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⁑使命を思う

…ん?


ああ…ヒロの部屋か。



夢の中で…僕は、地球は日本の…ヒロの部屋にいた。

迅と翔太も一緒だった。



新曲のネタが出来たので…とりあえずデモ音源を作るかってなって…

翔太がリズムパターンを打ち込んだあとに…迅とヒロがベースとギターをかぶせている所だった。



当たり前に楽器が奏でられていた。

そして、当たり前に…録音されていた。


「あとは氷威の歌だけだな…」

ヒロが、マイクを差し出して言った。


「…」


えーと、どんな歌だっけ…


マイクを受け取ったはいいものの…

歌詞がひとつも出てこない…



容赦なく、オケ音源が流れてきた。


ええい、とりあえず何でもいいから歌っとけ…


「♪〜」



僕は…思いつくままに、歌った。


空を飛んだ事…

気付いたら、白い部屋にいた事…


そして…

カイトを、好きになった事…


「…!」


ふと見ると…ヒロが、とても悲しそうな目で、僕を見つめていた。


「カイトが…好きなの?」

「…」


僕は、思わず黙ってしまった。


懐かしいヒロのギターの音が…

ただただ、僕の心に沁みていった。



思い出した…

僕は、ヒロの事が…好きだったんだ…



「ねえ、ヒロ…」

僕は彼に向かって言った。


「僕は、どうなっちゃうの?」



ヒロは、何もかも全てお見通しな表情で答えた。


「それは…内緒…」

「教えてよ、どうなっちゃったの?」


僕は、ヒロに詰め寄った。


「僕は、どうすればいいの?」



ニヤッと笑いながら…彼は答えた。


「そこに行ったって事は、そこに…お前の使命があるって事なんじゃないの?」

「…」


そんな彼の言葉を聞いて…僕は力無く笑った。


「…ヒロが…作った世界なの?」



気付くと…辺りは靄がかかったように霞んでいた。

翔太と迅の姿は消えていた。


「愛してるよ…リューイ」

「…!!」


そう言ったヒロの姿が…ユラユラと霞みながら…段々と、カイトの姿に変わっていった。


「ヒロ!…待って!」

「…」


ユラユラと…カイトに姿を変えたヒロは…そのまま更に霞んで、どんどん見えなくなっていってしまった。


僕は、大声で叫んだ。


「ヒローっ!!」



僕は、ハッと飛び起きた。


「…」


リューイの…ベッドだった。


夢か…


僕は…両手で顔を押さえた。

そして、しみじみ思ってしまった。


あっちの事の方が、夢になっちゃったんだな…



起きなきゃ…

そして訓練に行かなきゃ…


キーファーさんが、道具を作ってくれるから、それにあのメロディーを録音して、皆に聞いてもらうんだ。

で、皆で強くなって…来るべき戦いの日に備える…



それが…僕の使命なの?


僕は、夢の中のヒロの言葉を思い出していた。


「…」


ねえ、ヒロ…

それが、君の描いてるリューイなの?



「…はぁ…」


僕は小さく溜息をついた。


そんな事…

どんなに考えたところで何も変わらなかった。


僕にとって…

今、この状況が…あまりにも現実だった。


何度寝て起きても…やっぱり僕はリューイだった。



僕はベッドから降りて、のそのそと支度をした。


カイトのいない朝でも、僕は自分で支度をして…自分でお茶も飲めるようになっていた。

いや…これが朝なのかどうなのかも…未だによくわからないんだけど…



いつの間にか、身体の中にどっしり居座っている体内時計のせいで、僕は、いつ出かけたらいいのかも、ハッキリ分かっていた。


そしておそらく…ちょっと頑張れば、エレベーターなんか使わなくても、自分で自分を飛ばす事も、出来そうな気がしていた。



リューイの力は凄かった。

僕はそれを自覚していた。



こないだキーファーさんが言ってた、テディって人みたいに…僕も相手のステーションに乗り込んで、コアを叩き潰せるくらいに強くなってやろう…


それでもし、このリューイの命が無くなったとしても…きっと、リューイは納得してくれるだろう



それから…


キーファーさんが作ってくれたギターも、ちゃんと練習しよう。ルイスさんの店で、歌わせてもらおう



あとは…


戸棚に置いてあった…カイトのグラスを手に取りながら、僕は続けた。



カイトを…

いっぱい愛そう…


もし、このリューイの身体に何かあったとしても、悔いが残らないように…



僕は、そのグラスに…そっと口付けた。



そろそろ行かなきゃ…


僕はグラスを棚に戻すと…部屋のドアに向かった。


そして、サッとボタンに手を翳した。


「…おはよう、カイト」

「…ん」


ちょうどカイトも部屋を出るところだった。


僕は、自分から彼に擦り寄って…彼の腕を掴んだ。


「…っ」

彼は、ちょっとビックリしたような表情を見せたが…すぐにふふっと微笑んだ。


「今日も頑張ろうね…」

「…なんだよ、何か気持ち悪いな」


「だって、キーファーさんも頑張ってくれてるんだもん…僕も頑張らなきゃ…」

「…」


カイトが、ちょっと拗ねたような表情で言った。

「俺も…頑張ってんだけど?」


僕は、立ち止まって…彼の目を見つめた。


「うん…知ってる」

そう言って僕は…彼の頭を両手で抱き寄せた。


「…っ」


そして僕は…

自分の方から、カイトに口付けた。


「…」


口を離れた彼は…戸惑ったように…でも嬉しそうに言った。


「思い出したの?」

「ううん」


僕は、少し恥ずかしそうに…続けた。


「偽物だけど…僕は今、たぶん…本物よりもカイトの事が好きだと思う…」

「…っ」


カイトは、そんな僕の身体をギュッと抱き寄せた。



訓練も前だっていうのに…

僕らはそのまましばらく、廊下のど真ん中で…イチャイチャと抱きしめ合っていた。




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