⁑キーファー量産計画(1)
その日、キーファーは、デベロッパー階を訪れていた。
その階にある…ファクトリーで量産される品物を開発するチームの部屋に行くと…彼は旧友でもある人物を呼んだ。
「久しぶりだな、キーファー、調子はどう?」
「まあボチボチだな…リドリーお前は?」
「そうね、ここん所は大きな動きは無いなー」
リドリーと呼ばれた人物は、キーファーを、そのエリアの中の自分のスペースへと誘うと、コーヒーらしきものを淹れて、彼に手渡した。
「ありがとう…」
キーファーはそれを受け取って、ひと口啜った。
「うん…相変わらず、お前が作ったコーヒーは美味いな…これが量産出来るってのが、やっぱりすごい技術だ」
リドリーは、それを聞いてニヤッと笑うと…自分もそれを啜りながら、言った。
「で?…量産嫌いのキーファーが…今日はまた、どういった風の吹き回しでこんな場所に来たんだ?」
「…実は…お前に協力して貰いたい事があるんだ」
キーファーは、語り始めた。
「早い話が…俺の能力を、量産したいんだ」
「はあ???」
リドリーは、目をパチクリさせた。
「要は…俺が出来るような…聞いた音を記録して…それを再生する道具を作りたいんだ…」
「音って…あの、報知音じゃダメなのか?」
「あれよりもっと繊細な…例えば、今こうやって喋ってる内容を、そのまま記録出来るような…」
「…」
リドリーは黙ってしまった。
そんなものは聞いた事も無いし…もちろん考えた事も無かった。
しばらくの熟考の後に…彼は言った。
「確かに…コアの力を、武器やファクトリーのシステムに、実際導入しているんだからな…それと同じような方法で、お前の力を道具にする事も、不可能ではないとは思うが…」
「本当か?」
「んーまあ、理屈ではね…」
「何とか、やってみてもらえないか?」
リドリーは、立ち上がると…割と厳重そうな重い扉の、ロッカーのような棚を開けると…中から箱を取り出してきた。
それを開けると…中には、四角い小さいUSBのようなものが、たくさん入っていた。
「何だこれ…」
そらを覗き込んで、キーファーが訊いた。
「お前が武器や機械に凝ってた頃には、こんなの無かっただろう?」
彼は、その中の1つを取り出して、キーファーに渡した。
「この中に…それぞれ違う種類のコアが入ってんだ」
「へえー」
キーファーは、興味深そうに…それを、ひっくり返してみたりしていた。
「例えば…ストアの陳列棚には、その物の棚ごとに、コレが入ってる」
彼は、違うUSBを取り出して言った。
「ボタンを押した相手を検知して、その人の部屋にそれを移動させるコアだ」
「え、それが…こんなのに纏まってんのか?」
「そう…いちいち配線するより簡単だろ?」
「確かに…で、これ自体も量産出来んのか?」
「ああ…ファクトリーの武器屋や、タウンのレストラントでも、導入してるヤツも多い」
(あ、なるほど…そのシステムで、こないだのヴィンセントの料理が届いたのか)
「ただ、コレに取り入れられるコアは…今のところ、地下に元々あるコアに限られる」
「…」
「物を移動させるコアは…まあ、中には自分で出来るヤツもいるけどな…」
(ああ…リューイみたいなヤツね)
リドリーは、改まった感じで続けた。
「お前の言う所の道具を開発するにあたって…まず1つ目の課題は…地下には無い、お前のその力を、いかにしてコレに落とし込めるか」
「…」
「それと、もう1つ…その力を落とせたとして…どんな形状にしたら良いのか…全く見当がつかないな…」
「記録するボタンと…再生するボタンがあればいいんじゃないのか?」
「うーん…」
「…」
リドリーは、必死に考えているようだった。
キーファーはふと思い立った。
(そうか…リューイの言う所の地球には、そういう機械が既にあるんだろうな…)
(また、絵に描いてもらえば…イメージが湧くかもしれない)
「わかった…それは俺の方で何とか考えてみる」
「そうか…そしたら…さしあたり、コレにお前の力を落とし込む方法を…考えればいいんだな」
「…出来そうか?」
「いやー分からんなー」
「俺がそこへ行って、念じればいいんじゃないか?」
「念じてプログラミング出来るもんなら、是非そうして欲しいところだが…」
「…」
(今の俺の力じゃ、そんな事は出来るハズがない…)
(でも…リューイの、まさにアレを聞きながらだったら…もしかしたら不可能では無いかもしれない…)
「どんな風にやるのか…見せてくれないか?」
「わかった」
そして、さしあたりリドリーは…その階の奥の方にある、まさにそのUSBを量産する機械がある部屋に、キーファーを案内した。
地下から伸びた配線に繋がれた、黒い四角い機械の脇に…プログラムを打ち込むための、PCのような機械が置かれていた。
「試しにやってみるか…」
リドリーは、そのPCの前に座った。
「俺の頭に…手を翳してみてくれないか?」
「…ん、こうか?」
キーファーは、言われた通りにした。
「そんで…お前の力を…俺に流してみてくれ」
そう言って、リドリーは目を閉じると…自分のコアに集中した。
ほどなく、彼の身体から…ユラユラと陽炎のようなものが湧き上がってきた。
「…」
キーファーは…渾身の力を込めて、その手からリドリーに向かって、コアを流した。
キーファーの身体からも、陽炎が揺れ出た。
「…」
しばらくそのまま…2人は黙って集中し合っていた。
「んーやっぱダメだな…」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「何となくは伝わって来るんだけど…それを数値化するのが難し過ぎる…」
キーファーは、息を上げながら言った。
「…でも、伝わる事は…伝わったんだな…?」
「ああ…お互い、もう少し…力が強ければ…数値化も不可能じゃ無いかもしれない…」
それを聞いたキーファーは、ニヤッと笑った。
「お互いの力が…増強すればいいんだな?」




