軍事国家グラディウス帝国
軍事国家グラディウス帝国は、250年ほど前に十字大陸
【グランドクロス】に建国された国家であり皇帝と4人の忠臣(四公)によって治められてきた。
そして現在公家の若き当主、ウィズは、帝国の軍事力を支える重要な存在である。彼は、初代剣神ウィシュターニア公の血を引き、代々帝国の東部を治めるウィシュターニア公爵家に生まれ、幼い頃に両親を亡くし、姉のエミリアによって英才教育を施され、士官学校を首席で卒業し、戦歴を重ね、中将まで昇進する。
しかし、第三次東西戦線での過酷な戦いで、ウィズは多くの命を奪い、地獄を見た。帰国後、和平協定が結ばれたが、形だけの平和であることを知っていた。
ー大陸暦423年4月12日ー
新聞に和平協定を成功させた帝国の外相が殺害されたと書かれているのを目にする。ウィズは、若い過激派の将校たちが犯人だと考え、怒りを覚える。
グラディウス帝国には、皇帝を頂点に3つの機関がある。軍の最高機関であり、各師団を持つ【軍政省】。
外政、財政、法政などを司る
【内務省】。皇帝直轄の騎士団
【帝国騎士団】がある。その中でも軍政省がもっとも権力があり、四公の子孫で東西南北を治める大貴族が従える帝国が誇るウィシュターニア公軍を率いるのが、ウィズである。ウィズは、他にも軍政省の直轄であり軍人育成機関
【帝国士官学校】の最高責任者である教育長官を兼務していた。その後、軍本部から帝都スタンベルにある外務省に呼び出される。秘書官のスノーと共に軍用車に乗り込むが、ウィズはため息をつく。彼は、外相が殺されたことについて、何かしらの責任を負わされるのではないかと懸念していた。「教育長官など姉上に押し付けられて引き受けるんじゃなかったな……」ウィズは、タバコを咥えて火を付け白い煙を吐く。
「閣下。まだ、将校達の仕業とは判明してません」「今の若者は、戦争の恐ろしさなどわからないだろうな」ウィズの視線の先では子供達が遊んでいる。「あの子達に我々のような重荷を背負わせたくない……なのにその役目を担うはずの将校達は無下に戦争の引き金を引こうとする……悲しい限りだ」「閣下、それは我々も同じです。戦争を終わらせる為には、戦わなければいけません」スノーは、静かに答える。ウィズは頷きながら、タバコの火を消す。「軍事国家……か。戦わなければ生き残これない」「閣下……気を病まれませんよう。もう目的地です」外務省に到着すると衛兵が軍用車の扉を開けた。
車から出ると衛兵は、敬礼をしウィズも答礼をした。「御苦労」
「はっウィシュターニア公閣下。外務大臣室でガルム参謀総長並びに参謀本部将官の方々がお待ちであります」ウィズは、眉間に皺を寄せ怪訝な顔をして衛兵に尋ねる。
「なぜにガルム参謀総長が外務省で私を待っているのだ?」衛兵は冷や汗を掻きながら弁明する。無理もない誰だってウィズを前にすれば
一言一句を聞き漏らさず尚且つ言葉の意味を理解しなければならない。それは、死に直結するかもしれないからである。
「こ、この度の外相暗殺の件では参謀本部が動いているとのことで参謀総長閣下自らが指揮を取るとのことでありまして・・・」
「あいわかった。御苦労だった」
「はっ失礼します」衛兵が去りウィズとスノーだけが残った。
「ガルムめ。私に何をさせるつもりだ。食えん男だ。わざわざ外務省まで出ばって来て」「何にせよ面白い話ではないでしょうね」
「まったくだ。外務省などあってないようなものだ。糞の役にもたたん」ウィズは、軍帽を受け取り深く被る。「お口がお悪いこと・・・。
さぁ閣下がお待ちになっているので考え事は、歩きながら考えましょう」2人は、歩き出した。
外務大臣室の前には、左右に衛兵が警備していた。衛兵達は、ウィズ達に敬礼する。
「御苦労。ガルム閣下は中かな?」
「はっ中でお待ちであります」
「御苦労」ウィズは、扉にノックする。「入りたまえ」返事とともに衛兵達が、扉を開けた。「ウィズ・フォン・アルベルト・ウィシュターニア入ります」
外務大臣室には、ガルムとシルバ参謀補佐官の他に数人の将官が直立不動の姿勢で敬礼をしている。ウィズは、軽く答礼し改めて自己紹介を済ませる。そしてガルムに目線を配り尋ねた。「して私にご用事とは?参謀閣下」
「今回の外務大臣暗殺の件で参謀本部が動いていることは知っているな」
「えぇ勿論です」
「敵の正体は未だ不明だ。現在参謀本部から軍の派遣を要請しているところだがこれはまだ軍部内でも極一部しか知らないだ」
「私に何をお望みで?」ウィズがガルムの目を見据えて言った。
ガルムは、少し目線を上にして口をもごもごとしていた。そして言いづらそうに口を開いた。