴方様の赤ちゃんがいます」「な!!」ウィズは、固まって動かなくなった。




