⁑試作品(2)
「あと…コレも作ってみた」
「…!!」
キーファーが出してきたものは、木でできた板に、ギターの弦のようなものが、何本も張りつけられているものだった。弦の両端は、まさにペグのような物で留められていた。
「コレまた妙な道具だなー」
「これも音が鳴るのか?」
「あ、はい…ほら、こうやって弾いて音を出すんです」
僕はそれを、指で弾いてみた。
ギターというよりは…日本の…琴に近い感触だった。
「でも…これだと、この張ってあるやつの数しか音が出ないよな…」
そうか…
僕はハッと思いついて言った。
「何か…書くもの…ありませんか?」
言われて、キーファーは…そこら辺に置いてあった、黒板のような黒い板と、白いチョークのような物を差し出してきた。
「…」
紙とかペンはないの?
思ったものの、またそれを言い出して説明したりするのが面倒くさそうだったので…僕は大人しくそれを受け取った。
そして、僕はそれに…ギターの絵を描いた。
彼らは、椅子に座って、再びエールを飲みながら、僕の手元を興味深そうに覗いていた。
「僕も実は詳しい作りは分からないんですけど…」
僕はその絵をキーファーに見せながら、説明した。
「ここの弦は、固定されてるんです…そして、こっちの…このペグで、チューニング…音程を調節するんです」
「…ふんふん」
「…で、ここに穴が空いてて…たぶんそこに反響して、音が外に出て行く感じなんだと思うんです」
「線は6本なのか?」
「はい…それで、押さえながら弾く事によって、この…グラスみたいに音程を変えていくんです」
「…なるほど…そしたら、相当な数の音が出せるな」
「そう、そうなんですよ!」
「へえー」
キーファーは、僕の拙い絵を見ながら、色々と考えを巡らせているようだった。
「そんで…その…音を出す道具を、どうしようって言うんだ?」
酔っ払いエルンが訊いてきた。
「あのな…すげー秘策があるんだ」
酔っ払いカイトは、エールの瓶をテーブルに叩き付けるように置くと…身を乗り出して、ニヤッと笑った。
「秘策?」
「戦闘部隊一斉コアパワー増強プロジェクトだ」
「何だそれ、またえらい大掛かりな計画だな」
「…確かに…あれは不思議な感覚だった…」
僕の絵から目を上げないまま、キーファーが言った。
「だろ?…あれを、全員に聞かせてやるんだ」
なるほど!
カイトが前々から、何やら企んでいたのは、そういう事だったのか!
確かに…僕のコアのパワーアップに、あのメロディーが関係しているのは間違いなかった。
しかも、カイトとキーファーも、それを体感した。
他の戦闘部隊の皆にも、効果があるかもしれない。
そしたら、全員の能力の底上げに繋がる。
「試しにエルンも聞いてみろよ…リューイ、そのグラスのやつで、あのタラリーンってやつ、鳴らしてみてくれよ」
「…」
こんな酔っ払い状態でも効果あるんだろうか…
「分かった…」
僕は、キーファーの試作グラス製楽器の前に立った。
そして、あのメロディーを…鳴らした。
「…」
「聞きながら…集中するんだ」
カイトに言われて、エルンは目を閉じた。
酔っ払いなので、若干ユラユラしてはいたが…そのうちに、御多分に洩れず、エルンの身体からも、じわじわと陽炎のようなオーラが湧き上がった。
「…何か、出せそう…」
エルンが呟いた。
「やってみろよ…」
更に調子に乗せられた酔っ払いは、両手を自分の前に合わせた。彼の両手に挟まれた空間に、彼の身体から発せられた陽炎が集まって、眩い光を放ち始めた。
「さて…何が出るかな…」
「…」
やがて、その光が、段々と小さくなっていった。
「…!!」
「あーあ…」
すっかり光が消えた、エルンの両手の間には…何というか、ワインにしか見えない、瓶に入った飲み物的な物が現れた…
「おおー今飲みたいなーって思ってたんだ!!」
エルンは、飛び上がって喜んだ。
「すごいな、俺!!」
彼は早速、それを開けて…あろう事か、ぐい呑みに注いで味見をした。
「うん…味も、俺好みだ!」
「…」
何だかなー
カイトやキーファーの時に比べて、全然ロマンティックじゃないなー
エルンは、僕とカイトのぐい呑みにも、それを注いだ。
「…うん…確かに美味いな」
まあ確かに美味しいけど…
エルンの身体から出てきたって思うと…ちょっとな…
「いいな、それ…それを聞いたら、いつでも欲しい物が出せるのか?」
そう言う言い方されると身も蓋もないですが…
「でも、自分がパワーアップした感じがしたろ?」
「したした!」
結局、今欲しい酒を出しちゃっただけだったけどな…
「…もうちょっと鳴らしててくれない?」
ハッと思って、そう言ったキーファーの方を見ると…
彼が手を触れている、試作品の弦を張った板が、陽炎のような鈍い光を放っていた。
「お前が描いてくれたみたいなヤツが、出来そうな気がする…」
マジか!!
キーファーさんすごい!!
僕は、急いで再びマレットを握った。
そしてまた、あのメロディーを鳴らし続けた。
みるみるうちに、キーファーの身体かから、オーラが発せられた。それは、試作品の板へと流れていき…更に眩く光り輝かせていった。
僕は目を見張った。
そうだよ…
そういう有効利用をして欲しかったんだよ!!




