⁑因縁の戦い(6)
気が付くと、カイトは…
医療センターのベッドの上にいた。
彼の他にも、数人の戦闘部隊員が…そこで治療を受けていた。
「気が付いたか、カイト」
エルンが、声をかけた。
「ここは…俺は……あ、あいつは!?」
カイトは、必死に記憶を手繰り寄せた。
「まだ、中にいるよ」
「何だって…うっ…」
慌てて起き上がろうとしたものの…カイトは、身体中の痛みに耐え兼ねて、再び崩れるように倒れた。
エルンは、そんなカイトの身体を押さえながら言った。
「もうちょっと我慢して…今、必死で回復させてるところだから!」
「くっ…」
カイトは、それはそれは悔しそうに、顔を歪めた。
彼は、エルンに尋ねた。
「戦況は…どうなってる?」
「ああ、今…総動員で、紫の方と戦ってる所だ」
「そっちは、どんな…感じだ?」
「むしろ、黒より厄介かもな…どっちも一気に攻める勢いだ」
「どっちもって…」
「ああ…この感じだと、黒い方が先に堕ちるかもな…」
「リューイがいる方か!?!?」
カイトは、また身体を起こそうとした。
「うっ…」
「だーから、じっとしてろって…」
エルンが再び、彼を押し戻した。
「いざとなったら、ウィルフリードが何とかしてくれる筈だ…」
「…っ」
カイトは、下を向いて…顔を歪めた。
エルンは、彼の腕に巻かれた機械を見ながら…呟くように続けた。
「それにしても…本当に強くなったんだな…」
「…」
「前回とは雲泥の差だ…あの、黒い方だってレベルを上げて来てる筈なんだけどな…」
「…」
「それもこれも…あいつのおかげだ…」
「…」
カイトは、観念して目を閉じた。
そして必死に、僕を探った。
せめて…あいつの中の俺が…
あいつの力に、なれるように…
ドガガガーン…
轟音と地響きが、何度も繰り返されていた。
僕のやる事は、ただひとつだった。
僕を排除しようとする攻撃を交わしながら、ひたすら、この巨大なコアにダメージを与え続ける事…。
それはまさに…
VRゲームの、ラスボスステージだった。
太陽のようなコアからも、熱い火の粉のようなものが、降るように飛んできた。
それらを振り払うだけでも、結構な集中力とパワーを要した。
カイトが…居てくれたらな…
そんな弱気な邪念が、嫌でも働いた。
それでも僕は、ひたすらに…それを続けていくしか無かった。
外でも、白熱の戦いが繰り広げられていた。
紫のステーションから発射される攻撃を…レオとジョシュアも加勢した戦闘部隊の皆が、ことごとく交わし、そして撃ち返していた。
「なかなかにしぶといな…」
「想定以上に粘って来ますね」
「ここは、いったん狙いを定めるか」
「そうですね…二兎を追うものは…って言いますからね」
そんな会話が、紫のステーションの首脳部で飛び交っていた。
こっち側には、ちゃんと人間がいるらしかった。
「先にこっちのトドメを刺そう」
次の瞬間…紫のステーションの本体が、動いた。
「…!!!」
固唾を飲んで、画面を睨んでいたリカルドは…その、紫の動きに、驚きを隠せなかった。
その紫の本体は…既にダメージを受けた黒いステーションに、まるで体当たりするように急接近していったかと思うと…本体から、いくつもの巨大な触手のようなものを出現させて、それで黒いステーションをガッチリと掴んだ。
その強靭な触手の尖は…黒い本体の外壁を、いとも容易く突き破っていった。
「…あれで、コアを吸収する気か…」
そしてリカルドは、皆に向かって言った。
「よし…この隙に、攻撃を集中しよう」
リカルドの指示で、戦闘部隊の誰もが…更なるパワーをもって、紫の本体を狙った。
しかし、相手の守備力も屈強で、それの殆どが跳ね返されてしまったが…
ドガガガ…ドドドド…
それまでに無かったものすごい地響きに、僕は思わずその場に転がってしまった。
「な、何だ…何が起こってるんだ…?」
…と、目の前の地面が、バリバリと音を立てて…そこから、怪しげな巨大な鋼鉄の触手の尖が、いくつも現れた。
「うわああっ…」
僕の目の前で…それは、その太陽のようなコアを探るような動きを見せた。
やがて、いくつもの触手が、そのコアを捉え…ガッチリと捕まえた。
太陽のコアは…まるで苦しそうに、更に燃え盛った。
「……っ」
しかし、抵抗已むなく…
それは着実に…その触手に吸い取られていった。
何てこった…
こんな強力なやつが…
ウチのステーションのコアにまで到達したら…
僕は思わず身震いをした。
だんだんと…太陽のコアの輝きが薄れていった。
僕の目の前で、
それはやがて…完全に触手の手に堕ちた。
「…」
満足したように…また、バリバリと音を立てながら…その触手は、引っ込んでいった。
「あーもう、しつこいなぁ!」
黒い本体のコアを吸収しつつ、激しい攻撃を交わしていた紫のステーションの首脳部で、その人物は、眉間に皺を寄せながら言い捨てた。
「とりあえず、最低限の目的は果たせた」
「想定外だったけどね、まさか…こっちを先に堕とせるとは思ってなかった」
「いったん引き揚げるか…」
「ラジャー」
触手を引っ込めた紫の本体は…黒い本体を、まさにポイッと捨てる感じに離すと…鈍い音を立てて、じわじわとその場を離れていった。
「くそっ…逃げる気か…」
リカルドが、悔しそうに叫んだ。
「致し方ないか…こっちもそろそろ限界だしな…」
そして彼は、全体に向かって呼びかけた。
「撤収しよう…」
「…」
「……」
武器を下ろした隊員達は…置き去りにされた、黒いステーションの残骸を見上げた。
コアを完全に吸い取られたそれは…
完全にただの抜け殻に、成り果てていた。
そこからは、生命の…欠片さえも感じられなかった。




