⁑新たな能力(3)
「だからさー…ちょっとはこっちの都合も聞いてもらえないかな…」
いきなり連れて来られたキーファーは、若干怒ったような表情で、ブツブツと呟くように言った。
「だって、時間がないですから」
「そーいう事ー」
「はあー」
大きく溜息をついて、キーファーは続けた。
「で、今度は何を御所望ですか?」
「あのな…」
リドリーは、彼に事情を説明した。
「またエラい壮大な計画だな…」
ひと通りを聞き終えたキーファーは…またも、大きく溜息をつきながら言った。
「まず、この力をリカルドに作用するようにする道具が要るだろ…それでその、リカルドからの情報を、各隊員に一斉に発信出来るようにしたいんだ」
「なるほど…」
「それには、こないだ作ったイヤホンに飛ばすのが、手っ取り早いだろ?」
「理屈は、よーく分かった…」
キーファーは腕組みをして、考え込んでしまった。
「とりあえず、これを作用させる道具は、何となく目処がつく…でもな…それを発信するってのはなぁ…」
「でも、キーファーさん…あの小さいキーファーさんから、イヤホンに音を飛ばせるじゃないですか…」
僕は口を挟んだ。
「その原理で、その力を…そのリカルドさんのマイクから、全てのイヤホンに飛ばす事は出来ないんですか?」
「マイク?」
「あ…えーっと…」
僕はキョロキョロと辺りを見回した。
残念ながら、描く道具らしき物は見当たらなかった。
僕は、身振り手振りで続けた。
「例えば、こーんな風に…頭にかぶるタイプの道具に、こーんな感じでマイクが付いていたら…」
僕は…いわゆる、マイク付きヘッドホンを頭に思い浮かべていた。
「道具をかぶる事でリカルドさんが見えた情報を、そのマイクに向かって発信出来るんじゃないかと…思うんですけど…」
「…」
キーファーは、黙って目を閉じると…再び熟考態勢に入ってしまった。
「量産には向かないけど…それでもいいか?」
ようやく…彼は口を開いた。
「差し当たり、リカルドが使えれば、それでいい」
「わかった…やってみるよ」
「ああ…ありがとう、キーファー!」
「全く…リューイのおかげで、とんでもない物ばっかり作らさせられるよな…」
諦めたように笑う彼に、リドリーは、今さっき出来たばかりのUSBを手渡した。
「飛ばしてくれ、リューイ」
「え、いいんですか?」
「一刻を争うんだろ?」
「はい!」
そして僕は…
シュッと…キーファーを、彼の工房に戻した。
「僕も、訓練に戻ります」
「そうだな…俺は、自分の足で、キーファーの様子を見に行ってくるわ」
「ありがとうございました、リドリーさん」
「いやいや…お役に立てて嬉しいよ、こちらこそありがとう」
そして僕らは、その部屋を後にした。
またシュッと、訓練部屋に戻った僕に、カイトが近寄ってきた。
「どうなった?」
「うん…リドリーさんが上手いこと力を取り込んでくれた…」
「小っちゃいリューイか」
「あはははっ…そうだね」
僕は、訓練に勤しむレオとジョシュアを見た。
彼らの頭上にも、もちろんカイトにも…さっきまで見えていた、データは消えていた。
「さあ、続けよう」
「うん…」
そして僕は、レオとジョシュアの隣に並んだ。
破壊訓練に続いて、彼らが行っていたのは…相手ステーションに突入した事を想定した訓練だった。
至近距離からの攻撃を交わしながら、迷路のような、先の見えないルートを進んで、目的地へ辿り着くっていう…
まさにRPGの地下ダンジョンを、これまたVRで体験していく感じだった。
「…ジョシュアだ」
「えっ?」
その、至近距離に現れる敵キャラに対して、誰の攻撃がいちばん効果的なのか…それがやっぱり、僕には分かった。
データは見えなくなったけど…その能力自体は、僕の中に残っているって事か…
ジョシュアが、難なくその相手を倒した。
そして僕らは、更にレベルの上がった、次のダンジョンを目指した。
…いや、ダンジョン…では、無いけどね。
リカルドが、そんな風に、皆に指示を出してくれたら…そりゃあ戦いやすいだろうな…
その日の訓練も、終盤に差し掛かった頃に…再びリカルドが、やってきた。
彼は、頭に…まさに僕が思い描いていた通りの、ヘッドホン付きマイクを装着していた!
もう完成したのか!
キーファーさん、すごいな…
リカルドは、その状態で、各訓練の様子を…とても真剣な表情で見ていった。
そして、訓練後の終礼が行われた。
いや、終礼って呼んでいいのかも、未だにわからないけど…
その場でリカルドは、カイトに向かって言った。
「組み分けをさせてもらえないか?」
「もちろん、構わないが…?」
そしてリカルドは、改まった様子で、全体に向かって言った。
「実は、ここにいる全員の…能力や特性を見通せる道具が開発された…それを使って、皆の様子を見させてもらった」
皆がざわついた。
「同じ特性同士で、チームを組んでもらおうと思う。そして実戦では、そのチームに適正な配置に就いてもらいたい」
なるほど…
確かに、その方が、闇雲に人員を振り分けるよりも、ぐーんと効率的だ!
「よし、わかった…皆、リカルドの指示に従ってくれ」
カイトも皆に向かって言った。
「よろしく頼んだ」
「…ん」
リカルドは、ニヤッと笑って頷くと…
そこにいる全員を、時間をかけて、幾つかのグループに振り分けていった。




