⁑弾き語りワンマンライブ(1)
それから数日後…
いや、ここで言うところの…数十時間後…
僕は、キーファー社製、この世界で初のギターを持って、ヴィンセントの店を訪れていた。
俄然ヤル気の湧いた僕は、ヨハンさんの店で、弾き語りライブをやらせてもらう事にしたのだ。
カイトとエルンも一緒だった。
「今日はすごく楽しみです!」
言いながら、ヴィンセントが今日の料理を出してくれた。
「…」
それは…スキレットよのうな小型の鉄板に、黄色いタイ米と、魚と野菜の乗ったものだった。
「…パエリアですか!?」
「…地球では、パエリアっていうのか…これ?」
すぐにエルンが突っ込んだ。
「魚も一緒に、スープで炊きました」
「…やっぱり…パエリアだ」
「これが合うと思います」
そう言ってヴィンセントは、白ワインを取り出すと…細めのワイングラスに、それを注いでくれた。
「いただきます…」
僕は、パエリアの…魚の乗ってる所を、大きくひと口取って食べた。
「うわあー美味しいです!!」
そして、白ワインを飲んだ。
「ああー絶対合います!ホントに美味しい…」
「うん、美味いな…」
エルンとカイトも、美味しそうにモリモリ食べて、ゴクゴク飲んでいた。
「あんまり飲み過ぎると、歌えなくなっちゃうかな…」
呟きながらも…やっぱり美味しすぎて、僕はだいぶ飲み進めてしまった。
「今日はキーファーも観に来るって言ってたよな」
エルンが言った。
「ああ…カジミアも、ルイス達も来るぞ…レオとジョシュアもな…」
カイトが続けた。
うわー
何か、オールスター勢揃いな感じじゃないですか…
それはちょっと緊張しそうだなー
「皆さん、リューイさんの歌を聞くのは初めてなんですか?」
「そうだな、キーファー以外は…」
「そしたら、皆さんの反応も楽しみですね」
「ああ…」
出た…
また、すごいウチの子見せてやる的な顔…
「そろそろ行きましょうか…」
さっさと食べ終わってしまった食器を洗いながら、ヴィンセントが言った。
「よし…行こう」
「…」
僕は、緊張の面持ちで…くちびるをギュッと噛み締めながら、ギターを持って立ち上がった。
そして僕ら4人は、ヨハンの店に向かった。
「おーい」
後ろから声がした。
振り向くと…キーファーとカジミアが、こっちに向かって手を振っていた。
「おう、ちょうどよかった…」
「カジミア…久しぶりだな…調子はどう?」
エルンが訊いた。
「ああ、こないだの交流以来…割と忙しくしてます」
カジミアが答えた。
「こいつがタウンに来るとか…すごい久しぶりだよな」
キーファーが、カジミアの肩を叩きながら言った。
「でも…たまに、うちの料理は食べてくれてますよ」
ヴィンセントが横から言った。
「あーあの、注文して届くやつ?」
「そうです」
「何、お前…そんな横着ばっかりしてんのか?」
キーファーは、まさに師匠らしい口調で、カジミアに話しかけていた。
「便利な機能は、使わなきゃもったいないじゃないですか」
「そうか?…俺はやっぱり…どうせ食べるなら、タウンまで出て来たいけどな…」
そんな感じで、賑やかしく喋りながら…僕らはほどなく、ヨハンの店に着いた。
「お、いらっしゃい…お待ちしてましたよ」
僕らの方を見て、ヨハンはにこやかに声をかけた。
店内を見渡すと…もう既に、レオとジョシュア、ルイスとヒューが、それぞれテーブルについていた。
他にも、知らないお客さんが、何人か入っていた。
「皆さんエールでいいですか?」
割と中央の…2つのテーブルに分かれて座った僕ら団体様に、ヨハンは訊いた。
「良いです」
「俺も…」
皆頷いた。
ヨハンが、僕らのエールを注いでくれている間に、レオとジョシュア…そしてルイスが、僕らのテーブルに近寄ってきた。
「リューイお疲れ様…今日はどんな事になるのか、すごく楽しみにしてるわね」
「ありがとうございます、ルイスさん…ヒューさんも、来てくれたんですね?」
「あー…誘ったら…一緒に行くって言ってくれて…」
言いながらルイスは、少し顔を赤らめた。
「ありがとうございます…」
「リューイが…何をリーディングするの?」
「そうじゃないよ…何か、俺たちの知らない事をやるんでしょ?」
ジョシュアと、レオも、僕に声をかけてきた。
「ギターを弾きながら、歌を歌うんだ」
「…は?」
「何それ?」
2人は目を丸くした。
「まあ…聞いてみてよ」
「よくわかんないけど…楽しみにしてる」
そして、僕らのエールが運ばれてきた。
ヨハンは、自分もちゃっかりエールのジョッキを手にすると…それを高く掲げて、大きな声で言った。
「皆さん、今日はリーディングセッションではなく、こちら…リューイが、歌ってやつを歌います、楽しみにしててください!」
「乾杯ー」
「かんぱいー!」
そして、僕らのテーブルを中心に…店中のあちこちで、カチャカチャと、乾杯の音が響いた。
うわあー
そんな大々的に言わなくてもいいのに…
そんな風に思いながら、僕は…テーブルを囲むメンバーだけでなく、わざわざ寄ってきてくれる、色んな人たちと乾杯していった。
と、そこへ…
勢いよく店のドアが開いて、誰かが駆け込んできた。
「はぁ…はぁ…間に合った??」
「おう、リカルド…お前も来てくれたのか!」
カイトが言った。
うわあー
ホントにオールスター勢揃いだ…




