⁑新たな能力(2)
「スゴいな…最前線メンバーが、こんなに増えたのか…」
昨日に引き続き、訓練の様子を見にきたリカルドが、僕らの所にやってきた。
「あれっ…リューイ顔色悪いけど、どうしたの?」
「…」
僕は…情けなく、今にも泣きそうな表情で、リカルドを見つめた。
リカルドの頭上にも、彼のデータが見えた。
あ、この人…実はそんなにパワー無いんだ…
そんな失礼な事を思いながらも、
僕は彼に事情を説明した。
「えええー!?そんな能力あるのー???」
「…あるみたいですね…だって、実際に見えちゃってるんですもん…」
「それ、俺に欲しいー」
あー確かに…
リサーチ…って言ったっけ…この人にこそ、相応しい能力だよな…
「俺にちょうだい!」
「差し上げたいのは超山々ですけど…どうしたらいいんですかね…」
そのやり取りを黙って聞いていたカイトが、少し考えて、口を挟んだ。
「リドリーに頼むんだな」
「あっ…それがいいかも!」
リカルドは、手をポンッと叩いて言った。
「あいつ、今絶好調だからね…何とかしてくれるかもしれないー」
「…なるほど」
「よし、時間もない事だし…さっさと行って何とかしてもらおう」
彼は、僕の返事を待たずに、僕の首根っこを捕まえて引っ張っていこうとした。
「リューイ借りるねー」
「…っ」
僕は、そんなリカルドの腕を掴むと…
シュッとデベロッパー階へと移動した。
「うわぁっ…」
「…ビックリしたー」
急にすっ飛ばされたリカルドも…
目の前に、いきなり2人が現れたリドリーも…
そりゃあ驚いていた。
「いや…急いだ方が良いかと思って…」
「それにしても、ひと言断ってよー」
「すいません…」
「…で、今度は何の話?」
そう訊くリドリーの頭上を見て、僕は思わずクラクラしてしまった。
スゴいな…この人…
彼は…僕には到底理解出来ないような、難解な能力のデータを背負っていた。
「実は…」
僕は、事の次第を…彼に説明した。
「…まさか…そんな能力が存在するのか?」
「実際に、リドリーさんの上にも、リカルドさんの上にも、見えてます」
「えっ…俺も!?」
リカルドが叫んだ。
…貴方はちょびっとだけどね…
「ふうーん…」
リドリーは、腕を組んで考え込んでしまった。
「その力を、俺らリサーチが使えるようになったら…もっと詳細な相手の分析が可能になると思うんだ」
「そりゃそうだな…」
「しかも、その情報を、最前線のやつらに、瞬時に提供出来るようなシステムが…あったら良いなーって、思うんだけど…」
リカルドは、挑発するような表情で…チラッとリドリーの方を見た。
「…」
リドリーは、ふっと笑って答えた。
「もう大して時間も無いっていうのに…とんでもない無理難題を持ち込んできたもんだ…」
そんな言葉とは裏腹に…彼の目は、爛々と輝いていた。
やる気オーラが、目に見えるようだった。
「わかった…まずは、リューイのその力を、さっさと取り込もう」
僕は彼に促されて、先日、例のキーファーの力を読み取った部屋に連れて行かれた。
「…あの」
「ん…何?」
「取り込んで…いっそ、僕の中の方の力は、もうちょっと弱くして欲しいんですけど…そんな事って、出来ます?」
「えっ…何で?」
「だって…こんなに見えたら、気になって集中出来ないんですもん…」
リドリーはまた、ふっと笑った。
「贅沢な悩みだな…わかった、やってみる…」
そして彼は、機械に向かって座った。
「俺の頭に手を翳して…その力を送ってくれ」
「…わかりました」
そんな事を言われても…具体的にどうやったら、その能力だけを送れるのか…僕にはよくわからなかった。
ただ…そのようにしたい…
そう強く思う事しか出来なかった。
「あの…」
「何?」
「こんな感じで…伝わってます?」
「ああ…十分、流れて来てるよ」
そうなのか…よかった
僕はホッとしながら…リドリーの図上に手を翳したまま、同じようにずっと、強く強く思い続けた。
「…」
ほどなく、リドリーの身体から、ユラユラ…と言うよりは、メラメラと…陽炎のような光が湧き出した。
次の瞬間…彼は、目にも止まらぬ速さで、キーを叩き始めた。まるで…ピアニストのようだった。
「すっごいなー」
向こうの方で、リカルドがボソッと呟いた。
しばらく、取り憑かれたようにそれを叩き続けていた彼は…ようやく大きなエンターキーを、カチッと押した。
「ふうー終わった…もう離して大丈夫だよ」
「お疲れ様でした」
僕は、両手を下ろした。
「どう?…見えなくなった?」
「…あっ」
僕は顔を上げた。
さっきまで、リドリーの頭上に見えていた、膨大なデータは消えていた。
僕は、向こうにいるリカルドも見てみたが、彼の頭上にも、もう何も見えなかった。
「すごい…見えなくなりました…ありがとうございます、リドリーさん!」
「…じゃあ、よかった」
大きい機械から鈍い音が響いて…ほどなくまた、小さいUSBが出来上がった。
「こっから先は、キーファーの力を借りよう」
「キーファーさんですか?」
「リカルドに見えて、で、そっからの情報を…その、例のイヤホンに飛ばせたら…効率が良いだろう?」
おおーそこまでは思い付かなかった!
リドリーさん、流石だー
「そんな便利な事が出来るんですか?」
「出来たらいいなって思うけど、残念ながらその先は、俺にはちょっと難しい」
「キーファーさんなら…出来そうですか?」
「たぶんね、今のあいつなら」
「わかりました!」
そして僕は、有無を言わさず…
キーファーをそこへ連れてきた。




