⁑キーファー増産計画(3)
リドリーは、先日同様…PCの前に座った。
キーファーは、その背後に立つと…リドリーの頭を両手で囲むようなポーズをとった。
「リューイ…やってくれ」
「わかりました…」
僕は、持ってきたコア増強マシンの前に立つと…マレットを握った。
そして、いつものように…メロディーを奏でた。
「…っ!?」
リドリーは、驚いて…一瞬ビクッと震えた。
「な、何…これ?」
「良い音でしょ…いいから、コレを聞きながら…こないだみたいに、俺の力をプログラミングしてみて」
「…わ、わかった…」
戸惑いながらもリドリーは、目を閉じて、キーファーから送られてくるものに集中した。
キーファーも、渾身の力を込めて…両手から自分のコアを彼に送り続けた。
「…」
ほどなく…2人の身体から、陽炎のようなものが、ユラユラと湧き上がってきた。
それは、みるみる大きくなり、光を帯び…やがて2人は、眩しい光に包まれて、その姿が霞んで見えないくらいになっていった。
「すごいパワーだな…」
と、突然…リドリーが、カーッと目を見開いた!
そして、両手の指を…まるで鍵盤を奏でるように滑らかに動かして、キーをカタカタと打ち込んでいった。
「…」
彼はそのまま、取り憑かれたように…キーを打ち続けた。
その間も、キーファーは…ひたすらに念を送り続けているようだった。
どれくらいの時間が経っただろうか…
もう…止めてもいいかな…
さすがに、僕は腕がパンパンになってきてしまった…
「ふぅー…よし、出来たぞ…」
そう言うとリドリーは…カタンと大きな音で、決定キー的なものを叩いた。
それを聞いたキーファーは、ようやく両手を下ろした。
2人を包んでいた、眩しい光が、シューッと音を立てるように消えていった。
それを見て…僕も演奏の手を止めた。
「はぁー」
そして大きく溜息をついた。
「ありがとうリューイ」
「いーえー…」
言いながら僕は、はぁはぁと息を上げた。
キーファーも、額に汗をかきながら、肩で息をしていた。
「すごいパワーだったな…」
カイトがキーファーに向かって言った。
「リューイのおかげで…増強したな」
「本当に…増強した…」
リドリーも、相当疲弊した感じで言った。
「キーファーの力を…分析して、プログラミングする事が…本当に出来た…」
半ば茫然とした感じで、彼は自己満足に浸っていた。
「まさか本当に…出来るとは思わなかった…」
ほどなく…ブィーンと、機械の中から鈍い振動音が聞こえてきた。
そしてそれが、スーッと静まったのを見計らって…リドリーは、その機械の下の方にある小さい扉を開けた。
「出来たよ…」
彼はその中から…
小さなUSBのようなものを取り出した。
「…!!」
大きく目を見開いたキーファーに、
彼はそれを渡した。
「中身はキーファーだ」
「…同じものを…量産出来るのか?」
「もちろん」
「…っ」
僕とカイトも…キーファーの手の中のそれを覗き込んだ。
「これが…小っちゃいキーファーさん…?」
「そうらしい」
「想像してたのと違いますね…」
僕はふふっと笑いながら言った。
「本物よりカッコいいかもな…」
カイトも笑った。
「とりあえず第1の課題はクリア出来たが…ここからがまた問題だな…」
リドリーは言った。
「ああ…耳と口を、どうやって作るかだ…」
「それにしても…その、さっきの音は一体何だったんだ?」
リドリーが、ふと思い出したように言った。
「その道具は何だ…それもお前が作ったのか?」
「ああ、そうだ…リューイの特注だ」
キーファーは、そのコア増強マシンを作るに至った経緯を、リドリーに説明して聞かせた。
「…信じられないな…」
「でも、そんなの…俺たちには全く無かった認識だろ?」
「まあ…確かに」
「それに、実感したろ?…コアの増強を!!」
「ああ…それは確かに…自分でも信じられない力が出た」
僕は、リドリーに向かって言った。
「だから…それを…その、小っちゃいキーファーさんに記録して…1人でも多くの人に聞いてもらいたいんです…」
「…なるほどね…」
「リドリーありがとう…とりあえず、コレを元に…早速、試作品を作ってみる」
「うん…そうしてみてくれ…」
リドリーは、嬉しそうに…
少し頬を赤らめながら続けた。
「もし、それが実用化出来たら…俺も、このステーションの平和に…ちょっとでも貢献できるって…事だろ?」
「ああ…その通りだ」
カイトがキッパリと断言した。
「…」
それを聞いて…リドリーは、静かに微笑んだ。
そして…そのUSBを手にしたキーファーと、僕とカイトは、その部屋を後にした。
「あ、キーファー」
僕らを見送りながら、リドリーは思い出したように声をかけた。
「ん?」
「くれぐれも…量産できるように作ってくれよ」
言いながら彼は、ニヤッと笑って手を振った。
「…ああ、わかってるよ」
キーファーは、若干ブスッとした表情で答えた。
振り返って、リドリーにペコッと頭を下げて…僕らはその階のエレベーターに向かった。
「リドリーさんって…スゴいですね…本当に小っちゃいキーファーさんを作っちゃいましたね」
僕はしみじみ呟いた。
「まー残念ながら、俺もリドリーも…お前のアレ無しには、出来なかったんだけどな…」
「そうだったんですか…?」
キーファーは続けた。
「改めて思ったわ…その音、何としても小っちゃい俺に記録して、皆に聞かせてやらなきゃ…って」




