⁑キーファー社製海賊版(1)
ここに…小さい俺を入れる…と。
キーファーは、自分の作業場で、それの製作に没頭していた。
スイッチを切り替える事で、あとは通常の機械類と同じく、手のコアに反応するシステムの…とりあえずの基本形が、何とか出来上がった。
「ゴホン…うん…あー、あー」
彼は、自分の声をそれに記録しての…
再生もしてみた。
『ゴホン…うん…あー、あー』
「…こんななのか…俺の声…」
ひとりで赤面しながらも、彼はその仕上がりの自己満足に、ホッと笑顔になった。
ただ、出る音量がちょっと弱いな…
何か、音を増幅させる方法は無いか…
いやでも…例えば、ヴィンセントがあすこで料理しながら聞くのと…戦闘部隊が訓練中に集中するために聞くのとでは、勝手が違うからな…
闇雲にデカくすれば良いってもんでも無いな…
しょうがない…またリューイに聞くか…
おそらく地球には参考作品があるだろう…
とりあえず、そこの課題は置いといて…彼は本体の精度を上げる作業に集中する事にした。
出来る事なら、少しでもコンパクトにしたい…
あとは耐久性だな…
訓練中に、落っことすヤツとかいるだろうから…
キーファーは、いったん立ち上がると…作業場の棚の奥の方から…一見、鉄板のような光沢のある薄い板を出してきた。
これを…使うか…
小さく溜息をついて、彼はそれを加工し始めた。
作業を続けながら…彼は頭の中で呟いた。
テディ…
お前の命を奪った、あの武器と同じ素材で…
今度こそは、誰の命も無くさないための道具を…
キーファーは、グッとくちびるを噛み締めた。
俺は、作る…
「リューイ…」
「ん?…キーファーさんだ…」
訓練を終えて、カイトと一緒に部屋に戻った僕の耳に、キーファーの声が響いた。
「例のヤツが出来たのか?」
僕より先に、カイトがフォーンに向かって言った。
「ああ…それで、リューイに聞きたい事がある」
「わかった、すぐ行く」
そう言うと、カイトはすぐに…扉の前に立った。
「待って、カイト」
僕は彼を呼び止めた。
そして、そっと彼の手を握って、言った。
「あのさ…一緒に、飛んでみても…いい?」
「えっ?!…お前、そんな事出来るのか?!」
カイトは目を丸くして言った。
「いや…出来るかどうか分かんないけど…」
僕は、握った手に力を込めながら続けた。
「試してみたい…」
カイトは、ふっと笑いながら言った。
「…わかった、連れてってくれ」
僕は小さく頷くと…
カイトと繋いだ手に、更に力を込めた。
そして目を閉じて…キーファーの工房を、目の中に大きく光り輝くコアの中に思い描いた。
同時に…僕の頭には、勝手にあのメロディーが流れた。
「……っ」
次の瞬間…僕らの身体は、眩い光に包まれた。
陽炎のようにユラユラと揺れながら…
僕らの身体は、煙のようにその場から消えた。
「うわぁっ…」
突然、目の前に、僕らが出現したもんだから…キーファーは、絵に描いたように飛び上がって驚いた。
「ビックリさせるなよ!寿命が縮んだぞ…」
「…!!」
この世界でも、ビックリすると寿命が縮むんだ!
僕は、とても懐かしい気持ちになった。
そして、笑いながら続けた。
「それって…何時間くらい縮むんですか?」
「…っ」
「どうせお前は長生きだからな…ちょっとくらい縮んだ方がいいんじゃないのか」
カイトがしれっと言った。
「ってか…スゴいな…どうやって来たんだ?」
「リューイがやった」
「ホントか!」
「だって…本物は、このステーションごと飛ばせたんでしょ?…これくらいは出来るようになっておかないと」
「あはははっ…確かに」
「で、例の…小さいヤツは?」
「ああ、そうだった」
キーファーは、テーブルの上にあった…とても小さい四角い物体を手に取って、僕に差し出した。
「…!!」
あの、小さいキーファーを、ひと回りくらい大きくしたそれは…僕が知っている…地球にもある音楽を聞くための、ウォークマン的な機械に、とてもよく似ていた。
似てるって言うか…
真似して作ったって言っても過言ではなかった。
まるで海賊版じゃん、これ…
「このスイッチに触れる事で、記録と再生が切り替わる…で、ここから音出る」
彼は、その機械の下の部分を指差しながら言った。
へええー
この形で、何とかphoneのボイスメモ的な使い方が出来るって…機能的にはpodより上だ…
まさに小さいキーファーさんなんだ!
「手触りもとても良いですね」
それは、見た目にもシンプルなデザインで…地球にあった物のような固い金属でもなく、弾力性のあるプラスチックのような素材だった。
「へえ…これで武器を作ったら…スゴく軽くて、手に馴染みそうだな」
横からそれに触って、感触を確かめながら…何の悪気も無く、カイトが呟いた。
「…元々は武器のために開発した素材だからな」
「…っ」
俯き加減でそう言うキーファーを見て…カイトは、ハッとして口を押さえた。
そんなカイトに気にも留めず…彼は続けた。
「ただ…この小ささだからな…再生する音の大きさにに限界がある」
「ですよね…」
「その…音を増幅させるための何かが、もしかして地球にはあったんじゃないのかと思って…」
あー
「あります!」
僕は力強く答えた。
「そうか、やっぱりな…」
言いながら彼は、また黒板とチョークを出してきた。
「描いてくれ」
「…分かりました」
僕はすぐに、機械にケーブルを接続して、イヤホンとスピーカーに繋がっていく絵を描いた。
「色んな形があるんです…人それぞれ、音楽の聞き方にも好みや拘りがありますから」
僕は、イヤホンの絵を指差しながら言った。
「他の人の迷惑にならないように、自分の耳だけに聞こえるようにする道具と…」
今度はスピーカーを指して続けた。
「こっちはむしろ、皆で一緒に聞くための道具です」
「…」
「皆で一緒ってのも様々で…部屋で聞く用のもあれば、ルイスさんの店くらいの広さで聞く用もあれば…あの、訓練のスペース全体に聞こえるくらいの大音量で流す事が出来るのもあります!」
「…」
「このケーブルで繋げば、そこからの音を、好きな音量で流す事ができるんです」
「…」
キーファーは、若干ポカーンとしてしまった…




