⁑因縁の戦い(5)
「リカルドっ…聞こえる?!?!」
僕は泣きそうな声で叫んだ。
「ああ…聞こえてる」
「カイトがいない!!」
返事が聞こえるや否や、僕はまた叫んだ。
「いや…そんな筈はない…」
「…だって、見えるところにいない…!!」
動揺した僕は…どんどん声が大きくなっていった。
「リューイ…いったん落ち着け…」
「だって…!!」
「いいから…いったん深呼吸しろ」
「…」
僕は、言われた通りに…大きく息を吸い込んだ。
「目瞑って…音を聞け…」
「…っ」
僕は目を閉じて…イヤホンから流れる…例のメロディーを聞いた。
少しずつ、気持ちが落ち着いていくのが…
自分でもわかった。
僕のメロディーを…
僕が…他の人に、聞けって言われるなんて…
ようやく僕は、平静を取り戻した、
「こっちのレーダーには、2人とも映ってる…おそらくは近くに必ずいる筈だ」
「わかった…ありがとう…」
「くれぐれも慎重にな…」
「うん…」
そのときリカルドは…敢えて言わなかった。
リューイの近くにある、カイトを示す光が…リューイのそれに比べて、とても小さくなっていた事を…
竜巻に吹き飛ばされた、瓦礫の破片が散乱する中を…僕は必死に探したが、カイトの姿は見つからなかった。
さっき熱風が飛び出した穴からは…下から漏れる鈍い重低音が鳴り響いて、更なる熱気が湧き出していた。
もしかして、下に落ちたのか…
僕は、そっと…その穴を覗き込んだ。
「…!!!」
熱気と煙の立ち込める…一見100メートルはありそうな、深い空間の底に…とても小さく横たわるカイトの姿が、微かに見えた。
全く動く気配が見えなかった。
カイト…!!
その周りを、無数の例の…機械とも魔物ともつかないやつらが取り巻いていたが…彼らは、そこに倒れているカイトには、全く見向きもしていなかった。
動くものに反応するのか、こいつら…?
僕は、そこら辺に落ちていた瓦礫の破片をひとつ取って、その穴から下に落としてみた。
バババババーッとものすごい勢いで、それは撃ち落とされた。
…やっぱりそうだ
あの状態で、もしカイトがちょっとでも動いたら…
あっという間に集中砲火を浴びてしまうだろう…
どうする…?
僕ひとりで…行けるのか…??
僕はくちびるを噛み締めた。
そして、ひとりで小さく呟いた。
「行くしか…無いけどな…」
僕はまた、メロディーを聞いた。
そして、自分の中のコアに集中した。
本物が…気が狂いそうなくらい燃え盛っていた。
さっきのテディさんのパワーみたいに、この本物のパワーも、ソードくんに伝わるのかな…
…と、ソードくんが、キラッと光った。
そして、燃え盛る本物のコアから、ソードを掴んでいる右腕の方へと、そのメラメラとした光が、どんどん吸い込まれていった。
「よし…いいぞ」
十分に蓄えたら…一気にあそこへ飛ぼう。
そして、飛んだ瞬間に…コレをすっ飛ばそう…
僕は頭の中で、何度もシュミレーションをした。
その間にも、ソードはメラメラを吸い込み、ぐんぐんチャージしていった。
いくらでも溜まるんだなー
このソードくんには、限界ってのが無いんだろうか…
「リューイ聞こえるか…」
イヤホンに…リカルドの声が響いた。
「はい、聞こえます」
「カイトは見つかったか?」
「あ、はい…下に倒れてるみたいで、これから接近しようと思ってます」
「そうか…」
そして彼は、ゆっくりと…噛み締めるように言った。
「カイトの…命が、危ないかもしれない」
「えっ…」
「こっちのレーダーに映ってるカイトの光が、ものすごく弱くなってる…」
「……っ」
それを聞いた僕は、すぐに立ち上がった。
「今すぐ行きます…」
ドガガガーン…
轟音とともに、また地震のように床が揺れた。
そうしている間にも、このステーションへの攻撃が続いていると言う事だ。
僕は渾身の力を、すぐに発動出来る体制を整えて…
微かに見えている、カイトの元へ、シュッと飛んだ。
そして、そこへ現れた瞬間に、周囲に向けて、チャージした全てのパワーを出し切っての、波動砲的な攻撃をぶちかました!
それは、それこそ竜巻のように…激しくグルグルッと渦を巻きながら、四方八方へと広がり…
僕らを取り囲む、全ての者を薙ぎ倒し、破壊していった。
「カイト!!」
そして僕は、彼に駆け寄った。
「カイト…カイト!!」
彼は、目を閉じたまま…動かなかった。
「カイトーっ!!」
僕はまた、泣きそうになりながら叫んだ。
「リカルドさん…カイトが動かないっ…」
「落ち着けリューイ…大丈夫だ、カイトはまだ生きてる…」
「…」
「治癒を使えるか?」
「…少しなら…」
「音を聞きながら、それを最大限発動させろ」
「わ、わかった…」
僕は言われた通り…
メロディーを聞きながら、自分の中にある治癒の力を掻き集めて、カイトに手を翳した。
僕の手から出る、虹色に光る煙のようなオーラが、カイトの身体を包んでいった。
そのとき、僕の中の本物が、またも頭を締め付けるほどに、激しく反応した。僕は、改めて辺りを見渡した。
「…!!!」
上から覗いたときには、わからなかった。
振り向いた、僕のその先に…太陽のように、赤く燃え盛る、巨大なコアが聳え立っていた。
「…ラスボスだ…」
僕は思わず呟いた。
「…う…ん…」
カイトが、ピクッと動いた。
「カイト!…カイト、しっかりして…」
「…んんっ…」
何とか意識は戻ったらしいカイトは…しかしそれ以上動く事が出来なかった。
この高さを吹き飛ばされて、しかも叩き付けられたであろう彼は、痛みと苦しみで、顔を歪めたまま…目を開ける事すらままならない様子だった。
「…」
僕は、意を決した。
「ウィルフリード…聞こえますか?」
僕は、彼を呼んだ。
「ああ…聞こえる」
そして僕は言った。
「カイトを、回収してください」




