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⁑郷愁の味

カジミアに武器を預けた僕らは…その足で、キーファーの工房に向かった。

例の…楽器製作の進行具合を確認するために…



「キーファーいるかー」

カイトは大声で叫びながら、相変わらずゴチャゴチャした無人の店内を、ズカズカと進んでいった。


「そんなデカい声出さなくても聞こえる…」

奥の方から、モゾモゾとした声が聞こえた。


「調子はどうだ?」

「んーボチボチ…」


キーファーは、何やら作業していた手を止めると…僕らをそこへ座るよう目で合図した。

僕らは、椅子に座った。



改めて店内を見回してみると…なるほど、ココには武器っぽい物がひとつも見当たらなかった。


「キーファーさんは、武器は作らないんですね…」


「昔は作ってたさ…」

「そうなんですか?」


「さっきのカジミアは…言ったらキーファーの弟子だ」

「えええーっ」


そう言われてみると…何となく作風が似てるかも



「余計な事は言わんでいい…折角忘れてんのに…」

言いながらキーファーは、ポットと…茶碗のようなカップを持ってきた。


その横に…小さい茶色い…泡立て器のような物が添えられていた。

それにも、僕は…見覚えがあった。


「これ、なーんだ」

キーファーが、僕の反応を試すように訊いてきた。



よくよく見てみると…茶碗のようなカップの中に、緑色の粉が入っていた。


「抹茶だ…それと、それは茶筅ですね!」

「おおーさすが!」


「それも、桜のステーションから掠め取ってきたんですか?」

「物騒な言い方するなよ…ちゃんと円満取引で頂いてきたんだから」



キーファーは、粉の入ったカップにお湯を注ぐと、それを茶筅でかき混ぜた。


「ああ…キーファーさん、そうじゃないです!」

「えっ?」


僕は思わず彼の手から茶筅を奪い取った。


「こうやって…優しく縦方向に…切るように泡立てるんです」


幼少時に…親に無理やり茶道教室に通わせられた事があった僕は、その時の事を思い出しながら、お茶をたてた。


「…」

「で、最後に、泡を細かくするんです」


泡立った抹茶の…表面がふんわりした所で、僕は茶筅をゆっくり回しながら離した。


「へえーこんなにキレイに泡立つもんなのか…」

キーファーは、僕がたてた抹茶を、ひと口啜った。


「美味い…」


その間に僕は…カイトの分のお茶をたてた。


「今まで全然正しい飲み方出来てなかったんだな…」

キーファーは、呟きながら、何度もそれを啜った。



「何だコレ…」

訝しげな表情で、カイトもひと口それを啜った。


「美味いのか…コレ?」


「カイトの味覚は雑だからな…こういう繊細な味がよく分かんないんだろ」

「何だと?」


「あはははっ…抹茶はね、好き嫌いが分かれますから…でも、焼酎で割っても美味しいんですよ」

「焼酎?」


キラッと目を光らせたキーファーが、店の奥に走った。


しばらくして、彼は…茶色い瓶を持って戻ってきた。

「もしかして…コレか?」


僕は、その瓶の蓋を開けて…匂いを嗅いでみた。

「…!!」


残念ながら焼酎では無かった。

それは…何と、日本酒の匂いだった…


「これも…桜のステーションですか?」

「米から作った酒だって言ってた…」


「…」


僕はまた…郷愁で胸がいっぱいになってしまった。

勝手に、涙がポロポロと溢れた。


「…」

2人は、そんな僕の様子を、黙って見守るしかなかった。



「…これは、僕がいた…日本のお酒です…」

「…」


「お米が…とても美味しい国…でした」

「…そうなのか…桜と言い、この抹茶と言い…本当に、あのステーションとよく似ているんだな…」



キーファーが言ってるそのステーションは、本当に…日本のような所だったんだ…


それが…今はもう、交流が無くなってしまったっていう…僕にはそれが悲しかった。



「今日はもう終わりなのか?」

急にキーファーが言い出した。


「ん?…ああ、終わりだ」

カイトが答えた。


「よーし…」

キーファーは、またいったん奥へ行くと…今度は、とても小さい…ぐい呑みのようなカップを3個持ってきた。


「…それは…」

「そのステーションでは、その酒を、こんな感じのグラスで飲んでたんだ…」


言いながら彼は、そのぐい呑みに、日本酒を順番に注いでいった。


「見よう見まねで俺が作った」

「…」


キーファーは、日本酒の注がれたぐい呑みの1つを、僕に差し出しながら言った。


「合ってるか?」

「…っ」


僕はまた…胸がいっぱいになった。


「…はい…合ってます…キーファーさん、流石です」


彼は、ふふっと笑った。


そして僕らは、それで乾杯した。



「美味いな、これ!」

抹茶のときは微妙な反応だったカイトが、すぐに言った。


「ちなみにコレに合うツマミって何だ?」

キーファーが僕に訊いた。


「そうですね…やっぱり和食かな…イカとか…」

「イカ?」


居ないのか…


「刺身とか…」

「さしみ?」


「えーと…魚は、ここには、あの巨大なヤツしか居ないんですか?」

「そうだなー」


「あれを、生で食べたり…乾燥させた物とかは、無いんですか?」


「生で食べれるのか…あれ?」

「ストアにあるヤツには、たまに乾燥して入ってるけどな」


あーインスタント系の加工は出来るわけね…



「…」

ちょっと考えた風のキーファーは、また奥から、ストアで買ったらしい(いや、買ったわけではない)トレーに入った食べ物を出してきた。


「確か…これに入ってた筈だ…」

彼はそれを開けた。


「…」


なるほど…乾燥したタイ米みたいな物の上に、乾燥した魚っぽい物が乗っていた。


僕はそれを…摘んで食べてみた。


「…うん…合うと思います!」

「本当に?」

「どれどれ…」


2人も、恐る恐る…摘んでいた。


「あっ…ホントだ」

「合うな…美味い」


まさに乾物っぽい…干し鱈のような味だった。

試しに食べてみた乾燥したタイ米も、あられのようで、これまた日本酒にとても合った。



「いやーリューイのおかげで、大発見だな」

「美味いな…これ、もっとあるのか?」


「まだまだあるから遠慮なく飲んでけよ」

言いながらキーファーは、また奥からもう1本取り出してきた。



あーあー

今日は日本酒で、また深酒だな…

っていうか…楽器見に来たんじゃなかったっけ…




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