⁑前前夜(2)
その日の宴もまた、遅くまで続いた。
とても楽しかった。
地球で言う所の明後日に…本当に、その例の黒いステーションとの戦いが迫っているんだろうか…
僕は本気でそう思った。
「それじゃ、明日は気合い入れていこうな」
リカルドが、僕とカイトに向かって言った。
「ああ…」
「よろしく…お願いします」
そしてリカルドは…しれっと続けた。
「じゃあリューイ、俺ら全員帰らせてー」
「ええーっ!?」
「一気に同時にスポーンと飛ばしてねー」
「…同時にスポーン…ですか」
「これも訓練だよ」
彼は、真面目な表情を作ってビシッと言い切った。
いや、絶対ふざけてるでしょ…
この酔っ払いチャラ男くんは…
思いながらも、僕は大きく溜息をつくと…そこにいる全員の顔を見渡した。
そして、それぞれの戻るべき場所を思い浮かべた。
「じゃあ、ヨハンさん…ご馳走様でした」
「うん…また遊びにおいで」
小さく頷くと、僕は…力を発動させた。
シュッと…
その場から…全員が同時に消えた。
「ふふっ…流石だねー」
ひとり残ったヨハンは、ニヤッと笑いながら呟いた。
「お前…もうウィルフリード並みに、誰でも何でも、どこへでも飛ばせるんじゃないの?」
無事、僕らはとりあえず、僕の部屋に戻っていた。
「それは無理だよ…今だって、結構いっぱいいっぱいだったんだから…」
皆…無事に帰れたかな…
少し不安気な表情をしていた僕を…
カイトは、勢いよく抱きしめた。
「リューイ…」
「…カイト…」
そして見つめ合った僕らは、まるで自然な感じに…どちらからともなく口付けた。
「お疲れ様だったね…」
「カイトもね…」
そして僕らは…そのままベッドになだれ込んだ。
僕の身体を抱きしめて、足を絡めながら…
カイトは囁くように言った。
「疲れた?」
「うん…」
「…しても…いい?」
「んー…うん…」
僕の返事を聞いたカイトは…改めて僕に口付けながら、僕の身体を愛おしそうに弄った。
「んっ…ん…」
そして僕の頭の中のコアは…歓喜に震えるように、ユラユラと眩しく輝きを増していくのだった。
カイト…
カイトが…好きだ
思えば思うほどに…コアは、美しく眩しく光り輝いた。
「はぁっ…あ…カイ…ト…」
それは…やがて注入された彼のコアと相まって…
一層激しく燃え盛った。
戦いなんて、無ければいいのに…
このまま、ここでずっと…楽しくカイトと一緒に過ごせたら、それでいいのに…
僕は心の底からそう思った。
そのとき…僕のコアの中で…
青白く光る何かが…僕に訴えるように、一際激しく輝いて見えた。
「…っ」
テディさん…
そうか…
テディさんも、きっとそう思っていたんだ。
キーファーさんと寄り添って、一緒に生きていきたいと…ずっと思っていたんだな…
でも、それは叶わなかった…
いつの間にか…僕の目から、涙が溢れていた。
「どうした、リューイ…痛いのか?」
慌てたカイトが言った。
「ううん…」
僕は、大きく首を横に振った。
「僕は…すごく幸せだ…こうして、生きてるカイトを感じる事が出来るんだもの…」
「…」
何かを悟ったらしいカイトは…優しく…そして強く、僕の身体を抱きしめた。
「大丈夫…きっと、俺たちは、負けない…」
彼は、自分に言い聞かせるように呟いた。
「…うん」
グルグルと混ざり合い、いつまでも輝き続けるコアに包まれながら…僕は、自分の身体が、溢れるほどに満たされていくのを感じていた。
実際…おそらく、その行為すらも…
僕らを進化させている事は、間違いないと思われた。
そして僕らは…少しずつ収まっていく、陽炎のような光に包まれながら、眠りについた。
「なあ…お前も、力を貸してくれるんだろ?」
キーファーは、自分のベッドに仰向けになって…自分の中の彼に向かって問いかけた。
まるでそれに応えるように…キーファーの胸の辺りが、青白く、ポワ〜ッと光った。
「本当に…何もかも、あの偽物のおかげだな…」
その、光っている辺りを、愛おしそうに両手で撫でながら…彼は続けた。
「あの、リカルド用の道具も…リューイのヒントと、あの音のおかげで…自分でも驚くくらい、造作なかった…」
青白い光は、相槌を打つように…
何度もゆらめいた。
「今だったら…俺も最前線で戦えるかもな…」
光が、パーッと…花火のように散った。
まるで…何をバカな事言ってるんだ…って、笑っているようだった。
「はははっ…」
眩しそうに目を細めながら、キーファーは続けた。
「…こうして…お前にまた、会えたのも…あいつのおかげ…なんだよな…」
光がスーッと大きくなって…薄く膜を張るように、キーファーの身体を包み込んだ。
「…おやすみ…テディ…」




