⁑弾き語りワンマンライブ(2)
リカルドも交えての、乾杯のあと…それぞれの面々は、それぞれ飲みながらの雑談に花を咲かせていた。
「ちなみに、動きはどうだ?」
隣に座ったリカルドに…カイトが、他の皆に聞こえないくらいの小さい声で言った。
「ああ…今のところ、まだ沈静状態だな…」
「そうか」
「静か過ぎて…逆に不気味だわ」
「…」
僕は、彼らに気付かれないように…それでも、その会話の内容に、耳をそば立てていた。
「リューイ、そろそろやってもらえる?」
ヨハンが、僕に声をかけてきた。
「あ、はい…わかりました」
リカルドが、僕に向かって笑顔で言った。
「今日はそういう面倒ない事はとりあえず忘れて、楽しませてもらうねー」
「…はい」
「リューイ…また髪型変えてやろうか?」
だいぶ酔っ払った感じのエルンが言った。
「あはははっ…大丈夫です」
僕はそう言って…ギターを持って立ち上がった。
そして、ゆっくりステージに上がっていった。
店中の視線が…僕に集まった。
「…」
とても緊張はしたものの…
それでも僕は、ココにいる全ての人達に、歌を…音楽を、聞かせなければならない!
そんな、熱い気持ちに駆られていた。
「…皆さん、こんばんは…」
「?」
「こんばんは…?」
あー「こんばんは」って挨拶無いのか…
「皆さん…お疲れ様です…」
僕は言い直した。
「今日は、集まって頂いて、本当にありがとうございます…短い時間ですが、楽しんで頂けるよう…頑張ります」
パチパチパチパチ…
拍手が起こった。
そして僕は…ポローンと、ギターをかき鳴らした。
「…!!」
「…ほう…」
初めて、その音を聞いたと思われる面々から、大きな溜息が漏れるのが伝わってきた。
静かに、ポローンポローンと、イントロを弾き鳴らしてから…僕は、目を閉じて、歌い始めた。
「〜♪」
時間で生きている、この世界の人たちへ…まず最初に、選んだ曲は…「大きなのっぽの古時計」だった。
あ、でも体内時計だからな…
時計なんて物は、この世界には全く必要ないな…
なんて思いながら、僕は最後まで歌い切った。
「…!!」
「おお…」
「何なんだ、これは…!」
店内は、大きな拍手と歓声に包まれた。
「ありがとうございます…」
続けて僕は、日本の童謡を、何曲か弾き語った。
決してあまりギターが上手いとは言えない僕が、人前で確実に弾き語れる曲…
しかも、子どもが歌う歌だったら、初心者でも分かりやすいんじゃないかな…と思っての選曲だった。
「しゃぼん玉」「通りゃんせ」
「線路は続くよどこまでも」
そして…「ふるさと」も、歌った。
皆のさまざまな反応が、ステージの上からよく見えた。
驚いていたり、穏やかに微笑んでいたり…
身体を揺らしていたり…目を閉じていたり…
「ありがとうございました…今日ここに集まってくださった皆さまを始め、このステーションの未来に、神さまの恵みがある事を祈って…最後に、この曲を歌います」
そして、僕は…
いつもの「アメイジンググレイス」を歌った。
歌い終えて…僕は、ギターを手に立ち上がると…店内のひとりひとりを見渡しながら、深く頭を下げた。
パチパチパチパチ…
「リューイ、素晴らしい!」
「よかったー!」
大きな拍手と歓声は…いつまでも鳴り止まなかった。
僕は、何度も何度も礼をして…そして、ゆっくりステージから下りると、すぐに自分のテーブルに戻った。
「いやー素晴らしかった!」
「うんうん…すごく良かったですね」
皆が、拍手で僕を迎えた。
「ふぅー」
大きく溜息をつきながら、ドカッと椅子に座った。
「お疲れ様、リューイ…本当に素晴らしかった!」
言いながらヨハンが、エールのおかわりを差し出した。
「…ありがとうございます…」
受け取って、僕はそれをゴクゴクと飲んだ。
「本当に感動した…声だけでも凄いと思ってたけど…その道具の音が加わって、何倍も良くなった」
ヨハンは、興奮冷めやらぬ感じで捲し立てた。
「うんうん…僕もそう思います!」
ヴィンセントも力強く同意した。
「キーファーさんのおかげです」
僕はそう言って、キーファーの方を見た。
「…っ」
彼は目を赤く潤ませていた。
「あんな道具を作れるなんて…」
隣のカジミアが、ボソッと呟いた。
「キーファーさんは、本当にすごい職人さんですね…」
「当然だ…俺の師匠なんだから…」
それを聞いたキーファーの目が、更に潤んだ。
「リューイ…ありがとう」
彼は、若干震える声で…言った。
「…」
僕は、微笑みながら…彼の手を握った。
その後も、色んな面々が…代わる代わる僕の所へやってきては、称賛の言葉を述べていった。
そんな僕の様子を…ずっと誇らしげに見守っているカイトに、リカルドが囁くように言った。
「記憶が無くなって…良かったのかな…」
「…うん」
「今のあいつなら…負けないかもしれないな」
「ああ…」
「もちろん…俺らも負けないけどね」
「ああ」
「新生リューイはどこまで進化していくのかしらね…」
エルンの側に来たルイスが、彼に言った。
「俺も…あいつの果てしなく伸びる数値を、ちゃんと測れる機械を新生しないといかんなー」
「あはははっ…」
そして彼は、しみじみしながら続けた。
「ここにいる皆が…新生リューイに、パワーを貰っちゃったわね」
「…そうみたいだな」
エルンは、大きく頷いた。




