⁑進化する訓練
「へえーすごいなコレ…」
「うん…あの、リューイの音が、とてもよく聞こえるね」
翌日…体育館で…戦闘部隊の面々は、配られたあの例の道具を装着して、口々に感想を述べ合っていた。
「それなら、皆さんが、それぞれのペースで、それぞれパワーアップしたい場面で、そのメロディーを聞く事が出来る筈です」
僕は少し恥ずかしがりながら…大勢の前で言った。
皆、うんうんと頷きながら…それぞれの訓練の場へと散っていった。
「効果があると良いんだけどな…」
「あるだろ」
不安げに呟く僕に向かって、カイトは前を向いたまま、バシッと言い切った。
「俺らも行くぞ」
「うん」
そして僕らは、いつものように…レオとジョシュアも一緒に、例のVRルームへと向かった。
「今後の進化次第では、この部屋を使うやつが増えるだろうな…」
武器を手に取りながら、カイトが呟いた。
「そうなって欲しいね」
「うんうん…そしたらスゴく心強い」
レオとジョシュアも、頷きながら続いた。
そうか…最前線に立てる人材が増えれば、それだけ攻撃力が上がるって事だもんな…
でも…昨日のカイトの話を聞いた限りでは、それだけじゃ足りないな…
それこそ、前回張った結界的なものを、ステーションレベルで発動出来るようなシステムがあったらいいんだけどな…
そんな事をちょっと思いながらも…僕はその日の自分の訓練に集中した。
「レベルを上げるぞ…」
カイトが言った。
「ヒャーもう、これ以上無理〜」
ジョシュアが悲鳴を上げた。
「そう思ったときこそ、そのメロディーを聞いて、集中してみてください」
僕は彼に言った。
「…わ、わかった…やってみる…」
ジョシュアは目を閉じた。
外から見ても分かりやすいくらいに…彼の身体から、ユラユラと陽炎のようなものが湧き出した。
「…っ」
その後の彼の動きは、明らかに違った。
「すごい…」
レオは、それを見て…感嘆の声を上げた。
「レオさんも試してみてください」
「わかった…」
そして…レオも同様に、見るからに動きが俊敏になっていった。
「へえー…あの2人が、まるでリューイみたいじゃん」
いつの間にか、部屋に入ってきて、ちゃっかり訓練の様子を見学していたチャラ男くん…いや、リカルドが、僕の隣で呟いた。
「効果抜群みたいだねー」
「予想以上でしたね…」
そうか…この人に相談してみるか…
「あの…ちなみに、守備の事なんですけど…」
「あーそれだったら、デベロッパーのやつらが、何やら企んでくれてるみたいよ」
「ホントですか?」
「その他大勢の皆が力を出し合う事で、結界を張るみたいなシステムを作るって言ってた」
おおー
それこそ、僕が思ってたやつじゃん!
さすがリドリーさんだ
「それが完成すれば、こっちの面々は、攻撃に集中出来るからね」
「はい…是非ともその方向でお願いします」
「しかも、すごい進化じゃん…このレベルで、全員の力を集約すれば、あの波動砲みたいなやつにも負けないと思う」
「そうですか…」
僕は少しだけ、ホッとした。
「ま、相手方が…前回より進化して無ければ…の話だけどね」
「…っ」
「間違い無く…レベルを上げてくるだろうね」
「…じゃあ…こっちは、それ以上を目指さなきゃいけないって事ですか?」
「…うん」
「…」
その日の訓練後…
ウィルフリードがやってきた。
「お疲れ様…調子はどう?」
「はい…そこそこの効果があったみたいです」
「それは良かった…」
その後、僕らは…リカルドとウィルフリードを囲んで、今後の対策を練った。
「まず、今現在の…この4人レベルの最前線の人数を増やそうと思います。今日1日の様子を見た限りでも、そこに上げていいレベルに到達出来そうなやつが何人もいました」
「そうか…それな心強いな」
「守備は、デベロッパーに任せる」
「間に合うだろうか?」
「あいつらだって、例のリューイの音を聞いてんだろ?だったら出来るさ」
「そうだな…」
「で、俺ら4人は…」
カイトは、僕と、レオとジョシュアの顔を見ながら続けた。
「相手ステーションに、突入する」
「えええー!?」
「そんなの無理だよーっ」
レオとジョシュアは、声を上げた。
「…」
「2人には、あくまで援護を頼む…危険が迫った場合には、すぐにリューイが飛ばしてくれる」
「…っ」
無茶苦茶な事言うよなー
そんなの、出来るかどうかわかんないのに…
「な、リューイ…」
「う…うん」
「俺らは、やつらのコアの心臓部を目指す」
「…」
それって…
まるで、いつぞやのテディさんの戦い方だよね…
「もし、相手方にも…強力な結界が貼られてたらどうするつもりだ?」
「突破する」
カイトはしれっと答えた。
「俺たちは、そのための訓練を強化する」
「…」
「致し方ないよな…」
「わかった…全力を尽くすよ…」
レオとジョシュアも、半ば諦めたような…それでも確固たる表情で、くちびるを噛み締めた。
「…俺も協力しよう」
ウィルフリードが言った。
「えっ?」
「危険な状況になったら、すぐに俺を呼んでくれ…俺が、皆を移動させる」
「あーそれが安心だね」
リカルドも言った。
「ウィルフリードの飛ばす力は、ピカイチだからねー」
あーそれ、知ってます…
しかも、割と最近…パワーアップしたのも知ってますよー
「でも…本来だったら、このリューイも、ステーションを移動出来る筈なんですよね?」
僕は彼に言った。
「ああ…あれは実は、俺が半分手を貸したんだ」
「えええーっ」
「そうだったんですか!?」
「残念ながら、呼ばれないと発動出来ないからな…あのときは、リューイの異変を察知するのが、少し遅れてしまった」
ウィルフリードは、少し悔しそうな表情をしながら…続けた。
「今回は、俺も出動する…何か起こる前に…必ずお前達を助け出す」
「…」
「…っ」
そこにいる皆が、ウィルフリードの方を見た。
そうだったのか…
ステーションごと飛ばすとか…どう想像しても、そんなパワーのヒントのカケラも見えてこないと思っていたけど…
それは、ウィルフリードの力だったのか…
そして、カイトが、ニヤッと笑って言った。
「よろしくお願いします」
「今回は、持てる力を総動員だな…」
リカルドも、呟くように続けた。




