⁑新たな能力(1)
カウントダウンは、すでに二桁となっていた。
地球の数え方で言ったら、もう明後日くらいか?
訓練は佳境に入っていた。
例のVRルームでは、更に10人以上の面々が、次々と現れる敵キャラを、ことごとく撃ち返していた。
まさに、カイトや僕レベルに達していた。
教習機関からも、何人もが戦闘部隊に進級してきた。
最初の頃に、僕を芸能人のような目で見ていた、ウィルと呼ばれていた若者も、その中にいた。
そして、ルイスとヒューも…今回は、臨時隊員として参加するらしい。
2人が、VRルームにやってきた。
「よろしくお願いします」
「ホントに総動員ですね…」
「もう実戦なんて、何百時間ぶりだから、ちゃんと出来るかわかんないわよー」
「俺も…完全に腕が鈍ってるな…」
謙遜する2人は、最初は確かに…色々と探っている様子だったが…ほどなく勘を取り戻した。
「すごく…強い人達だったんですね…」
彼らの動きを見て…僕はポカーンと呟いた。
「そりゃそうさ…」
カイトは、僕の肩を叩いた。
「俺らは俺らで…やっておかなければならない事がある」
「…そうだね」
そして僕らと…レオとジョシュアは、更に奥のスペースへと入っていった。
そこで行われた訓練は、更に過酷だった。
相手のステーションの防壁を突破し、攻撃を交わしつつ心臓部へ到達する…そして、ステーションの生命線である、コアを破壊するっていう…
とんでもない任務の遂行を目標に掲げた僕らには、特別なプログラムが課せられていた。
「これってさあ…誰が考えたのかな」
「さあね…ウィルフリードとカイトじゃないの?」
とにかく破壊力を鍛え磨くための訓練なのだろう…
あらゆる頑丈な素材や…強い力の働く結界を、ひたすら壊し続けていくという…
容易にパキッといけるものもあれば…
相当集中してかからないと、ビクともしないものもある…
もちろん、個人差もあり…4人それぞれの得意不得意も、段々と見えてくる…
それでもやはり…総体的には、カイトの破壊力の強さが、バランスが良いように思えた。
「はぁ…はぁ…集中力が、もたない…」
「そういうときこその…これだろ?」
根を上げそうになったジョシュアを…レオは、自分の耳に装着したイヤホンを指差しながら励ました。
「そうだった…」
気を取り直したジョシュアは…目を閉じて、聞こえるメロディーに集中した。
彼の身体が、ユラユラと強く光り…
更なるパワーが引き出されていくのが、外から見てもハッキリと分かった。
僕も…負けてらんないな…
思いながら、僕は目を閉じた。
…と、僕の目の中に、不思議な現象が見え始めた。
「これは…レオだ」
「は?」
僕らの目の前に現れたものを見て…僕は呟くように言った。
言われたレオが、それを難なく破壊した。
次に現れたものを見て…僕は続けた。
「カイト」
カイトがそれを瞬殺させた。
「これも…レオかな…」
言われて、試しにカイトがそれを撃った…
しかしそれは、ピシッとヒビが入ったものの、破壊されるには至らなかった。
今度は同じものをレオが撃ってみた。
それはまるで、パキーンと…弱いプラスチックがハジけるように、簡単に割れた。
「なんだ、リューイ…何が見えてるんだ?」
「何かね…その、相手とか標的との…相性みたいなのが…ほんのり見えてきた…」
現れる障壁の…その種類によっての、それぞれの得意不得意が…それを見た瞬間に、パパッと分析する事が…出来るように、なったらしい…
「へえースゴい!」
「それ、実際にやってみる前に分かったら…ものすごく効率良いじゃん」
「続けてくれ、リューイ!」
「…わ、わかった」
そして僕は、次々現れるそれらを見極めては、呼名を繰り返していった。
「へえー…そんな能力が…存在するって事すら思いもよらなかった…」
「いや…僕もこれっぽっちも知らなかった…ホントに…急に見えるようになったんだ…」
「障壁だけじゃなくて、攻撃してくる相手の事も分析出来るのか?」
カイトが、とても真剣な表情で言った。
「…たぶんね」
そう答えながら…僕は顔を上げて、彼らの方を見た。
「…!!!」
な、何だ…これ…!?
彼らひとりひとりの…それぞれ得意とする能力の、データのようなものが…
まさに、それぞれの頭上から背後にかけて、浮かび上がって見えていたのだ!
僕は…その、勝手に自分の目に映る光景に…
思わず眩暈を感じるほどだった。
僕は慌てて、その部屋を飛び出した。
そして、他の皆が訓練している所へ行ってみた。
「リューイ!?」
「…!!」
案の定だ…
僕の目には…そこに居る全ての人の頭上に…その人のデータが見えてしまった。
「…」
いや…確かに、便利能力かもしれない。
かもしれないけど…これは流石に面倒臭過ぎだろ!?
常にこんなのが目に入って来ちゃったら…自分に集中出来なくなっちゃうじゃん…
「…どうした?リューイ…」
追ってきたカイトが、僕の肩を叩いた。
僕は、溜息をつきながら…彼を振り返った。
「…何か…とんでもない事になっちゃった…」




