⁑試作品で戯れる
エルンと別れて、エレベーターで部屋の階に戻った僕らは、手を繋いで廊下を歩いていた。
繋いでいた…というよりは、カイトが強引に僕の手を握っていた…と言うのが正しいか。
光って見える僕の部屋の手前の、カイトの部屋の前で…僕は、彼の手を振り解きながら言った。
「じゃあ、おやすみなさい…」
「…」
カイトは僕の手を離そうとしなかった。
もうー酔っ払いなんだから
「離してください!」
「…」
カイトは、拗ねたような表情で僕を見た。
「今日は戻ります!…だって、試作品がちゃんと届いてるか確認したいですから」
僕は強い口調で言った。
「…そうか、分かった」
カイトはそう言って…僕の手を握ったまま、今度は僕の部屋の前に行った。
「開けて」
「…っ」
だったら僕の部屋に来るっていうアレですか…
「はあー」
僕は、大きく溜息をついた。
「部屋に戻って、さっさと寝た方がいいんじゃないですか?」
「さっさと寝るさ…お前と一緒に」
「…っ」
もうー
致し方なく…僕は手を翳して、自分の部屋の扉を開けた。
当然のように、カイトは一緒に着いてきてしまった。
とりあえず、そんな彼にはお構いなく…僕は、例の試作品を探した。
「あっ…」
グラスが並んで出しっ放しの、キッチンのテーブルの上に…確かにそれが届いていた。
僕は、カイトの手を振り払って駆け寄った。
「よかった…ちゃんと送れたんだ…」
僕は、その試作品を両手に抱えて…どこか傷などついていないか、確認した。
「…っ!」
と、カイトが…背中から僕に抱きついてきた。
もうーしょうがないなー
思いながら…僕は、そんな事はお構いなしに、その試作品を鳴らし始めた。
いちいちグラスの水量を気にする必要もなく、それは見事に正しい音程を響かせていた。
「キーファーさん…すごいな…」
鳴らしながら…僕は無意識に呟いた。
「何…キーファーの事好きになっちゃった?」
酔っ払いカイトが絡んできた。
「…」
あーもう…めんどくさいな…
僕は、完全に彼を無視して…とりあえずいつもの、コアメロディーを、鳴らした。
明日、ルイスさんに聞かせたいからな…
確実に弾けるようにおさらいしておかないと…
「…」
僕がそっちに夢中になっていると…いつしか、背中に張り付いていたカイトが…黙って動かなくなった。
…寝ちゃったかな?
思いながらも、何度か練習を繰り返してから…僕はようやくマレットを置いて、僕の前に回されたカイトの手を掴んだ。
「…」
彼は…まだ黙っていた。
「カイト…?」
僕はゆっくり後を振り向いた。
「…終わった…?」
絞り出すような声でそう言ったカイトは…目を閉じて、必死に何かを堪えているような表情をしていた。
「どうしたの?…具合悪くなっちゃいました?」
「…はぁ…はぁ…」
息を上げながら…カイトは目をバチッと開けた。
「…!!」
その、彼の眼差しは…怖いくらいに鋭かった。
それは、何て言うか…僕の目に突き刺さって…僕の奥の深い所まで踏み込んで来るような…そんな感覚だった。
カイトは、震える声で言った。
「…あ、溢れてきた」
「…な、何が…?」
僕は若干、引きながら返した。
「お前の…それのせいで…俺の中のお前が…」
「…っ」
言いながらカイトは、勢いよく…力強く僕を抱きしめた。
「…カ…カイト…」
「我慢出来ない…」
彼はそのまま、僕の身体を抱き上げると…ドタドタと寝室に向かった。
僕の身体をベッドに投げ出すや否や…彼は僕の身体の上に覆い被さった。
「リューイっ…」
息を荒げながら…カイトは僕に口付けた。
「ん…んんっ…」
うわあっ…
まさに溢れるような、眩しく輝く彼のコアが…くちびるを通して、僕の中にドボドボと流れ込んできた。
「…っ…んっ…」
…こんなに入ってきたら…
僕の身体が、もたなくなっちゃう…
ほどなく僕の身体は…あっという間に、まさにカイトでいっぱいになり…溢れてしまう程になっていった。
目の中のコアは、激しく眩く光り輝き…身体の芯がボーッとして…僕は、どんどん力が抜けていった。
でもそれは…決して不快な感覚では無かった。
ようやく口を離れたカイトは…僕を見下ろして言った。
「俺は…もっと強くなれる…」
「…」
「お前と一緒に…強くなる…」
「…カイ…ト…」
そして彼は、若干震えながら…力づくで僕の服を脱がせていった。
「はっ…止め…て…」
抵抗しようとするも…カイトで溢れた僕の身体は、全く言う事をきかなかった。
僕はカイトのなすがままに…肌を露わにしていった。
「…カイト…やめ…あっ…」
僕は、声を震わせた。
言葉では拒んでいても、僕の中に渦巻くコアは…むしろ、更なるカイトを求めて止まなかった。
「はあっ…あ…」
敢えなく僕は、再び彼を受け入れてしまった…
グルグルと混ざり合い、溶け合う2人のコアは…前回にも増して眩しく輝いてるように見えた。
「…リューイ…眩しい…」
息を上げながら…カイトがそう漏らした。
「んんっ…うん…」
震えながら…僕も小さく頷いた。
やがて…ドクドクと流れ込む彼を感じながら、極点を超えた僕は…息を上げながら、そっと目を開けた。
眩しいのは、目の中だけでは無かった。
僕を見下ろし、肩で息をするカイトの身体が…まるで陽炎のように、ユラユラと光を放っていた。
「…すごい…光ってる…」
「…お前もな」
「…」
言われて僕は、横を向いて…自分の手を見た。
「…!!」
僕の手からも…何やらワケの分からない光が、ユラユラと放たれていたのだ。
「ホントだ…強くなれそう…」
僕は思わず呟いた。




