⁑注入
「明日見に行くからねー」
そう言って手を振るエルンと別れて、僕らはエレベーターに乗った。
また、若干千鳥足の酔っ払いカイトは、エレベーターに乗った途端に、僕の手を握った。
「もうー毎晩毎晩、飲み過ぎですよー」
「大丈夫大丈夫…」
また、全然大丈夫じゃないやつ…
部屋の階で下りて、僕らは長い廊下を、しっかり手を繋いで歩いた。
カイトの部屋の前に着いた。
「えーと…じゃあ…おやすみなさい…」
そう言う僕の手を…カイトはぎゅっと握ったまま、全く離そうとはしなかった。
「あ、あの…カイト…?」
「…」
彼は無言で、自分の部屋のボタンに手を翳して扉を開けると、僕の手を引いて、中に入った。
「…」
シューッと扉が閉まってしまった…
そしてまた、彼は…僕をギューっと抱きしめた。
「…カイ…ト…」
「ここで寝てったらいい…」
「…」
「美味いコーヒー淹れてやるから」
「…」
僕はちょっとだけ、あの美味しいコーヒーに釣られてしまった。
カイトは腕を緩めると、僕の手を取って…ベッドルームに向かった。
そしてワサワサと、自分の制服を脱ぎ捨てると、ベッドに腰掛けた。
仕方なく…僕も脱いで、彼の隣に座った。
「お前の歌…すごく良かった…」
カイトは、ポーッとした表情で、天井を見上げながら、呟くように言った。
「…ありがとうございます…」
「不思議だよな…お前は、リューイなのに…リューイじゃない…」
「…」
「ま、俺のリューイだって事に変わりはないんだけどな…」
「…」
途端にカイトは、僕の身体をバッと抱きしめると、そのままベッドに押し倒した。
「…っ!」
組み敷かれた僕は、カイトの目を見上げた。
とても愛おしそうな目をしていた。
僕は…やっぱり少しだけ、心苦しかった。
だって…僕の知らない本物のリューイが、偽物がカイトとこんな風にしてるのを見たら、きっと悲しむに違いない。
僕は、小さい声で言った。
「本物に…怒られるんじゃないですか?」
「何で?」
「本物のリューイは…カイトの事を、物凄く好きなんです…」
「…」
「本物の記憶は、全く無いんですけど…それだけはハッキリ分かります」
「…」
「だって…そうでなかったら、こんなにカイトが入って来るハズがない…」
それを聞いて、
カイトは…ふふっと笑いながら言った。
「で、自分を偽物だと思ってるお前は…どうなの?」
「…」
「俺の事…好き?」
「…」
僕は、しばらく黙ってしまった。
僕の身体の中に、怨念のように…カイトへの想いが渦巻いていた。この身体の持ち主は、嫌でも誰もがカイトを好きになるように、仕向けられているかのように…
この身体は、カイトを求めて止まなかった。
「…好き…です…」
僕は、とても小さい声で…言った。
それを聞いて、カイトはまた穏やかに微笑んだ。
「俺の…リューイ…」
言いながら彼は、僕に口付けてきた。
「…んっ…」
僕の中のコアが…またユラユラと光った。
またすぐに、くちびるからカイトが…僕の身体の中に流れ込んできた。
「んんっ…んっ…」
昨日よりも、それは…強く激しく僕の身体中を駆け巡っていった。身体中をグルグルと掻き回され、コアは一層輝きを増した。
その心地良さに…僕の身体は、ビクビクと震えてしまった。
カイトが、ゆっくり口を離した。
「…カイトが…いっぱい入ってきた…」
僕は、息を上げながら…言った。
「うん…」
彼は、微笑みながら言った。
「俺ん中にも…お前がいっぱい入ってきた」
「…」
「…もっと欲しい」
言いながら彼は、僕の顔から…首すじから…上半身を撫で回していった。
「…っ」
「もっと注入してもいい?前みたいに…」
えっ…
「お前の記憶が無くなってから…ずっと我慢してたからね…」
え、ええーっと…
えっ…?!
まだ心の準備がー
と、思う暇もないくらいに、カイトはまるで自然な感じに、僕の服を脱がせながら、心地良く僕の身体を弄り…そして何度も何度も…僕に口付けた。
「んんんっ…」
僕の中のコアは、それまで見た事もないくらいに煌めきを増した。僕の身体中をカイトが蠢き…それは、僕の身体を更に心地よく波立てていった。
そしてついに…
カイトが…僕の中に入ってきた。
「あっ…あ…カイト…止めっ…」
反射的に抵抗するも…僕の身体は、驚くほどすんなり、彼を受け入れた。
「…んんっ…あっ…!」
その瞬間…カイトのコアと僕のコアが…合体して、ひとつの大きな光の玉になった。それはまるで、太陽のように、眩しく輝いた。
「…何…これ…」
その眩し過ぎる光に飲まれながら…僕は何とも言えない快感に包まれた。僕の身体中を、より一層激しく渦巻き、駆け巡るカイトに…僕は一気に突き上げられた。
「…はぁっ…あ…」
次の瞬間…一気に、身体中の力が抜けていった…
2人のコアは…まるで水彩絵の具のように…もう、どこまでが僕のコアで、どこからがカイトのコアなのか…分からないくらいに、混ざり合っていた。
「…リューイ…愛してる…」
吐息混じりのカイトの囁きが耳に入った。
その…奇妙で心地良い感覚に酔いながら…
僕はそのまま、眠ってしまった。




