⁑タウン再び(1)
その後もエルンは、アレコレと、地球の事を僕に質問してきた。
僕は、それに答えて、知っている限りの事を語った。
「色々とありがとう、リューイ…本当に、とても興味深い話だったよ…」
「何かの参考に…なれば良いですけど…」
「もう少し調べてみようと思う…」
「…そうですか…」
僕は立ち上がった。
エルンは、ふと思い立ったように言った。
「食事はどうしてるんだ?…よかったら、久しぶりに、タウンに行かないか?」
「あ…あの、ヴィンセントさんの店ですか?」
僕は、パッと目を輝かせた。
「ああ…それでもいいし…」
「行きたいです!」
ここの所…ストアで買った(いや…買ったって訳ではないが…)インスタントっぽい食事ばっかりだったからなー
かと言って、1人で食べに行く勇気は無かったし…
「よし、行こう…」
そして僕らは、医療センターを出て、エレベーターに向かって歩いた。
歩きながら、僕は…カイトに訊いた。
「カイトは、いつも食事はどうしてるんですか?」
「ああ…大概はタウンで済ませてる…」
「そうなんだ…」
何だー
だったら今度から、カイトに一緒に行ってもらおう…
タウンの階でエレベーターを降り、僕らはこないだのヴィンセントの店に向かった。
いや…店と呼んでいいのかどうかも、まだよく分からないけど…
「やあ…空いてる?」
「あ、エルンさん、お疲れ様ですー」
ヴィンセントが、カウンターから声をかけた。
「カイトさん…リューイさんも…お久しぶりです!」
「調子はどう?」
「はい、おかげ様で…忙しくさせてもらってます」
まだ誰も居ない店の…カウンターに、僕らは並んで座った。
「お揃いですし…何か飲みますか?」
「うーん…そうだな…エールを貰おうかな…」
エルンがしれっと言った。
ええっ!?
「うん…俺も」
「リューイさんも飲みます?」
「…あ、はい…」
エールって言った?
エールって…
そしてほどなく僕らの前に出されたのは…
まさに、エールだった…
エルンとカイトが…すぐに美味そうに…
それをゴクゴクと飲んだ。
僕もひと口飲んでみた…
それはまさに、エールだった!!
久しぶりのアルコールだー
転生する前の、あの…LIVEの打上げ以来だ…
「今日は色々と、実りの多い日だったよ…リューイの話も聞けたし…それに何より、リューイの進化を実際に見れたからねー」
まだグラスの半分も飲んでいないのに…既にエルンは、テンションが上がってしまった感じだった。
「リューイさん、調子はどうなんですか?」
ヴィンセントが僕に訊いてきた。
「…うーん、まあ…前にここに来たときよりは、だいぶマシになりました…」
「そうなんですね、それは頼もしいです…」
言いながら彼は、僕らの前に…小皿を出した。
「…」
それは、僕の知ってる呼び方で言うなら…トマトとパプリカとオクラときゅうりが、ピクルス風に漬かっている物だった。
「お、美味そうだな…」
「昨日の交流の、太陽エネルギーのおかげで、良い野菜が出来てました」
あーなるほど、それで夏野菜が採れたのか…
「いただきます…」
僕は早速、それを食べてみた。
まさに爽やかな、夏の旬の味だった。
「美味しい…」
「これもどうぞ…」
「…!!」
続いて彼が出してくれたのは…まさかの枝豆だった!
確かに、枝豆も夏が旬だよなー
僕は早速食べてみた。
懐かしい…地球で食べた物と同じ味だった。
エールをおかわりして、すっかりテンションが上がって、口数が増えたエルンとカイトは、何やらずっと…熱く語り合っていた。
そんな雰囲気も懐かしくて…僕もエールをおかわりして、心地良く…彼らの熱い語りを聞き流していた。
「はい、どうぞー」
しばらくして、ヴィンセントが…また料理を出してくれた。
「…これは…」
グツグツと湯気の上がったそれは…
グラタン皿に…ホワイトソースが絡まったナスとズッキーニと肉がならんでいて…その上にチーズをかけて焼いた物だった。
これまた…僕の大好きな感じのやつじゃんー
「いただきます…」
熱々のそれを、僕は…ふーふーしながら食べた。
「…すごく美味しいです!!」
「リューイさん、ホントに味覚は全然変わってないんですねー」
ヴィンセントは、嬉しそうに言いながら、もうひと皿を僕の前に出した。
そこには、イングリッシュマフィンが乗っていた!
「…!」
僕はまた、目をキラキラと輝かせた。
「これもありますよ…」
「!!!」
ヴィンセントが、カウンターの下から、スパークリングワインらしき瓶を取り出した。
彼は続いて、細いシャンパングラスを出してくると、そよスパークリングの栓を開けた。
「今、魚も揚げますからね…」
何という、至れり尽せりなんだろう…
この人は、本当に僕の好みを知ってくれてる…
っていうか、この世界に…こんなに、アルコールの品種が充実してるとは…!
「…」
僕はスパークリングを飲みながら、夏野菜グラタンとイングリッシュマフィンの組み合わせに、舌鼓を打った。
「〜なんだよなー」
「あー分かるわー、な、ヴィンセント!お前もそう思うだろ?」
「あーはいはい、そうですねー」
「…」
そして、僕の隣でいつもより大声で喋り合い、店員に絡んでいるこの2人が、こんなにオッサン臭い酔っ払いになろうとは…




