⁑不穏な動き
それからというもの…僕は、自分の訓練の前に教習機関に出張演奏するのが日課になった。
いちいち、ひとりひとりの部屋を回っていたらキリが無いので…いわゆる朝礼的な感じで、広い空間に全教習生を集めて、僕の演奏を聞きながら、皆で地べたに座って集中を行ってから…それぞれの訓練に散っていくというのが、朝のルーティンになった。
差し詰め…
何とか教の、集団瞑想みたいな図だ…
それでも、個人差はあるものの、ボチボチ効果があるようで、機関の指導員たちからは、そこそこの称賛を受けていた。
しかも、演奏してるのが、教習生の憧れの芸能人だしね、一応…
「リューイさんのおかげで…コアを飛ばせるようになりました!」
「僕は今日初めて、物を動かせましたー」
「リューイさんのその音、すごくステキですね〜」
「あ、あーホントに?…よかった、ありがとう…」
いちいち囲まれて、ワイワイ言われるのも、自分的にはあまり良い感じがしなかった。
「ふぅー」
その日も、朝のルーティーンを終えて…僕は溜息をつきながら、体育館に向かっていった。
「お疲れ、リューイ」
僕の姿を見付けたカイトが、声をかけた。
「そっちの調子はどんな感じ?」
「うん…まあまあかな…」
「実証実験は成功だな…」
「うーん…でもね、やっぱり出来る事なら、ひとり訓練のときに聞く方が良いような気がする」
「リューイがもう何人か、いればいいんだけどな…」
「…」
あーんな簡単なの、小学生でも出来るけどな…
ま、カイトには難しいかもね
「キーファーさんだったら…ものすごく練習したら出来るようになるんじゃないかな」
「あー確かに…あいつは好奇心旺盛だからな」
喋りながら僕らは、いつもの…宇宙空間に変貌する部屋に向かった。
「今日は終わったらヴィンセントの所に行くぞ」
「…そうですか…わかりました」
また飲み会ですかー
思いながらも…僕は部屋に入り、自分のソードを手に取った。
「おはよう…今日もよろしくね」
僕はソードに声をかけた。
ソードくんは、キラッと輝いた。
自分で言うのも何だけど…僕のパワーは、日に日に強く、大きくなっていった。
ソードくんが、僕の身体の中のコアを、効率良く、いくらでも引き出していってくれるのだ。
僕はもう、特に力を込めて集中する事も無く…軽く指を刺す感覚で、強烈な攻撃砲を撃ち出す事が出来るようになっていた。
物を動かすのも楽になった。
何なら、今すぐ…パチンと指を鳴らして、例のマシンをここへ出せるくらいだった。
おそらく、カイトの事も…いつでもどこへでも、持ち運び出来ちゃうだろう…
まさか…自分が、こんな風に…あり得ない力を使いこなす事が出来るようになるなんて…
それでも僕は、自分が日々レベルアップしていくのが、面白くてしょうがなかった。
差し当たり、その訓練の中に現れる、バーチャルな敵キャラに対しては、ほぼ負ける事は無かった。
まさに…毎日、VRの3Dシューティングゲームを楽しんでいるような感覚だった。
その日の訓練も終盤に差し掛かった頃…
カイトが僕を呼んだ。
「ウィルフリードとリカルドに呼ばれた」
「…」
えーと…ウィルフリードは理事長で…
リカルドって、誰だっけ…
「リサーチ階に行くぞ」
あーあの…チャラ男くんか…
僕は、ソードくんに「お疲れ様」を言うと、急いでカイトの後を追った。
エレベーターに乗り込む彼の背中を見ながら…僕は、僕の中のカイトが、いつになく緊張しているのを感じた。
「…何か…あったの?」
「…それは…行ってみないと分からない…」
「…」
つられて緊張しながら…僕は彼に続いて、リサーチ階に降り立った。
廊下を少し歩いて、僕らは先日も行った、放送局みたいな部屋に入った。
モニター画面に向かって座るリカルドの後ろに、ウィルフリードが立っていた。
「何が起きた?」
カイトが彼らに向かって言った。
「ああ…色々想定はしてたんだけど…そん中でも、割と最低最悪な状況だね…」
「…どういう事だ?」
「こないだやられた黒いステーションと…もうひとつ、こっちの紫のステーションが…どうやら、ほぼほぼ同時期に、ウチを狙ってくるらしい…」
カイトは、その…2つのステーションの全貌が映っているモニターを、食い入るように見つめながら…リカルドに訊いた。
「紫の方は、どんな相手なんだ?」
「少なくとも…ウチと同じか、もしくはそれ以上の攻撃力を持ってる…」
「他の所も、攻略してんのか?」
「ああ…割と順調に、負け知らずで来てるな…」
「ウチを攻略して、更なるパワーアップを図ろうってわけか…」
「そう言う事だろうな…最終目的は、こっちなんだろうから…」
リカルドは、黒い方のステーションを指差した。
「だからこそ…奴らの動きを察知して、このタイミングで動き出したんだろう…」
「ウチの戦闘力が弱っている所に漬け込んで、あわよくば掠め取ろうって三段か…くそっ…嘗められたもんだな…」
僕には…彼らの話している内容が…今ひとつピンと来なかった。
「…それって…どういう意味なんですか?」
「まー俺らの力が及ばなければ…このステーションは、どっちかに攻略されちゃうって事ー」
「攻略…」
「ステーションごと、乗っ取られるって事だ」
「ヤツらの目的は、ウチのコアだからね…」
「…」
例の、桜のステーションが、攻略されて無くなってしまったように、ここも無くなってしまうって事なのか…?
「それ…いつですか?もう決まってるんですか?」
「まあ、9割型は確定だろうな…まだ正式に声明が出されたワケじゃないが…時間の問題だろう」
「…」
「どうしたら…止められるんですか!?」
僕は思わず叫んだ。
「そりゃあ…」
「追い払うしか無い…」
「…追い…払えるんですか?」
ウィルフリードは、僕を見て…少し笑いながら言った。
「追い払えるかどうかは、戦闘部隊…つまり、君たちの力に掛かってるんだけど…」
「…っ」
「特に、エースのお前の力に…ね」




