⁑それぞれの夜(2)
ヴィンセントが、酔っ払いおっさん達を捌きながら、作ってくれたであろう料理を…僕らは、部屋で静かに味わった。
食事を終えて…僕らは寝室に向かった。
「お、また交流の報知が出てるな」
カイトは、例のデスクトップ画面を見ながら言った。
「さっき言ってたステーションかな?」
「ああ…そうだ」
「さすがウィルフリードさん、仕事が早いなー」
「200か…ちょっと先だな…」
200時間って事は…えーと、1週間くらいか?
もうちょっとか!?
未だに時間勘定には、全く慣れなかった。
「もうひとつあるぞ」
「本当だ…」
「ここも久しぶりだな…あれだ、こないだマテルが飛ばされたのって、ここだったんじゃないかな」
「へえー」
それはちょっと楽しみだな…
僕も、薔薇を見に行ったり…出来るんだろうか?
そんな事を思いながら、僕は訊いた。
「…今度は、平和な交流…なんだよね?」
「ああ、今回のはどっちも邪魔が入る事は、まず無いだろう…ま、もちろん警備には出動するし、油断は禁物だけどな…」
「…」
警備の仕事がある人は、相手のステーションに遊びに行くのはダメなのかなー
「お前のおかげで、ウチのレベルも上がったからね…この先も交流が増えると思うよ」
「…」
そうか…
ここだけでなく、他のステーションの…役にも少しは立ってるのか…
僕は、微笑みながら…小さく溜息をついた。
「ウィルフリードさん達みたいに、僕らも他所のステーションに行ったり…出来るの?」
「あーそうだなー…よっぽど安全が確認出来れば…交代で、ちょっとは行けるかもな」
やっぱり仕事最優先なのか…
カイトは、シュンとして俯いた僕の頭を撫でながら続けた。
「行きたいのか?」
「ちょっと…行ってみたい…」
「ルイスとヒューに頼んでみよう…今のあいつらなら、最前線を任せられるからな」
「ホント?」
パッと目を輝かせた僕を見て、カイトはふふっと笑って答えた。
「ああ…」
「ありがとう…」
そして僕らは…ベッドに入った。
暗くなった部屋で…僕らは、目が眩むくらいにお互いのコアを輝かせながら…力強く抱きしめ合った。
「本当に…お疲れ様でした」
「…お前もな」
同じ頃…
President階では…ウィルフリードとマテルが、静かにグラスを傾け合っていた。
「そう言えば…カイトも…偽物になっちゃったんだって?」
「ああ…そうらしいな…」
「不思議な事が…続くね」
「…ま、すぐに元に戻ったらしいから…よかった」
「貴方は…大丈夫だよね?」
「さあな…」
ウィルフリードは、笑いながら…マテルの肩を抱きしめた。
「俺に何かあったら…お前が次の総リーダーを決めてくれよな…」
「僕には無理だよ」
マテルは、ウィルフリードの頬を撫でながら言った。
「貴方は…どう思ってるの?」
「…」
「カイト?…それとも…」
ウィルフリードは、フッと溜息を漏らしながら言った。
「あの2人は…どっちも突貫的だからな…」
「あはははっ…確かに」
「いざと言うときに、冷静な判断を下せるには…まだまだ至らないな…」
彼は、遠くを見つめながら続けた。
「だからと言って…俺にそれが出来ているとは…到底思えないけど…」
「…」
そう言ってウィルフリードは、甘えるように…マテルの胸元に顔を埋めた。
「出来てるよ…?」
「そうか?…俺は…むしろお前の方が、実は適任なんじゃないかと思うんだが…」
「それこそ無理だよ…あり得ない」
言いながらマテルは…彼の頭をギュッと抱きしめた。
「だいたい、僕は絶対に…貴方を僕より先には死なせないからね」
「ははっ…そうだったな…」
そしてウィルフリードは…とても小さい声で続けた。
「万が一…俺が偽物になってしまったときは…」
彼は、マテルの背中に手を回した。
「お前が…俺の処分を…決めてくれ」
「…」
そのときの彼に…いつもの総リーダーの貫禄は、これっぽっちも無かった。
マテルは、そんな情けなく自分に甘える総リーダーを、優しく抱きしめながら言った。
「わかった…安心して」
「…」
気持ち良く酔っ払ったキーファーは、ふらつく足取りで、自分の工房に帰った。
「俺もリューイみたいに…シュッと飛んで帰れたらラクなのになー」
ブツブツ呟きながら…
彼はすぐに、バタンとベッドに倒れ込んだ。
青白い光が、ユラユラと揺らめきながら、横たわる彼の身体を包んでいった。
「あーテディがいるんだからな…俺もちょっと頑張れば、自力で飛べるようになるかもなー」
青白い光が、頷くように…ユラユラと揺れた。
「いや…でも…俺は飛べなくてもいいな…」
キーファーは、じっと目を閉じた。
「そんな力の余裕があるなら…それを全て、物づくりに使いたいわ…」
光は…まるで、その彼の言葉に同意するように…細波を立てて揺れながら、再び彼の身体を包んでいった。
「やっぱりお前も、そう思うよな」
キーファーは、その光に向かって、語り続けた。
「俺も…強くなりたい…あいつらの求める道具を、難なくいくらでも作れるようになりたい…」
しばらく目を閉じていた彼は…ふと、パッと目を見開くと、バサッと起き上がって…作業台に向かっていった。
そこには、試作途中の、スピーカーとレコーダーらしきものが…無造作に置かれていた。
キーファーは、満を辞した表情で、それの前に座った。
「力を…貸してくれよな…テディ…」
それからキーファーは、大きく燃え広がった青白い炎のような光に包まれながら…取り憑かれたように、夜通し作業を続けた。




