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⁑カイトの異変

「うわあっ…ビックリしたー」


また僕がいきなりシュッと現れたもんだから…エルンは飛び上がって驚いた。



そんな事にはお構いなしに…僕は、カイトのベッドに駆け寄った。


「…っ」


仰向けになって目を閉じたままのカイトは…朝、僕がここを出るときは、明らかに顔色が違っていた。


僕は激しく振り向いて、エルンの方を見た。


「カイトは?…カイト…どうしたの!?」


「…」


エルンは、少し深妙な表情で言った。


「さっきまでは安定してたんだけどね…急激に、色んな数値が下がってきちゃったんだ…」

「…!!」



僕は、エルンに詰め寄った。


「それって、下がるとどうなっちゃうの!?」



エルンは、下を向いて…

ボソボソと呟くように…言った。


「…そりゃ…まあ…全部下がったら…」

「…!?」


僕は、目を大きく見開いて…言葉を失った。



エルンは、目を伏せながら…続けた。


「でもな、実は…お前が、偽物になって目が覚める前も…同じような症状だったんだ」


「…!!?」


僕は、エルンの両腕を掴みながら続けた。


「それって、どういう事?…まさかカイトも…中身が偽物になっちゃうかもしれないって事…!?」



エルンは、首を横に振りながら…溜息をついた。


「それは…残念ながら、分からない…ただ、前例があるってのは間違い無いけどな…」

「……」



僕は、力無くエルンの腕を離れると…再びカイトのベッドに駆け寄った。


「…カイト…」


そして…震える手で…眠っている彼の顔を撫でた。


青ざめて動かないカイトは…まるでもう、息をしていないかのように見えた。


「…うっ…うう…」


僕の目から…涙が溢れ出た。



いやだ…絶対にいやだ!

カイトが、カイトで無くなるなんて…



僕はそのまま…彼の身体に縋り付いた。



「リューイ…」


エルンは、僕の背中に向かって手を伸ばしたが…

僕に触れる直前で…その手をグッと握りしめた。



泣きながら…僕はそっと顔を上げた。


そして、エルンが見ているのもお構いなしに…目を閉じた彼のくちびるに…自分のくちびるを、そっと重ねた。



そうする事で、僕の中のコアが、カイトに流れ込んでいく感覚が、自分でもわかった。


でも…いつものように彼のコアが、僕の中にドクドクと流れて入ってきてくれる事は…無かった。



僕はいつまでも…何度も何度も、カイトに口付けた。



「…ん…」


カイトの身体が、ピクッと動いた。


僕は慌てて口を離した。


「カイト!!」



エルンも駆け寄ってきた。



「……」


カイトが…ゆっくりと…目を開けた。


「カイト!!」

「…」


「カイト…分かる?…僕が…分かる??」

僕は、必死に訴えた。


「…」


エルンは、急いで彼の腕を取ると…巻かれた機械の数値を確認した。


「…よかった…少し上昇してる…」


「カイ…ト…?」



…と、カイトが、絞り出すような声で…言った。


「…リューイ…?」

「…っ!!」


それを聞いて、僕は思わず安堵の溜息をついた。


よかった…

ちゃんと、僕の事を分かってくれた…



ところが…カイトは、その後に…

とんでもない言葉を…続けた。



「…氷…威…」


「…っ!?!?」


あまりの衝撃に…僕は、目を見開いたまま、凍りついたように固まってしまった。



そんな、戸惑う僕に向かってカイトが手を伸ばした。

僕は、ガクガクと震えながら…その手を…そっと両手で掴んだ。


「…カイト…じゃ…ないの…?」

「…」



僕は…カイトの目を、食い入るように凝視した。


「……」


確かにカイトなのに…

その目は…カイトでは無いように見えた。


「……!?」


カイトでは無いのに…なぜかそれは、とても懐かしく愛おしい眼差しだった。



その眼差しに…僕は心当たりがあった…



「…ヒロ…!?」

「……」


カイトの姿をした彼は…微かに口元を緩ませた。


「ヒロなの!?」

「…」


そして彼は…ゆっくり、小さく頷いた、


「……!!!」



頭の中が、真っ白になっていく気がした…



しばらく茫然としていた僕は…どうにか気を取り直して、口を開いた。


「…何でヒロなの?…」

「…」


「カイトは…カイトは何処にいるの!?」

「……」


彼はそっと目を閉じた。

まるで、自分の頭の中を探っている様子だった。



しばらくして、再び目を開けた彼は言った。


「眠ってる…」

「…えっ」


「…大丈夫…ちゃんといるよ…ここに…」

「……っ」



それを聞いた僕は、急に身体の力がスーッと抜けて…僕は思わず、彼の手をスルッと離して、その場に崩れ落ちてしまった。



…よかった…

消えちゃったわけじゃ…無いのか…



「リューイ!」


さっきから、ポカーンと僕らの様子を見ていたエルンが、慌てて僕の身体を支えた。


「いったい全体…どういう事なんだ!?」



僕は、下を向いたまま…小さい声で言った。


「彼は…僕と同じ…地球の人だ…」

「ええええっ…!?」



そう言いながらも…僕の頭は、相当に混乱していた。



カイトの身体に…何でヒロが!?


ヒロも向こうで死んだのか?

それとも…死にそうなカイトが呼び寄せたのか?



それとも…

これも『本物』の意思なのか!?



そのとき…僕は、ハッとした…


床にしゃがみ込んだまま…

僕はベッドの彼を見上げて…訊いた。



「もしかして…ここは、ヒロが創った世界なの…?」


「…」


それを聞いた彼は…ゆっくり顔を僕の方に向けると…

静かに口元を綻ばせた。





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