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⁑愛しい人

僕らはエレベーターに戻った。


「…」

カイトは黙っていた。


まさか、自分の持論が…本当だったらしい事を知って、気持ちの整理がつかなくなってしまったんだろう…



僕らは、部屋の前に着いた。


「今日は、自分の部屋に帰る?」

そんなカイトに向かって、僕は言った。


彼は、何とも言えない表情で、僕を見た。


「だって…カイトにとっては、やっぱり本物は本物なんだもんね…」

「…」


「しかも、あんな大物相手じゃ…勝ち目無いし…」

僕は、冗談めいて、笑いながら言った。


「…」

カイトは黙っていた。



「じゃあ、おやすみ…明日、頑張ろうね…」


そう言って僕は…自分の部屋の扉を開けて中に入ると、すぐにシュッと閉めた。


「…」


そしてそのまま…

そこに膝をついてしゃがみ込んでしまった。



本物だった…

カイトの言った通りだった…


そして僕は…その本物のリューイの…いや、このステーションのコアの、全ての意思を、感じる事に成功した。


それは、確実に…明日、最前線で戦う僕の、大きな力になるに違いなかった。



でも…その代わりに…


僕は、カイトを…失ってしまった。


「……」


ポロポロと、勝手に涙が溢れてきた。


「カイト…」


僕は、自分で自分の身体を抱きしめた。

僕の中にいるカイトを…ひとつとして溢してしまわないように…僕は必死に身体の中のカイトを感じた。



僕の中のカイトの胸が、酷く痛んでいた。


ああ…カイト…

カイトが、苦しんでる…



僕はそのまま、床に突っ伏して泣き崩れた。



こんなんじゃダメだ…

明日は、本番なのに…何やってんだ…


僕は必死に立ち上がって、寝室に向かうと…バタッとベッドに倒れ込んだ。


そして…両手で顔を覆った。



カイト…



何もかも…カイトのおかげだった。

この世界に来て、戸惑いしか無かった僕を…彼はいつでも見守り…愛してくれた。


そして僕を…強くしてくれた!


抱きしめて、口付けて…

僕のコアをどんどん成長させてくれた。



それもこれも…

皆、本物の意思だったんだな…


僕は、今自分の中にある…本物を感じながら思った。



僕の中には本物がいる…

テディさんもいる…

カイトのカケラもまだ少し残ってる…


きっと僕は、明日…最高に強くなる



それに、もし…僕に…いやこの身体に何かあったとしても…カイトには、本物がついている


そうか…

これで僕は、心置きなく戦えるって事なんだな…



僕は必死に、自分で自分を納得させようとした。


「…」


それでも…勝手に溢れる涙は止まらなかった。


いつまでも…いつまでも…

僕は、泣き続けていた。




その頃…


同じように自分のベッドの上で…カイトも自分の胸に手を当てて、自問自答を繰り返していた。


自分の中の…偽物リューイの悲しみが、痛いほどに伝わっていた。



俺に…どうしろって言うんだ?


彼は、これまでに見た事のないくらい燃え盛る、コアの光を思い出しながら思った。 



本物のリューイは…俺には何も言ってくれなかった

あいつにとって…俺は何だったんだ?


カイトは、納得のいかない頭で…必死に考えた。


「…」


俺が予想してた…まさにその通り、全ては「自分」の…いや「このステーション」のためだったんだろうか…



そのための偽物…

その偽物のための…俺…


「…」


そして彼は…ふっと笑った。



そりゃそうだよな…

このステーションを牛耳る、偉大なコア様にとっては…俺なんか、ただの駒に過ぎないよな…


本物のリューイだと思ってたヤツを好きだった気持ちも…あの偽物に引き継ぐための、伏線でしか無かったのかもしれない。



ただただ…偽物を、強くするために…


そして全ては…自分(このステーション)のために…



「…」


カイトは、ムクッと起き上がると…

ベッドから飛び降りた。


早足で扉に向かうと、シュッと手を翳して外に出た。



そして、隣の僕の部屋の前に行った。



「リューイ…」


「…!!」


カイトの声を聞いて…僕はベッドから降りると…ゆっくり扉に向かった。


「ごめん…リューイ…中に入れて…」

「…」


僕は、震える手をボタンに翳した。


シュッと扉が開いた。

その途端に…カイトが飛び込んできて、勢いよく僕の身体を抱きしめた。


「…っ」

「ごめん…リューイ…」


「…カイ…ト…」


シュッと扉が閉まった。



「カイト…カイト…!」


僕は、ボロボロと泣きながら…彼の名を呼んだ。

そしてその背中に手を回して、力強く抱きしめた。


「カイト…っ」



少しだけ腕を緩めた彼は、僕の顔を両手でしっかりと包み込んだ。


「そんなに…泣いてくれたの?」

「…だって…だってもう…二度とカイトに触れないと思った…」


「…偽物リューイ…」

「…っ」


言いながらカイトは、思い切り僕に口付けた。

 


「…んっ…」


僕は、無理やりに口を離れて、言った。


「本物は?…本物はどうするの?」

「ああ…あれ…?」


カイトは、ニヤッと笑いながら言った。


「大物過ぎて…俺の手には負えない…」

「…っ」

 


そう言ってカイトは、再び僕に口付けた。

抱き合ったまま、ベッドになだれ込んだ僕らは…その勢いのままに…しっかり愛を確かめ合ってしまった。



並んで、暗い天井を見上げながら…カイトは僕の頭を抱き寄せながら、呟くように言った。


「本物は…俺には何にも言わなかった…」

「…そう…なの?」


「所詮…俺は、掌の上の捨て駒に過ぎないらしい…」

「…」


「偽物を…こんな風に開発するためのね…」

「…っ」



言いながら、彼はまた僕に口付けた。


そうして僕の中のコアは、

更に一層輝きを増していくのであった…




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