⁑初心者教習卒業(3)
「どーよ、カイト!」
ルイスが、鼻高々に、彼に言った。
「…お前が…やったのか??」
カイトは僕に向かって訊いた。
「…みたい…です…」
「…」
「すごいでしょ!ここまで出来れば、もう一人前よ」
「…」
「もう、元のリューイに戻るのも時間の問題よ」
「…」
僕の表情が強張ったのを見て、ルイスは慌てて言い直した。
「あ、ごめんね…記憶は、まだ無いんだもんね」
「…すいません」
「ううん…むしろ新生リューイは、更なる可能性を秘めてるように見えるわ」
そう言って彼は、僕の頭に手を置いた。
「ルイス…ありがとう」
カイトが言った。
「私じゃないわ、リューイが頑張ったのよ」
もちろん…まだまだ自覚も自信も無かったが、僕はルイスに向かって頭を下げた。
「ルイスさんのご指導のおかげです。本当にありがとうございました」
「いいえーちょっとでもお役に立てて嬉しいわ」
彼は、両手で僕の手を握った。
「いつでも遊びに来てね」
「…はい」
僕は、そのまま…ルイスに抱きついた。
彼は僕の背中を、ポンポンと叩いた。
「じゃあ、行くぞ」
「…はい」
ゆっくりルイスから離れて…最後にもう1度頭を下げてから、僕はカイトと一緒にその部屋を出た。
「…覚えて無いんだろ?」
廊下を歩きながら…カイトが、呟くように言った。
「えっ?」
僕は聞き返した。
「お前が…よくふざけて、訓練中の俺を、自分の側に勝手に連れて来たこと…」
「…」
えっ…リューイさんって、そんなお茶目なイタズラしてたんですか…???
「ふふふっ…」
カイトは、笑いながら…僕の肩を抱いた。
「それにしてもすごい進歩だな…まさか、こんな早くにここまで回復するとは思わなかった」
「…全然自信ないですけど…」
「よーし、ビシビシ鍛えてやるから、覚悟してしとけ」
「えええー」
僕らは笑い合いながら、体育館に向かった。
いや、たぶんやっぱり…体育館って名前じゃないと思うけどね…
「カイトー」
レオが駆け寄ってきた。
「あ、リューイも来たんだ、」
僕はペコっと頭を下げた。
「急に消えたからビックリしたよーどこ行ってたの?」
「ああ…リューイに連れてかれた」
「えっ…本当?」
レオは、目を丸くして…嬉しそうに続けた。
「記憶戻ったの?」
「あはは…やっぱそう思うよな…」
「…っ」
「残念ながら記憶はまだらしいけど、連れてく事は出来るようになったらしい」
「ホントに!?…すごいじゃない!」
「今日から、もうこっちに進級だ」
「よかったねーあんなに全然だったのに、やっぱリューイなんだなー」
そして僕は、またいつもの…的のあるコースに連れていかれた。
「今日はとりあえず、ここで当てる訓練だな…」
「…はい」
僕は、そこに立った。
目の中のコアは、十分に光り輝いていた。
難なく右手にコアの光を浮かび出させる事が出来た。
そして僕は、それを的に向かって投げた。
シューーッ ドカンッ!
それは的に向かって真っ直ぐに飛び、勢いよく的を破壊した。
「…うん、だいぶ安定したな」
カイトは、次々と的を出した。
ときには遠くに…ときには巨大なのを…
ときには幾つも幾つも連続して…
これはちょっと難しいな…
そう思うとき、僕は頭の中にメロディーを思い浮かべた。
そうする事によって、僕のコアは更に光り輝き、よりパワーを増した。
僕は、次々と…出された的を破壊していった。
その様子を見て…他の隊員が集まってきた。
「リューイすごいじゃん」
「記憶戻ったの?」
ドカン、ドカンドカン…ドカンッ…
皆が見守る前で、僕は幾つも連続して現れる的を…一瞬のうちに叩き壊していった。
「ふぅー」
パチパチパチパチ…
拍手が起こった。
「これくらいにしとくか…」
カイトがそう言って、僕に近寄ってきた。
「すごいよリューイ!」
「流石だよなー」
「もうすっかり元通りじゃん」
皆が口々に言った。
「そうなんですか?」
僕は、若干ポカーンとした顔でカイトを見た。
「うん…俺もまさか、ここまで回復してるとは思って無かった」
「…」
僕は、カイトに褒められた事が、とても嬉しかった。
「今日はこれで終わりにしよう…」
あちこちに散らばっていた隊員たちが、いったんカイトの周りに集合した。
「お疲れ様…とりあえず改めて報告しとく。リューイが、明日からまたこっちの訓練に復帰する事になった」
「よかったねー」
「またよろしくね」
皆、温かい言葉で迎えてくれた。
「パワーはだいぶ回復しているが、記憶の方は相変わらずなので、皆協力してやって欲しい」
僕は、カイトの隣で…皆に向かって頭を下げた。
パチパチパチパチ…
またも温かい拍手が起こった。
僕は本当に嬉しかった。
と、同時に僕の胸に…
とてつもない不安がよぎった。
協力して…訓練して…強くなって…
それからどうするんだろう…?
その先に、待ち受けているかもしれない実戦ってものが…そのときの僕には、全く想像出来なかった。




