⁑ もしこれが転生だとしたら…(2)
「えーと…あなたの事は、何て呼んだらいいんでしょうか…」
翌日…なのか、どうなのかもハッキリしないが…
とにかくもう一度寝て、起きたときには、僕は上半身を起こせるようになっていた。
ベッドに座ったまま…僕はその白い服の人物に話しかけた。
「俺はエルン…この医療センターの、一応リーダーをやってる」
「エルン…さん」
「呼び捨てでいいよ…何か、変な感じだな…改めてお前にそんな事言うの…」
「じゃあ…エルン…本当に悪いんだけど、この世界の事を、詳しく教えて貰えませんか…?」
何度寝ても、全く夢から醒める気配はない。
いやむしろ、この現実感…どう考えても現実としか思えない。
もし本当に、僕がこのリューイって人物に転生してしまったのだとしたら…
僕は…ここで生きていかなければならない。例えこの、リューイって人になり切れないとしても…
「えーっと…どこから説明したらいいのかなー」
戸惑うエルンに、僕はまず、そもそもを訊いた。
「ここは…地球ですか?」
「地球?」
「地球…っていう星を、知らないですか?」
「…星って…あの、割と可愛い模様の事だよね…」
「…」
「キラキラした感じの…」
ああー
もうそこからして認識が全然違うのかー
「星は…本当は丸いんですよ?」
「えー?丸じゃないでしょ…」
「じゃあ、地球とか、太陽とか月とか…ここには存在しないんですか?」
「太陽は知ってる…太陽を持ってるステーションもいっぱいあるよ…ここには無いけど」
「…」
うーん…ワケがわからん…
まあでも、とりあえず地球ではない事は分かった。
「ステーションって…どういう意味ですか?」
「ここが、我々のステーション。他にも沢山のステーションがあるんだ」
「…」
僕はポカーンとしてしまった。
「ちょっと待ってて」
彼はいったんその部屋を出ていった。
しばらくして、彼は1冊の厚い本を持ってもどってきた。
「これ…結構古い本だから…今の状況はだいぶ変わってるけど…まあ俺たちが、歴史を学ぶときに使う資料だな」
「…」
「昔、幾つかのステーションの人たちが協力して、この本を書いたらしい…今ではもっと進歩して、一応、各ステーションの状況が、どこでも探知できるようになってるけどね」
それは、ステーション一覧とでもいうのだろうか…
分厚い本の、まさに1頁1頁に、ひとつひとつのステーションの、特徴や文化が記されていた。
「…」
僕はそれを、パラパラとめくっていった。
こんなに…?
こんなにいっぱいあるのか?
要はステーションってのは…地球で言うところの、国みたいなもんなのかな…
それは、その場で理解しようと思うには分厚過ぎた。
僕はそれをバタンと閉じると、ふうーっと溜息をついた。
「ありがとうエルン…これ、借りてていいかな…後でゆっくり読む…」
「もちろん」
こーれは相当に難しそうだ…
小学校とか、あるのかな?
いっそ、そこに通って1から勉強した方が、手っ取り早いかもしらんなー
「とりあえず…もうひとつだけ、教えてください」
「うん…」
「リューイって…どんな人だったんですか?」
「…リューイにリューイの事を教えるって、変な感じだけどな…」
「…お願いします」
エルンは、少し遠い目をして…語った。
「リューイは、このステーションの戦闘部隊のメンバーの中でも、特に天才的な能力の持ち主だった」
「…」
「以前の闘いは、ほぼリューイの独り勝ちだった。どんな相手に攻められても、リューイとカイトの2人で難なく片付いていた」
「…」
そんなに強いヤツなのかー
「だけど…こないだは様子が違ったんだ。相手のステーションは、驚くほどに進歩した武器と、周到な戦術を使ってきた」
波動砲とかかな…
「2人の力が、全てはじかれた。致し方なく、リューイは守りに回るしか無かった…リューイは全力で、このステーション全体を、自分の力で覆い、カイトと他の戦闘員が力を合わせて全力で攻撃した」
超人なんとかみたいだなー
「それでも、至らなかった…相手は、攻撃のリードを取っていたカイトを集中的に攻撃してきた。そこへリューイが…カイトを庇いつつ、このステーションを別の場所に、空間移動させたんだ」
何とかえもんの道具を使ったのか…
「それが、残念ながら…一瞬遅かったんだな…移動する直前に、お前はその攻撃を、一身にマトモに喰らってしまったワケだ」
「…」
「まあ、要は…お前のおかげで、このステーションは、何とか逃げ果せたって事。そんだけの能力を持ってる人って事よ」
「…」
あり得ない…
そんなのひとっつも分かんない…
起き上がるだけでもやっとなのに…
そんなスーパースペシャルな能力なんて、全然分かんない…
「…すいません」
僕はまた、思わず謝ってしまった。
「いやまあ、ゆっくり時間をかけて思い出したらいいんだから…」
エルンが、励ますように続けた。
これっぽっちも、思い出せる気がしません…
さしあたり…今の感覚では…