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⁑宴もたけなわ

その夜の宴は、いつまでも続いていた。


何せオールスター勢揃いなもんだから、次から次へと話も尽きない。しかも、どいつもこいつも酒が強かった。


この世界には、下戸って言葉も無いんだろうなー



でもなー

こんなに飲んでも、翌日あんなにスッキリ無くなっちゃうっていうのはなー


そりゃあ確かに、二日酔いの心配をこれっぽっちもする事無く飲めるってのは良いんだけど…


それはそれで…何となく、アルコール成分が勿体ないような気がしちゃうよなー



頭の隅っこの方で、そんな事を考えながらも…

とりあえず、ワンマンステージを無事乗り切った心地良い疲労感も手伝って…僕も御多分に洩れず、相当飲み進んでいた。


 

そのうちに…感涙酔っ払いキーファーが、僕の隣にやってきて言った。


「今日やった…うたってのは…あれだろ?桜のステーションの話なんだろ?」


おおーさすが!


「…そうです…桜のステーションって言うか、日本って言う国のスタンダードって言うか…子どもの頃から誰もが歌ってる歌です」


「こないだ初めて、桜の花を見ただろう?」

「キーファーさんが出したヤツですね…」


「あのときと同じような感覚だった…」

「…」



どことなく遠い目をしながら…彼は続けた。


「また…あれが飲みたい気分だ」

「ああ、日本酒ですね」


「リューイに関わってると…あの酒の在庫がどんどん減ってしまうな」

「あはははっ…折角だから、今日のところは、ヨハンさんの店の売上げに貢献しましょう」


それを聞いたキーファーは、訝しげな表情になった。


「…偽物は、たまに変な言葉を使うよな」


「…」


店とか、売上げとかいう単語が、通じなかったのか…


「あー今日は、折角だから…ヨハンさんに、おすすめのお酒を選んでもらいましょう」

僕は言い直してみた。


「…それもそうだな」


納得してくれたみたいでよかった。



早速キーファーは、ヨハンを捕まえて言った。

「何かこう…珍しい…特別な酒は無いか?」

「特別な酒?」


「他所から入ってきたヤツとか…」


それを聞いたヨハンは、

ニヤッと笑って…小さい声で言った。


「…他のヤツには黙ってろよ…」


すいません…僕には聞こえちゃいましたけどー



ほどなくヨハンは、白いシュッとした瓶を持って戻ってきた。


「何だ…これは」


思わず、僕も近寄っていった。

隣に座って黙って飲んでいたカジミアも、興味深そうに顔を上げた。


「こないだのな…太陽のあるステーションの酒だ」

「…!!」


ああー…あの、南米の!


ヨハンは、更に…氷が入ったアイスペールと、グラスを何個もトレーに乗せて持ってきた。


「リューイのおかげで楽しませてもらったからな…今日は特別に、コイツを開けよう」


そう言ってヨハンは、その白い瓶を開けると…氷を入れたグラスに…順々に注いでいった。



「リューイ、ありがとう…」


賑やかしい店内の一角で…僕らは、その珍しい酒のグラスで、改めて乾杯した。


「…おおー美味いな!」

「うん、美味しいですね…」

キーファーとカジミアは、口を揃えて言った。


「…何ですか…これ?」


何となく…フルーティーな焼酎みたいな味がして、とにかく飲みやすい!ヤバい感じの美味しさだった…


「ぶどうから作った酒らしい」

「そうなんですかー!」


そういえば、南米の…何とかっていう珍しい名前の酒を、チラッと聞いた事があった。


これが…それか…


いや、地球の南米とは違うんだろうけど…



「なーに飲んでんのー?」

だいぶ酔っ払った感じの、チャラ男くんが…ドカッと僕の隣に座ってきた。


「…っ」


さっきはあんなに深妙な顔してたくせになー


「俺にもちょーだい」

チャラ男くん…いや、リカルドは…トレーに乗っていたグラスを取ると、ゴクゴクっと飲んだ。


「うっわー美味ーい!…何これー!?」


「太陽のステーションのお酒ですって」

「そーなんだー!ホセさんの所かあー」


あーそんな名前のオッサンがいたっけなー



調子の上がったリカルドは、グラスを片手に、僕の肩に手を回してきた。


「リューイは…すごいねー」

「…な、何がですか」


「いや、こないだの闘いもすごかったけどさー今日もすごかったー」

「あ、ありがとう…ございます…」


「惚れ直しちゃったよー」

「…っ」



そして彼は、僕に顔を近付けて…他の人に聞こえないくらいの小さい声で続けた。


「記憶…無いんでしょー?」

「あ、はい…」


「だったらさーあ…あいつから俺に乗り換えない?」

「…!!」


言いながら彼は、僕の髪をそっと撫でた。



「何をやってる…」

「いてててっ…」


いつの間にか、僕らの背後に立っていたカイトが、リカルドの…僕の髪に触れた腕を掴んで、締め上げた。


「全く…相変わらずお前は、油断も隙も無いな…」

「…痛いよカイトーちょっとは遠慮しろよー」



僕は、そんな2人を見て、ふふっと笑いながら言った。


「すいません、リカルドさん…その記憶だけは残ってるみたいなんです」

「ええーそうなのー?」



そして僕は、カイトの手を…そっと握った。


「残ってるって言うか…それ以上に今の僕は、前のリューイよりずっと…カイトの事が好きなんです」


「……」



正々堂々言ってのける僕を見て…

リカルドは、むしろ唖然としてしまった。





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