⁑激しい訓練(1)
翌朝…(いや、朝なのかどうなのかも、未だによくわからないが…)僕はまた、自分でもビックリするくらい、スッキリ目が覚めた。
酒も残っていなければ、身体の怠さも何も無かった。
たぶん、やっぱりコアの力なんだろうな
カイトは、もう既に起きていた。
部屋中に、とても良い香りが漂っていた。
あー美味しいコーヒーだ…
僕は、その匂いに釣られるように、キッチンに向かった。
「おはよう」
「おはようございます…」
カイトは、淹れ立てのコーヒーを、例の美しいカップに注いで、テーブルに置いた。
僕らは、向かい合って座って、それを啜った。
「ホントに美味しい…」
僕は、溜息をつくように言った。
「リューイのためのスペシャルブレンドだからね」
「…」
そうだったのか…
だからこんなに僕の口に合うのか…
じっくり味わいながら…僕はカイトに訊いた。
「明日の交流相手は、どんな感じなんですか?」
「ああ…ここと同じ、攻撃や守備力の交換をする」
「…」
「それは、工房で作る武器に大いに役立つ」
「…そうなんですね」
そして僕は、核心に触れた。
「で…邪魔が入るっていうのは…どういう意味なんですか?」
「そういった類の交流を、良く思わない連中が、それを嗅ぎ付けて阻止しようとしてくるんだ」
「…」
「交流が成功すれば、どちらのステーションもパワーアップしてしまうからね」
「…」
「まあ、それを追い払うってのが、俺ら戦闘部隊の役割だな」
「…」
それって…
とても不安な表情になった僕を見て、カイトは続けた。
「大丈夫、あれだけパワーが戻ったんだから、以前には至らないまでも、十分戦える」
「…」
いや…パワーの問題よりも…
心の準備の問題な気がしますー
「今日のうちに、しっかり訓練してやる」
「…はい」
僕は、そう答えるしか無かった。
カップを片付けて…僕らは支度をした。
扉の前に立って、カイトは、そっと僕の肩に手を置いた。
「大丈夫…いっぱい注入しといたから、もっとパワーアップしてるハズだ」
「…っ」
かあーっと赤くなった僕に、彼はふふっと笑って軽く口付けてから、扉のボタンに手を翳した。
そして僕らは、体育館に向かった。
メンバーが集まると、カイトは皆の前に立った。
「皆も知っての通り…明日の交流は、油断ならない。以前のように、我々を攻撃してくる輩がいる事を想定しておかなければならない」
「…」
そこに集まる誰もが、真剣な表情になった。
「いつ総力戦になっても良いように、心の準備をして、今日の訓練に臨んで欲しい」
「了解です」
「わかりました!」
皆が口々に応えた。
そして僕は、カイトとレオとジョシュアと一緒に、それまで立ち入った事のない場所へと連れて行かれた。
そこは、何もない広い部屋だった。
例えるなら…打ちっ放しの、天井の高い、ダンススタジオのような?
ガラーンとした、四角いスペースの…一角に、透明なケースがあり、その中に武器のような物が、並べて置いてあった。
レオとジョシュアが、そこへ行って…それぞれ、自分の物と思われるものを手に取っていた。
カイトも、僕をそこへ連れていった。
「これを…使ってみろ」
カイトは、その中から…ソードタイプの武器を選んで取り出すと、僕にそれを手渡した。
「…」
銀色の…まるでロールプレイングゲームに出てくるようなそれは、見た目より全然軽かった。
「どうやって使うんですか、これ?」
「手と同じだ」
「…」
「手にコアを集める感覚と同じだ…やってみろ」
「…」
僕は、目の中のコアを、いつものように右手に移した。
その手に移ったコアの光は、そのままソードに広がっていった。
「おおおーっ」
カイトが、シュッと手を上げると、その部屋が急に暗くなった。
そこはまるで…
無限に広がる宇宙空間のように見えた。
ほどなく、少し離れた場所に、動く的が現れた。
「この尖を的に向けて、いつもの感じで放てばいい」
「…」
僕は、言われた通りに…その尖を的に向けた。
しかし、動く的に狙いを絞るのが、難しかった。
「狙いが…定まらない…」
「集中して…」
「…」
「集中すれば、見えてくる」
「…」
カイトに言われて僕は、
また…頭にメロディーを思い浮かべた。
…と、僕の目の前に…ソードの尖から、動く的を結ぶ、細い導線のようなものが浮かび上がった。
「…見えて…きました…」
「よし、今だ!」
カイトに言われて、僕は思い切り…その導線目掛けて、コアを発射させた。
プシューーーッ
すごい音をさせて、僕のコアパワーは、ソードの尖から的へ向かってすっ飛んだ。
ドカーンッ!!
的が、粉々に破壊された…
「……っ」
「すげー、さすがリューイ!」
ジョシュアが叫んだ。
な、なんなんだ…
この、めっちゃすごいパワーは…
「それが、武器の力だ…俺らのパワーを、更に増幅させてくれる」
「…」
僕は、右手に持ったソードを、まじまじと見た。
「それ…リューイが愛用していたヤツだよ」
ジョシュアがポソッと言った。
「…」
そのソードは、再びの持ち主との遭遇を喜んでいるかのように、いつまでも光り輝いていた。




