はじまりはじまり
あの日声を聞いて以来今日まで、実のところ僕は妹を探してはいなかった。
僕だってお仕事しないと生きては行けない。
入社して今日で五年、時間を売って金を稼ぐのも悪くはないのではと思い始めている。
妹を見つけることができなくても僕は幸せなのだ。
使い切れない四十数万円を貯金する安泰な生活もいいものである。
「「なあんてね!!」」
妹が、そこにはいた。
「ごめんごめん。待った? 私は気が遠くなるほど待ったけど」
当時九歳、今年で十四になった妹だ。
「大成功だよ。すごいな、すっかり忘れてた」
「ひどい!」
膝のあたりまで伸びた髪は、玄関から入る風で揺れた。五年前のおふざけは幕を閉じ、ようやく本編に入れそうだ。
「まったくどうなることかと思ったんだよ!」
幼さのほとんど抜けた妹だけれど、五年間社会から離れていたせいか、活舌が少し悪い。
お気に入りのストラップを指にはめて生活する癖も、そのままだった。
「私が社会復帰するまで、面倒見てくれないと困るから・・・・あ、おつかれさまーフウガくんっ」
そういって琴南は架空の人物の名を呼び、仏壇を解体し始めた。
最後まで読んでくれてありがとう
プロローグはここでおしまいです。
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