⁑実験(2)
「…何で?」
「ヒュー!」
「何が起こったんだ?」
光の中から現れた人物は、目をパチクリさせた。
「…」
何が起こったのか分からないのは、僕らも一緒だった…
しばらく考えて…僕は気付いた。
あ、そっか…
この人が、ルイスさんがいちばん欲しい物…なんだ!
「ご、ごめんね…ヒュー」
ルイスは彼に言うと…少しだけ顔を赤らめて…改めて彼を紹介した。
「彼の名前はヒュー…ここの指導員仲間よ」
「どうも…」
ルイスより少し背の高い、ヒューと呼ばれた人物は、僕らに向かってペコッと頭を下げた。
「君たちの事は知ってる…有名人だからね」
僕らも、彼に頭を下げた。
「それはいいんだけど…何で俺、ここに来ちゃったわけ?あっちで訓練してる最中だったのに…」
「本当にごめんなさい…」
ルイスは、拙い感じで事情を説明した。
それを聞いているうちに、そのヒューと呼ばれた人物の顔も、段々と赤くなっていった。
一連の流れを聞き終わったヒューは、半信半疑な表情で言った。
「本当にコアの力が増えるのか?」
「だって、リューイじゃあるまいし…こんな風に誰かを移動させるなんて、今まで出来た事ないもの…」
「…」
ヒューは、黙って少し考えてから…続けた。
「それ…今俺が教えてる子にも試してみてもいいかな?」
「是非とも試させてください!」
「それを実証実験させてもらおうと思って来たんだ」
僕とカイトは、前のめり気味に言った。
「そうか…わかった、お願いする」
ルイスとカイトと、「コア増強マシン」を持った僕は…ヒューの後について、その部屋を出た。
そしてヒューは、少し先にある…さっきと同じような小部屋に入っていった。
そこには、まだ高校生くらいに見える若い男子がいた。彼は、慌てて心配した様子で言った。
「どうしちゃったんですか!?…急に消えちゃったから、ビックリしました」
「俺もビックリだったんだけどね」
ヒューは笑いながら言った。
「驚かせて本当にごめんね、私がヒューを引っ張ってきちゃったみたいなの…」
ルイスが、とても申し訳無さそうに言った。
「ルイスさんが?…そんな事、出来るんですか!?」
「それが…出来ちゃったのよー」
その彼は、ヒューとルイスの後ろにいる、僕らの姿を見付けると、更に驚いた様子で叫んだ。
「カイトさん!…リューイさんも…!?」
「ちょっとお邪魔するよ」
「な、何で…!?」
出た…
また、芸能人を見る目だ…
崇拝とか畏敬の念に満ちたような…キラキラと輝く彼の目を見て…僕はまた、何とも居た堪れない気持ちになった。
「この2人がね、君のコアのパワーアップのために、ちょっとした実験をさせて欲しいんだって」
「えええっ!?」
「上手くいくかどうか…わかんないんですけどね…」
僕は、持ってきたマシンを、その部屋の真ん中にあるテーブルの上に置いた。
「とりあえず…訓練を続けよう」
ヒューは、彼を椅子に座らせた。
「あ、待ってください…椅子じゃなくて、床に座りましょう」
僕は思わず口を挟んだ。
「床に?」
「そうね…床が良いかもね」
ルイスも言ってくれた。
「新生リューイが編み出した訓練方法よ」
「…?」
「新生リューイはすごいのよ…普通の人の数倍の早さで、元々以上にパワーアップしたんだから!」
…そ、そうだったんですかー?
「やってみよう」
「…はい」
ヒューにも促されて…彼は床に座った。
「いつものように、コアに集中してみて」
「…わかりました」
彼は目を閉じた。
ヒューが、シュッと手を上げて…部屋の灯りを消した。
ルイスが…僕に目配せをした。
僕は小さく頷くと、マレットを握った。
そして…例のメロディーを、奏で始めた。
「…?!」
それを聞いた彼は、一瞬ピクッと肩を震わせた。
「そのまま…コレを聞きながら、集中を続けて」
ルイスが言った。
ヒューも驚いていた。
恐らく彼も…生まれて初めて、メロディーってものを聞いたに違いなかった。
…と、しばらくすると…座っている彼の身体から、ほんのり薄い…湯気のようなものが、フワッとたち上がった。
「…!!」
僕以外の3人は、目を見張った。
それは段々と…濃い煙のようになり…そのうちに、彼の身体の表面をユラユラと包む、陽炎のようなものへと変化していった。
中でも、いちばん驚いていたのは…ヒューだった。
「…目の中のコアは、どうなってる?」
彼は、驚きを押し殺して…なるべく静かな口調で、彼に訊いた。
「すごく光ってます!…今まで見た事ないくらい…」
彼が答えた。
「そうか…」
ヒューは、興奮した様子で…息を荒げながら呟いた。
「両手を…前に出してみろ」
「…」
彼は、言われた通りにした。
「コアを…その、手の中に移せるか?」
ああ…
僕もルイスさんに、同じような事を言われたっけ…
少し懐かしく思いながら…彼の様子を微笑ましく見ながら…僕はメロディーを奏で続けていた。
「…っ」
必死に力を込める彼の、身体に纏わり付く陽炎が、より一層ユラユラと揺れた。
それでも、残念ながら…その差し出した両手のひらに、光が現れる事は…無かった。
「…出来ませんでした…」
とてもガッカリした感じで…彼は言いながら目を開けた。
「…いや、それでも…すごい進歩だ!」
「…ホントですか?」
「自分でも、わかっただろう?」
「あ、はい…その不思議な音が聞こえてきたら…コアがものすごく光り始めました…」
ヒューは、それを聞いて、とても興奮した様子で言った。
「こいつから、あんなにコアが滲み出たのは初めてだ…」
「そう…なんですね…」
「って事は…やっぱり少しは効果あるって事だな」
カイトが冷静な口調で言った。
「いや、大ありだよ…本当に…!!」
ヒューはしみじみ続けた。
「正直…こいつは、ファクトリーかタウンに転向させるしか無いかもって思ってたからな…」
「…」
えっ…何、そういう選択肢もあったんですか???
だったら僕もそんな頑張んないで、
転向させてもらった方がよかったのにー




