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⁑宴のあと

楽しい宴会も、さすがに終息の兆しが見えてきた。



「いやー楽しかったね」

「またやるときも、絶対呼んで!」

言いながら、レオとジョシュアは店を出ていった。



「じゃあまたね、リューイ」

ルイス達も…席を立って僕らの所に挨拶に来た。


「良いものを聞かせてもらった…おかげで俺のパワーも強くなったような気がするよ」


まさかのヒューが…そう言いながら、僕に右手を差し出した。


「…ありがとうございます」

僕は彼の手を握り返した。



南米の美味しいお酒で、すっかり出来上がって足元の覚束ないキーファーは…カジミアに支えられながらフラフラと歩いてきた。


「キーファーさん…大丈夫ですか!?」

「んー大丈夫大丈夫…」


うわー出た

これはホントにかなり大丈夫じゃない大丈夫だ…


「何なら…連れて行きましょうか?」


「…いいよいいよ…俺が連れて帰るから」

カジミアがすぐに言った。


「そんな事に力を使わせるのは…勿体無い」

「あはははっ…そんな事…じゃないですけどね…」


「ありがとうな…リューイ…」

フラフラしながらも…キーファーは力強く僕の手を握ってから…カジミアに、荷物のように引きずられて行った。



「楽しかったよ…いい気晴らしになった」

リカルドが、カイトに向かって言った。


「ああ…そうだな」


そしてリカルドは、僕の方を向いて続けた。

「俺は諦めて無いからねー」

「…っ」


笑いながら振り向いて…彼も店を出ていった。



最後に残った僕らに向かって、ヨハンは改まったように言った。


「本当に楽しい時間だった…ありがとう」

「こちらこそ…好き勝手にやらせて頂いて、ありがとうございました」


「また…お願いするよ」

「はい、是非よろしくお願いします」


ヨハンに向かって深く頭を下げて…僕らはようやく店を出た。



「あー本当に楽しかったー」

ヴィンセントは、興奮覚めやらぬ様子で、宙を眺めながら呟くようにいった。


「たまには良いな…皆で集まるってのも…」

エルンも呟いた。


ホントにオールスターでしたからねー



「これも…リューイの地球の記憶のおかげだな」

「…」


「お前が倒れて…記憶が無くなって…あのときは本当にどうなる事かと思ったけど…」

エルンは僕の方を見ながら続けた。


「結果…何もかもが良かったな…」

「…」


僕は、穏やかに微笑みながら、彼の方を見た。



「じゃあ、僕はここで」

ヴィンセントが、店の前で立ち止まった。


「よかったら明日も寄ってください」

「了解…」


彼は手を振って、僕らを見送った。



「じゃあな、カイト…リューイ」

「ああ…エルン、気を付けて帰れよ」


「何なら…お連れしましょうか?」

「あはははっ…大丈夫、それこそ勿体無い」


別に全然、勿体無くないのにな…


そう思いながらも…僕らは、手を振ってエルンと別れて、エレベーターに乗り込んだ。



「ふぅー」


カイトと2人きりになって…

ようやく僕は、大きな溜息をついた。


「お疲れ様…」

言いながらカイトは、僕の髪を撫でた。


「明日は…休んでもいいぞ?」

「…えっ…」


休むって選択肢が存在したんですねー!?

いやでも…どうせ寝たらスッキリしちゃうからなー



「大丈夫と思う…」

エレベーターを降りて…長い廊下を歩きながら…僕はポソッと言った。


「カイトも…一緒に休むんなら、話は別だけど…」

「…っ」



それを聞いたカイトは、ギュッと僕の手を握った。


「さっき…お前、リカルドに言ってただろ…」

「…えっ」


「前のリューイより…って…」

「あ、ああ…」


そして彼は…少し申し訳なさそうに…続けた。


「俺は…最初から、お前はリューイだと思ってた」

「…」


「中身が偽物だろうが何だろうが…俺は変わらず、お前の事が好きだった…」



ちょうど、カイトの部屋の前に着いた。


彼は、手を翳して扉を開けた。

当然のように…僕も一緒に中に入った。


とりあえずギターを下ろす僕に向かって、カイトは続けた。


「だけど今は…」

「…?」


今は…?


僕は、ちょっとだけ不安になって、顔を上げた。



彼は、そんな僕を…力いっぱい抱きしめた。


「…」

「…カイト…痛っ…」



彼は、僕の肩に顔を埋めたまま…やっぱり少し申し訳なさそうに…言い辛そうに…続けた。


「今は…偽物のお前の方が…好きだ…」

「…」


カイトにそう言われて…僕は嬉しかった…

嬉しい反面…心苦しかった。



本物は一体…何処に行ってしまったんだろう…

カイトが偽物とこんな風にしている事を、本物のリューイが知ったら、どんな風に思うだろう…


「…」



僕は、カイトの背中に回した手に力を込めた。


そして…思い返した。



それでも…構わない!


僕はカイトが好きだ…

もし、本物が現れて、彼を取り返そうとする事があったとしても…


僕は全力で、本物と闘う!



「…」


そりゃあ…

もし、カイトが…やっぱり本物がいいってなっちゃったら…諦めるしか…無いけどな…



徐々に腕を緩めたカイトは、

顔を上げて…僕の目を見つめた。



今のカイトは…

偽物の僕の事を、本当に好きでいてくれるんだ…


改めて…僕は胸がいっぱいになった。



「ありがとう…カイト…」


そして僕らは、吸い寄せられるように…

どちらからともなく、口付けた。



ビーッ、ビーッ、ビーッ…


突然、聞いた事の無い…鈍い報知音が響いた。


僕らは、ビクッと身体を震わせて口を離れた。



「…っ」

カイトは、心当たりがあるように…眉間に皺を寄せながら、僕から離れて寝室に向かった。


僕も急いで後を追った。



そしてカイトは…例のモニター画面に手を翳した。


「何?…コレ、何の音なの?」

訳も分からず、僕は訊いた。



「…ついに動き出したって事だ…」

「えっ…」


カイトの手に反応して…モニター画面が、だんだんと明るくなっていった。



僕らは、食い入るように覗き込んだ。


「…!!」


そこには…

不気味な2つのカウントダウンが始まっていた。




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