⁑因縁の戦い(3)
そこはまさに…ダンジョンの中だった。
ウィーンウィーンと、不気味な警報が鳴り響いていた。
それはおそらく、侵入者を知らせる合図に他ならなかった。
「コアはどこにあるのかな…」
「やっぱり地下じゃないか?」
「とりあえず下へ向かおう」
と、僕らの後方から、レーザーのようなものが飛んできた。
「うわっ…」
慌てて僕らはそれを交わし、その発射口を撃ち落とした。
人影は…無かった。
それは、設置された発射口から僕らを狙っていた。
「このステーションには、人はいないの?」
「いや…いない筈は無いと思うが」
「わかんないの?」
「残念ながら…前回も確認出来なかった」
人間じゃないのか?
機械の身体なのか???
とりあえず僕らは下へ向かった。
階段とかエレベーターの類は見つけられないし、あったとしても危険を伴うので…その場から確認想定して飛んでいける距離を、少しずつ進んでいくのだが…
飛んでいった先で、急にまた、設置された発射口からレーザーが飛んできたりするもんだから、全く油断が出来なかった。
「…この先が…何かよく分かんないな…」
「壊すか」
「そうだね…それしか無いね…」
僕は、床に手を翳した。
その物質を感じて…分析するためだ。
「これは、レオがいいかもしれない…」
言われたレオは、床に向けて自分の武器を突き立てた。
ピシッと音がして、床にヒビが入ったと思ったら…ガラガラと崩れ落ちて、ちょうど人が通れるくらいの穴が空いた。
「よし、進もう…」
「まって…慎重に…」
「俺が先に行く…守って…くれるか?」
「わ、わかった」
僕ら3人は、カイトに向かって手を翳すと…自分の中の守備力を、精一杯カイトに分け与えた。
ほどなく、陽炎のような光の膜に覆われたカイトは、スルッと下に降りた。
途端に、ドカーーンと、爆発音が響いた。
「カイトっ!!」
シューっと、カイトの身体の周りに煙が立ち昇った。
「大丈夫!」
ヨロヨロと立ち上がったカイトは、僕らを見上げた。
ホーッとして、僕らは次々と下へ降りた。
キーーーン…
「うわっ…」
突然の激しい耳鳴りに、僕は思わずその場に蹲った。
「どうした、リューイ!」
「…あ、頭が…痛い…」
「大丈夫?…」
「何とも…無い?」
「うん…」
「俺も」
他の3人には聞こえないようだった。
僕は必死に、自分の中のコアを確認した。
本物だ…本物のコアが反応してる…
僕の中に宿った、あの地下の本物のコアが、何と言うか…磁石の同じ極を近付けたような…相容れない強力な拒絶反応を起こしているようだった。
「ううっ…」
更にギリギリと、頭を締め付けられて…僕はその場で動けなくなってしまった。
そのとき、微かにイヤホンからリカルドの声が響いた。
「そっちのコアが膨張してるぞ…」
「…っ」
「そっから先は、かなり危険だ…」
「…」
僕らは黙って顔を見合わせた。
「そう言われてもな…ここまで来ちゃったし…」
「大丈夫、いざとなったらウィルフリードが助けてくれるんでしょ?」
「リューイ…お前は辛かったらいったん戻れ」
「…いや…大丈夫…うっ…」
僕はまた、頭を押さえた。
「はぁ…はぁ…って言うか…僕が行かなきゃ…先に…進めないでしよ」
「…」
「頭が…痛いの?」
そう言ってジョシュアが…僕の肩に手を置いた。
「…うん…ギリギリする…あと…キーンって、耳鳴りがする…」
「わかった…ちょっと我慢して…」
ジョシュアが、僕の頭に両手を翳した。
「これでも、割と治癒能力には強い方なんだ」
そう言って彼は、目を閉じて…集中した。
おそらく、僕のメロディーを聞いてくれているんだろう…
ほどなく彼の手から、ホワッとした陽炎のようなものが溢れ出た。
それは、僕の頭の中に…ジワジワと沁みていった。
耳鳴りが、少し小さくなった。
「…はぁ…はぁ…」
ジョシュアは、僕に翳した手に…
一層の力を込めた。
「…ん…んん…」
ギリギリとした痛みが…ほんの少しずつ和らいでいった。
「…どう?…少しはマシになった?」
「はぁ…はぁ…うん…マシになってきた…」
激しい拒絶反応は消えなかったが…それでも、立っていられないほどの痛みは、治まっていた。
まさに…頭痛薬を飲んだあとのような感覚だった。
「あ、ありがとう…ジョシュア…」
「よかった…」
「へえー…お前にそんな特技があるとは…全然知らなかったよ」
レオが感心した様子で言った。
「滅多に使わないからな…披露できる場があってよかったわ」
ジョシュアは、少し照れたように肩をすくめた。
「進めそうか?」
カイトが、改めて僕に訊いた。
「もちろん!」
僕は、力強く答えた。
本物が、これだけ反応してるって事は…確実にコアに近付いてるって証拠だろう…
膨張してるって事は…そっちのコアも、同じように拒絶反応を起こしてるって事なんだろうか…
僕はまた床に手を翳した。
「うーん…何かいるような気がする」
床を挟んだ先に…僕は、何とも言えない、おどろおどろしい気配を感じた。
「じゃあここも、壊して進むか…」
「そうだね…これは、カイトかな」
カイトは、小さく頷くと…床に自分の武器を突き立てた。
また、ピシッとヒビが入り…床はガラガラと崩れて、また小さな穴が空いた。
途端に下から、レーザーが飛び出してきた。
「おおっと…」
カイトは、シュッと身を交わした。
「何か…いる?」
「…いるな」
そう言い合う間にも、穴から何度もレーザーが飛び出してきた。
「こーれは、気合い入れていかないと…俺達にも、すぐ穴が空きそうだな…」
「…」
僕らは顔を見合わせた。
「状況次第では、レオとジョシュアは、この階止まりにしよう」
カイトが言った。
「わかった、全力で食い止める」
2人は、そう言って…くちびるを噛み締めた。
そして僕らは、
一気にその…レーザー飛び交う階に飛び降りた。




