⁑コアに触れる
翌日、僕らはリカルドの指示の元、チームに分かれての訓練を行った。
最前線…いわゆる、今まで僕ら4人が守っていたポジションには、ルイスとヒューを筆頭にした10数名が就いた。
チラッと見た限りの、彼らの攻撃力は凄かった。
その後ろを守る援護部隊は…大きく…攻撃、守り、突破の3つに分かれた。
そしてその中でも、特に得意とするタイプごとにチームを組み、それぞれに特化した特訓を受けていた。
僕ら、突入チームのメンバーは変わらなかった。
そして僕らは、昨日までと同じメニューを…昨日以上にレベルを上げて、ひたすらに…こなしていった。
もう、出来る事はそれしか無かった。
言ったら、スポーツ選手だってそうだ。
大会本番の前日だからって、急に特別な練習をする訳じゃ無い。
LIVEだってそうだ…
そんな事を頭の隅っこで考えながら…
僕は、目の前に現れるダンジョンのような迷路をくぐり抜け…壁を破り…敵を倒し続けた。
4人で力を合わせる訓練もした。
前回のような、波動砲(いやたぶん、そんな名前ではないと思うけど)がすっ飛んできたとしても、今の僕らの力なら、叩き壊する事が出来るであろう事は、リカルドからもお墨付きを頂いた。
ま、あくまで…相手方のレベルが、前回同様であればの話ではあるが…
しかも、今回の敵は1つでは無いのだ。
ちゃっかりおこぼれに便乗しようとしている輩が、ほぼ同時にやって来るというのだから…応戦する側としては、どれほどの備えをしておけば良いものか…
その上…僕には、前回の記憶が無い。
刻々とカウントダウンが進む中…僕の不安は膨らむばかりだった。
そんな不安を必死に打ち消すように…
僕は激しい訓練に、ただただ…集中した。
「とりあえず…やれる事はやった…」
その日の終わりに…カイトは僕らに向かって言った。
「そうだね…」
「リューイの音のおかげで、格段に強くなったし」
「それでも、命懸けの戦いになるのは間違いない」
「…」
深刻な表情でそう言うカイトを…僕は少し泣きそうな目で見つめた。
「2度やられる気は、更々無いけどな…」
「うん…」
「そんな顔しないで、リューイ」
ジョシュアが、僕の肩を叩いた。
「君はいちばん強いんだ…君がそんな顔してたら…皆が不安になっちゃうよ」
「…っ」
カイトも頷いた。
僕は、くちびるを噛み締めた。
そして、ウィルフリードもやってきての…
最後の全体終礼が行われた。
「このステーションは、君たちのおかげで、以前と比べ物にならないくらい強くなった…」
「…」
「明日は、私も含めて…ステーション中の皆が、君たちをバックアップする」
「…」
ウィルフリードは、自分に言い聞かせるように…静かに、力強く言った。
「誰ひとりとして、死なせはしない…」
「……」
そこにいる誰もが、大きく頷いた。
「ゆっくり…休んでくれ…」
僕らは解散した。
この日ばかりはさすがに、タウンへ行こうなどと言い出す者もいないだろう…
僕はそう思っていた。
「どうする?ヴィンセントの所に行くか?」
カイトが訊いてきた。
えええーっ
明日、本番なのに??
「…行っても…いいけど…」
実は僕には…
今日のうちに行っておきたい場所があった。
「その前に…コアを…見に行ってもいい?」
「…構わないが…」
カイトは、少し驚いていた。
そして僕らは…エレベーターで最下階へ向かった。
そこに行くのは、この世界に来て…最初の方にエルンに連れていってもらったとき以来だった。
エレベーターを降りて…
カイトは扉の横のボタンに手を翳した。
扉が開いた。
「…!!」
こんなに…大きくて眩しかったっけ…
自分の目の中にあるコアに、いつの間にか見慣れてしまったせいだろうか…
久しぶりに見る本物のコアは…とても大きくて、とても眩しくて…それはそれは美しかった。
「俺が…あんな話をしたからか?」
カイトが言った。
「…ん…それもあるけど…」
僕は、その…大きくて眩しいコアに向かって両手を翳した。
「僕は…間違って…いないよね?」
「何を?」
「僕が、ここでやってきた事は、本当に…このステーションの…このコアのためになってるのかなって…」
そのとき、コアが…大きく揺らめいた。
まるで太陽が、自身を燃やす炎に包まれているかのように…そのコアの表面が、炎のように煌めきながら小さい光を幾つも放った。
「…コアが…高揚している?」
カイトが呟くように言った。
「こんな風になるのは…初めて見た…」
「…」
僕は…更に一歩前に踏み出した。
「リューイ…熱くないのか?」
「…うん…熱いよ」
僕は、少しずつコアに近寄っていった。
「リューイ!」
コアが、より一層燃え盛った。
そして、そこから放たれる光の粒が…伸ばした僕の指先に触れた。
「熱っ…」
その熱が…指先から僕の身体の中に、シュッと溶け込んでいくのが分かった。
それは…じわじわと僕の身体に染み渡った。
それまでに、このステーションのために戦って失われた幾つもの命を、愛おしみ悲しんでいるような…そんな感情が僕の中に湧き上がった。
「僕に…託してくれるんだね…」
僕は、コアに向かって言った。
「この感情も…この、身体も…」
「…!」
背後で聞いていたカイトが、大きく目を見開いた。
「リューイ…」
その瞬間…コアが一段と激しく燃え盛った。




