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⁑キーファー社製海賊版(2)

「こうして、口元に手を翳すと…声が大きくなるじゃないですか」


僕は、両手を口元にあてて…続けた。


「ものすごくザックリで申し訳ないんですけど…その原理だと思うんですよね…」

「…うーん」


「こう…この線を伝って…音がこっちに移動して…で、ここでガーッと大きくなるって言うか…」

「…」


僕の拙い説明では、上手く伝わらないらしい…

キーファーは、ますます考え込んでしまった。



「音を飛ばして、大きくすればいいんだろ?」

カイトが、口を挟んだ。


「そんなん…コアの力を使えば、俺を飛ばすのより、よっぽど簡単なんじゃないのか?」


えっ…

そんな単純な問題!?



「あー確かに…」

キーファーは、ポンッと手を叩いた。


「この…線に惑わされてたな…」


えっ…むしろ線無いとダメなんじゃないの?


「単に、飛ばす力を…ここに加えればいいのか」

「ええーっ…ホントに?」



そっか…ワイヤレスっていう機能も確かにあったな…


いきなり海賊版作っちゃう所からしても、この世界の人達にとっては、地球で言う初歩的なアナログタイプより、むしろ最新機能の方が簡単に理解できるのかもしれない。


そりゃまあ…基本的に、

あり得ない力が働いてる世界だもんなー



「わかったよ、リューイ、ありがとう…リドリーに相談して、元の小ちゃい俺を改良してみる」


キーファーは、黒板を見ながら続けた。


「それで、こんな風に…自分に聞こえるようになったり…この、機械を置く事で、そこから出るように…すればいいんだな」

「…」


「とにかく、音って言うのが…目に見えないし、扱うのが初めてなもんだから、難しく考え過ぎてた」

「…」


「要は…物を飛ばしたり、形を変えたりするのと、原理は同じなんだな」

「……」



今度は、僕が若干ポカーンとしてしまった。


よっぽど、その原理の方が難しいわ…



「ありがとう…さっそくデベロッパーに行ってくる」

キーファーは立ち上がった。


「一刻も早く完成させないとな…もう、時間があまり無いし…」


言いながら彼は、真剣な表情で下を向いた。



「あ、あの…」

僕は切り出した。


「何なら、飛ばして差し上げますけど…?」


それを聞いたキーファーは、ニヤッと笑った。


「それは遠慮しとくわ…あんまり便利過ぎるのに慣れちゃうのも、良くないと思うからね」



そんだけ便利機能を屈指してるあんたがそれ言うかー


…と、心の中で思いながらも…

僕らは手を振って、足早に去っていく彼を見送った。



「俺らも帰るか」

「そうだね」


「タウンに…寄ってく?」

「うん」


「また、連れてってくれる?」

「いいよ、ヴィンセントさんの所か、ヨハンさんの所なら行ける」


「お好きな方で」

「ふふっ…」


僕はまた、カイトの手を強く握った。




「ビックリしたー」


急に、僕らが現れたもんだから…ヴィンセントは飛び上がって驚いていた。


僕らは笑いながら、カウンターに座った。



「先日はお疲れ様でした」


言いながらヴィンセントは、エールを出すと、飲みかけの自分のグラスを掲げた。


「ありがとうございました…」

言いながら、僕らは乾杯した。



「何か…大変な事に…なりそうですね…」

「…ああ」


「僕らみたいな、タウンの連中には、何の力にもなれませんけど…」

「そんな事ないです!」


僕は若干前のめり気味に言った。


「ヴィンセントさんの、美味しい料理が無かったら…僕らは何も出来ません」

「…」


「ものすごく…力になってます!」

「あははは、そうだな…その通りだ」



それを聞いて、ヴィンセントは、少し照れ臭そうに微笑んだ。


「ありがとうございます…じゃあ、今日も腕によりをかけないといけませんね」

「是非、お願いします!」


言いながら彼は、小鉢に入った、千切りのにんじんを何かで和えた物を出してきた。


「何ですか…これ?」


「実はヨハンから、先日交流のあったステーションのお酒を分けてもらったんですよ…」


続いて、こないだ出たのと同じ、白っぽいシュッとした瓶を出しながら、彼は続けた。


あっ…南米のあれだ…


「これにね、合うと思うんです」

ヴィンセントは、小さいグラスに、その透明な酒を注ぎながら言った。



「いただきます…」


僕は、その…パッと見、しりしりっぽいにんじんを、摘んでみた。


「わっ…辛い」


そして、間髪を入れずに…グラスの酒をひと口飲んだ。


「うん、合う、美味しい!」


パラペーニョが入っているんだろうか…ピリッと辛くて酸っぱいシャキシャキのにんじんと…その、どことなくフルーティーな強い酒が、とてもよく合った。


まさに、南米の味だった



続いて彼は、何やらクレープのような生地で、肉や野菜をくるくると包んだ物を出してきた。


「タコスだ!」

「タコス…って言うんですか?…その、地球っていう所では…」


僕はそれを、手で掴んで…パクっと齧った。



うん、やっぱりタコスの味だ…

コーンの風味の生地も、すごく美味しい


それがまた…その酒に、とてもよく合った。



「うん…美味いな」

カイトも呟きながらバクバク食べていた。


「ヴィンセントさんてすごいなぁ…いろんな国の料理が作れちゃうんですね…」

「くに…って言うのが、よく分かんないですけど」



そして最後に出されたのは、大きめにカットされた、香ばしい肉のグリルだった。


それも、ピリ辛のスパイスが塗されていて…添えられたバターライスにも酒にも、とてつもなく合うのだった。


本当に美味しかった。

本当の…南米の味を楽しめた気分だった。




僕はふと思い出した。


そっか…所詮は、あの変な生き物の肉なんだな…


「……」


そして改めて、しみじみ痛感するのだった。


「やっぱりヴィンセントさんはスゴい!!!」




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