⁑戦いのあと
目の前のコアが…
完全に吸収されてしまった…
途端に、そこは真っ暗闇になった…
慌てて辺りを見回すも…シーンと静まり返ったその空間に…何か、動くものの気配は、微塵も感じられなかった。
このステーションは…死んだのか…
僕は、ヨロヨロと立ち上がった。
コアを破壊出来なかったばかりか…
それを…目の前で横取りされてしまった。
何とも言えない敗北感に苛まれながら…
僕は、自分で自分の身体を…飛ばした。
「リューイ!!」
シュッと現れた僕を見て、リカルドが駆け寄ってきた。
「大丈夫か?…ケガは無い?」
「…はい…」
「ああ…リューイ…よかった…」
言いながら彼は、僕の身体を思い切り抱きしめた。
「…カイトは?」
「ああ…大丈夫…エルンが診てる」
「そうですか…よかった…」
それを聞いて、僕はホッとした。
そして、彼に向かって続けた。
「…リカルドさん…ありがとうございました」
「ん…何が?」
「リカルドさんの指示…すごく助かりました」
「…それが届くようになったのも、お前の発明品のおかげだけどな…」
彼は、僕の頭を撫でながら言った。
「リューイ!」
「リューイ…よかった…!」
続いて、レオとジョシュアもやってきた。
僕らはお互いの無事を確認し合うと、そのまま強く抱きしめ合った。
「お疲れ様…皆、無事でよかった…」
僕の元を離れたリカルドは、そこら辺にいる戦闘部隊員たちの肩を叩いて労っていった。
そこへ、ウィルフリードがやってきた。
彼は、真っ先に僕に近寄ってくると、
僕の両肩を掴んで言った。
「リューイ…大丈夫か?」
「…大丈夫です…ありがとうございました」
ウィルフリードの手が、少し震えているのを見て…
僕は胸がいっぱいになった。
僕は、彼に向かって、深々と頭を下げた。
それから彼は、その場にいる全員…
いや、ステーション中の人々に向けて、語りかけた。
「皆、本当にありがとう…皆が持てる力を出し切ってくれたおかげで、前回我々を窮地に追いやったステーションからの侵略を、防ぐ事が出来た」
うんうん…前回のことはよく分からないけど…
少なくとも…今回は完全に、僕らの方が、黒いステーションより強かったんじゃないかな…
「だが、しかし…もうひとつのステーションには、苦戦を強いられた上に、コアを横取りされてしまった」
僕の頭に…触手に吸い込まれていく、あの太陽のようなコアの断末魔が蘇った。
「ヤツらは必ずまた、ウチを狙ってくる…しかもそのときには、更にレベルを上げてくるのは間違いない」
僕らの…あの「本物」のコアも…あんな風に容赦なく奪略するつもりなのか…
いや、絶対にそんな事にはさせない…
「それでも、このステーションは、本当に強くなった。そしてこの先も進化を続けていくだろう…来たるべき、そのときのために…我々も、一層のレベル向上を図りたいと思う」
そうだ、僕らはまだまだ強くなれる…
僕らのコアを、絶対に死守するんだ。
僕はくちびるを噛み締めて、決意を新たにした。
「何はともあれ…皆、本当にお疲れだった…ありがとう…どうかゆっくり休んで、英気を回復して欲しい」
辺りがザワザワとなり…僕らは、解散した。
「リューイ、大丈夫だった?」
ルイスとヒューも、僕のところへやってきた。
「…うん…何とかね」
「カイトは?」
「ちょっとケガしちゃったみたい…」
「本当?大丈夫なの?」
「…これから、行ってくる…」
「よろしく伝えてね…リューイも、しっかり休むのよ!」
「わかった…ありがとう…」
そして僕は、迷う事なく…エレベーターを使わずに、シュッと医療センターへ飛んでいった。
「カイト…」
「うわっ…ビックリしたー」
僕がまた、急に現れたもんだから…エルンは飛び上がって驚いていた。
「…カイトは?…具合はどう?」
「ああ…大丈夫…今は落ち着いて、ちょっと寝てる」
「…っ」
僕は、カイトが寝ているベッドに近寄った。
安らかに寝息をたてる彼の顔を見て…僕は、心の底から、安堵の溜息をついた。
「リューイは調子はどうだ?」
「ああ…特に、大丈夫と思う」
「一応測らせてくれ…」
そう言ってエルンは、僕の腕に機械を巻いた。
「うわあーまた、エラい上がってるな…」
「…」
「お前、実戦でも進化してくタイプなんだな…」
その数字が、どれほどのものなのか…未だに僕にはよく分からなかったが…それでも、実戦で進化するっていう感覚は、少し理解できる気がした。
何度も追い詰められる度に…何度もメロディーを聞きながら、自分のコアと向き合ってきた。
そしてその度に、新たなパワーが湧き出てくるのを、僕は実感していた。
「エルンも…お疲れ様だったね」
「俺はあれだ…実戦の役には立たないからな」
「ケガした人も、たくさんいたんでしょ?」
「まあボチボチな…それでも、前回に比べたら全然マシだ…戦闘部隊は、本当に強くなった」
「…」
「それもこれも…リューイ…お前のおかげだよ」
「…」
少しは役に立てたんだ…
だったらよかった…
この世界に来て、本当に…よかった。
「カイトを、よろしくね…」
「どこ行くんだ?」
「もう一度…本物に会ってくる…」
「本物?」
そして僕はまた、シュッと飛んだ。
「本物って…えっ?…どういう事だ!?」
エルンの声は、僕には届かなかった。
そのとき既に…
僕は、最下階の…コアの元に来ていた。
「リューイ…ごめんなさい、君があんなに力を貸してくれたのに…」
僕の言葉に反応して、コアがユラユラと光り輝いた。
「絶対に…君を、あんな目には合わせない」
僕は、ギュッと握った拳に力を込めた。
「君を…いや、このステーションを守るために…きっとまだ…僕に出来る事が…あるよね?」
ユラユラと揺らめくコアの光が、あの太陽のコアのように、光の粒を撒き散らした。
その小さい光の破片を身体に浴びながら…
僕はまた…自分の中に、新たな力が湧き出てくるのを感じていた。




