⁑ リューイって何者なんだろう(2)
とりあえず僕は、その部屋の中を見て回った。
入ってすぐは、少し広い何もない空間…
少し奥へ行くと、浴室と洗面所に続くドアがあった。
キッチンのようなスペースもあったが、そこには、何だか見慣れない機械が置いてあった。
食事のためと思われる、テーブルと椅子もあった。
更に奥にいくと、寝室というか、まさにプライベートルーム的な空間になっていた。
窓が…やっぱり無かった。
何で窓が無いんだろう…
外がどうなってるのか、スゴく気になるんだけどな…
僕はキッチンに戻ると、水道らしき栓の下に手を出してみた。
それに反応して、ジャーっと水が流れた。
水は出るんだ…
これ、飲めるのかな…
僕はそこら辺の戸棚を開けてみた。
コップや皿が入っていた。
僕はそのコップをひとつ取り出して、水を汲んだ。
そして、ひと口飲んでみた。
うん…普通に、水の味だ…
それから僕は、寝室の…
テーブルの上に置いてある、TVともPCともつかない画面のある機械の前に座った。
どうやったら電源はいるのかな…
僕は今までの短い経験上から、
とりあえずその機械のあちこちに、手を翳してみた。
フッ…と画面がついた。
おーやっぱり、それ方式か!
そして、その画面に映し出されていたのは…
何ていうか、真っ暗な空間の中に浮かんでいる、宇宙船のような物体だった。
…何だコレ…
全く動く気配もなく…もちろんBGMも無く…
ただただ、シーンと、その景色だけが映っていた。
他にもうちょっと、面白いチャンネルはないのかな…
そんな風に思いながら、
僕はまた、その機械のあちこちに手を翳した。
…と、指が画面に触れた刺激で、シュッと映像が切り替わった。
あ、スマホ方式か!
その画面には、何やら文字がたくさん映し出されていた。
ステーション○○との交流まで、
あと95時間04分
ステーション△△との交流まで、
あと156時間25分
…てな感じで、どこぞのステーションとの交流予定時間が、カウントダウンされていた。
やっぱりつまんないな…
僕はもう一度、画面をスライドさせた。
次の画面は、見たことのない器具の画像と、それを紹介する文字が映し出されていた。
しばらくすると画面が切り替わって、違う器具の紹介になった。
次は、タウンの中の店の画像…
そんな感じの映像が、スライドショー的に、次々と流れていった。
これは…CMみたいなもんかな…
どれも面白くないなー
音もないし…
僕は、ふと思い出して…
こないだバンドでやった、自分の歌を口ずさんだ。
「〜♪」
ちゃんと覚えてるよなー
やっぱり僕は…氷威…なんだよな…
僕は立ち上がって、洗面所に行った。
そして、鏡に映る自分の姿を…初めて見た。
…誰?
これが…僕?
いや、リューイ…なのか…
そこに映っていたのは、
間違いなく…氷威では無かった。
「君は誰?何で僕は…君の身体になっちゃったの?」
僕は思わず、鏡に映るリューイに向かって言った。
もちろん…
彼が答えてはくれる事は無かったが…
僕は、両手で顔を覆った。
僕はそのまま寝室に戻った。
そして、ドサっとベッドに倒れ込んだ。
あーもうー
ホントに、どうしたらいいのか分かんない…
「リューイ…いる?」
と、急にどこからか、声が聞こえた。
僕は起き上がって、キョロキョロと辺りを見回した。
「部屋にいるって、エルンに聞いたんだけど…」
僕は立ち上がって、その声がどこから聞こえるのかを探した。
カイトの声だった。
それは、入口の隣にある、フォーンと呼ばれてた機械からだった。
「…はい…います…」
僕は答えた。
「調子はどうだ?明日の訓練には、出て来れそう?」
「…訓練?」
「…ああ、訓練の事も覚えてないの?」
「…すいません」
「10時間後に、迎えに行くから、支度しといて」
「…はい」
「見に来るだけでもいいから…」
「…わかりました」
そしてその声は、スッと消えた。
訓練て…
そっか、リューイは戦闘部隊の人なんだもんな…
日頃から訓練してるってわけか…
そんなもん…僕に出来るんだろうか…
10時間後に支度ったって…
何をどう…支度したらいいのかも分かんないのに…
僕はすごすごと、ベッドに戻った。
そして横になって、目を閉じた。
と、スーッと…部屋の灯りが暗くなった。
「…!」
だいたい、照明らしき物が付いていなかったのに、
何で今まで明るかったんだろう…
そんで、何で目を瞑った途端に消えた!?
あーもうー
ホントにワケ分からん…
僕はそのまま、頭まで毛布をかぶった。
どうか次に目が覚めたときには、
元の世界に戻っていますようにー!