⁑カイト論
むしろ僕より疲労困憊な様子の…カイトの腕を掴みながら、僕らは部屋に戻った。
「あー今日は疲れたな…」
「お疲れ様」
「エールが飲みたいな」
「じゃあまた、タウンにお連れしましょうか?」
「いや…今日は2人きりがいい…」
言いながらカイトは、僕の身体を力強く抱きしめた。
僕は、彼の胸に顔を埋めたまま…
小さい声で言った。
「ごめんね…カイト…」
「いや…不可抗力だから仕方ない…俺の方こそ、変に拗ねてごめん」
「でも…ちょっと嬉しかった…カイトが妬いてくれて」
「…っ!」
カイトは、ボッと顔を赤らめた。
そして彼は、僕の顔を撫でながら…
僕の目を見つめて…言った。
「そんな事より…お前に何事も無くてよかった」
「…」
「ちゃんと…偽物のお前が…この身体に戻ってきてくれて…本当によかった…」
「…っ」
僕らは…そのまま吸い寄せられるように、口付けた。
それから僕らは、ヴィンセントさんの店の…便利宅配機能を利用して、エールと食事を頼んだ。
僕の大好きな魚のフライ…
それから、スキレットのような皿に乗った、ゴロっとした野菜と肉は…カイトの好きそうな、唐辛子の効いた汁で煮込まれていた。
キッチンのテーブルで、僕らはそれを囲んで乾杯した。
「ヴィンセントさんって、ホントに僕らの好みを分かってくれてるよね…」
「そうだな…」
「それって…スゴい能力だよね…」
「ああ…俺にはこの真似は出来ない」
もぐもぐと食べ進めながら…僕は、今日の色々を思い返していた。
「キーファーさんも…今頃は、テディさんと一緒に乾杯してるのかな…」
「…そうかもな…」
「それにしても、ウィルフリードさんが…実はあんなにお茶目な人だとは思わなかった…ビックリした」
「ああ…マテルの前だと、特にそうだな…」
「あ…そっか」
「…ん?」
「カイトも…訓練で、皆の前に立ってるときは、ビシッとしてるもんね…」
「ゲホッ…ゲホッ…」
カイトは顔を赤くした。
「カイトも…きっと貫禄のある総リーダーに…なるんだろうな…」
「いやだから、それは全然わかんないって」
「あくまで俺は、戦闘部隊のリーダーではあるが…パワー的には、お前の方が上だ」
「…本物さんはね」
「いや、偽物のお前も…戦闘以外に関しては、俺より上だろ…俺はそんな、お連れしたりは出来ん」
「あははっ…便利機能的なやつね」
「しかも、テディのパワーが加わったんだろ?」
「…」
「例の道具も完成した事だし…明日からの訓練が楽しみだ」
「…そうだね…」
何度かエールをおかわりして…
(ホントに何て便利なんだろう!!!)
僕らはようやく、並んでベッドに入った。
「あとは…来たる時間に備えるばかりだな…」
僕の肩に腕を回して、僕の髪を撫でながら…カイトはくちびるを噛み締めるように呟いた。
「…」
僕は、少し不安そうな目で、カイトの方を見た。
その…来たるべき時間に、どんな事になるのか…僕にはこれっぽっちも想像がつかなかった。
「こないだの…交流のときみたいな感じ?」
「あーあれより、もっとデカいやつが来る」
「…っ」
「しかも、もっと数が多い」
「…!!」
それを聞いて、僕は思わずゾクゾクッと背筋を震わせてしまった。
そんな僕の肩を、しっかりと抱いて…
カイトは静かに語り続けた。
「とりあえず、前回のときはそうだった…何ていうか、本当にキリが無かった」
「…」
「で、そいつらに気を取られているうちに…ステーション本体から、途轍もない砲撃がすっ飛んできたんだ」
「…」
「まるで…このステーションごと、爆破する勢いだったそれを、俺らは、戦闘部隊全員の力を合わせて、必死で結界を張って防御した」
「…」
「それでも至らなかった…その壁が、破られそうになったとき…」
カイトは、僕の方を見た。
「リューイが…最前線に立ちはだかった…そして、このステーションを…飛ばしたんだ」
「…」
「でも、一瞬…遅かった…飛ばす直前に、結界をぶち破った、その途轍もない砲撃が…ほんの一瞬だけど、リューイに直撃してしまったんだ…」
「…」
カイトは、言いながら…僕の頭をしっかりと自分の方に抱き寄せた。
本物は…
本物のリューイは…どこに居るんだろう…
亡くなったテディさんでさえ、ああして魂が残っているっていうのに…
この身体だけ残して…本物のリューイの魂は、どこに行ってしまったんだろう…
もし僕があのまま…動けない地球の僕の身体に還ったとしたら…本物が、またこの身体に還ってくるんだろうか…
「…」
「妙な事を考えるなよ…」
僕の心を見透かしたように、カイトが言った。
「お前が其処にいるのも…俺が、今のお前を愛しているのも…」
「…」
「全てはリューイの意志だ」
「…っ」
「何となくだけどな…それだけは分かる…」
「…」
「これは、あくまで俺の考えだけどな…」
カイトは…宙を見つめながら、続けた。
「少し前まで、その身体に入っていた人格は、このステーションの…あの地下のコアそのものだったんじゃないかと思う…」
「…っ」
それはまた…突拍子もない見解だな…
「そして…そのリューイの身体を更に進化させるための、唯一無二の人格を…」
「…」
「要はお前を…ずっと探していたんじゃないかな」
「…」
「全ては…このステーションのために…」




