⁑本物に戻る
「…リューイ…あれっ」
「…!!」
僕を抱きしめていたカイトが…
急に、とても驚いた様子で叫んだ。
僕も驚いて、彼から手を離した。
「…俺は…どうしたんだ!?…コアは!?」
彼は、混乱した様子で…そう言いながら頭を抱えると…必死にそれまでの記憶を手繰り寄せた。
そして顔を上げて、僕の顔をマジマジと見ると…ホッとしたような表情で続けた。
「無事だったのか…リューイ…」
「…うん」
僕は頷きながら…カイトの目をじっと見つめた。
カイトはふと、自分の足の上にあるギターに気付いた。
「…わっ…何でコレがここにあるんだっ!?」
「…」
カイトだ…
ヒロじゃない…本物の…カイトだ…
そんな彼の様子を見つめていた僕の目から、また涙がじわじわと溢れた。
「カイト…カイトなんだね…?」
「…っ」
「カイト…!!」
僕は叫びながら…思い切り彼に抱きついた。
「あああ…よかった…」
「…リューイ…?」
そして僕はそのまま…
若干キョトンとしている彼に…口付けた。
「…んっ…」
一瞬、面食らった様子だったが…
彼はすぐに、僕のくちびるを優しく受け止めた。
間違いなくカイトだった…
その、重なったくちびるからは…いつものように、カイトのコアが感じられた。
まだ体調が万全では無いので…
いつもほどの勢いは、無かったが…
「あー…お取込み中…ちょっと失礼…」
エルンは…ちょっと顔を赤くしながら…僕らの邪魔にならないように、そっとカイトの腕の機械を覗き込んだ。
「うん…ほぼ元通りだね…」
「ホントに…よかった…」
口を離れた僕は、両手で彼の顔を包んだ。
カイトは…僕の目を見ながら言った。
「…あの熱風の後の記憶が曖昧なんだけど…俺は、あれからどうなって、ここへ来たんだ…?」
「倒れて動かなくなったカイトを、ウィルフリードが運んでくれたんだ」
「あ、ああ…そうだったのか…」
そしてカイトは…ハッと思い出したように、僕の腕を強く掴みながら続けた。
「それで…その後どうなったんだ?…黒いコアは攻略出来たのか?!」
僕は…少し目を伏せながら、小さい声で答えた。
「…残念ながら、あのコアは…紫のステーションに根こそぎ持って行かれた…」
「…!」
カイトは…溜息をつきながら肩を落とした。
「そう…なのか…」
「でもな、互角だったんだ…怪我人は出たけど…結局ヤツら、こっちの攻略は諦めたんだからな」
取りなすように口を挟んだエルンは、更に続けた。
「とにかく何より…カイトが無事に戻ってよかった」
僕らはホッとした表情で、顔を見合わせた。
「…で、コレはどういう事?」
カイトが、ギターを手に持って言った。
「そうだ…カイト、ちょっとそれ…使ってみてくれないか??」
エルンが、ちょっと面白そうに言った。
僕は、ふふっと笑いながら続けた。
「カイトもね…さっきまで、偽物だったんだよ」
「はあ!?」
「偽物がさあ…ものすごく良い音出したんだよね…もしかして、本物カイトも出来るんじゃないかと思って…」
「……」
エルンにそう言われて…カイトは、僕がやってた見様見真似で…ギターを持ってはみたものの…
もちろん、どうする事も出来る筈も無かった。
エルンは、自分の例の機械を手に取った。
「ほら…」
「…」
彼が再生スイッチを入れると…偽物と僕との会話からの…美しいギターの音色が、そこから流れてきた。
「…っ」
「ついさっき…偽物のカイトが出した音だ」
「……」
カイトは、ただただポカーンとしていた。
そりゃそうだろうな…
「本当に…偽物だったんだな…」
ヒロがひとりで弾いた曲が終わった所でそれを止めると…エルンはしみじみ…呟くように言った。
「偽物リューイと言い…不思議な事があるもんだな…」
「ふふっ…」
言ったら、ヒロが創った世界ですからねー
僕はハッと思い出した。
「そうだ、リカルドさんに呼ばれてたんだった…カイト、起き上がれそう?」
「…ん」
言われてカイトは、ゆっくりベッドから下りた。
「…大丈夫だ」
彼は、スクッと立ち上がって言った。
「一緒に、リカルドさんの所に行ける?」
「ああ」
「俺も…一緒に行っていいか?」
エルンが言った。
「うん」
そして僕は…まずはギターを片付けてから…
2人の手を取って、デベロッパー階の、リカルド達が居る場所へと…移動した。
そこでは既に、レオとジョシュアが、リカルドに事情聴取をされていた。
「カイト!」
僕らの姿を見付けると…彼らは大声で叫んだ。
「大丈夫なのか!?」
「ああ…迷惑かけて、すまなかった」
「よかった…」
レオとジョシュアは、カイトの肩を叩いた。
「危なく、カイトも偽物に入れ替わる所だったんだけどね…」
エルンが言った。
「ええっ!?…何それ」
「…っ」
「ま、その話は…今度またゆっくりな…」
エルンは、ニヤッと笑いながら続けた。
「あの…リューイと偽物カイトの2人が出した音は…エールでも飲みながら、大音量で聞かないと勿体ないからな…」




