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⁑ もしこれが転生だとしたら…(1)

「もうしばらく、そっとしておいて様子を見よう…」

白い服の人物は、そう言って、もうひとりの肩をポンポンと叩いて、部屋を出ていった。


もうひとりの…カイトと呼ばれた人物が、僕の顔に自分の顔を近付けた。


「リューイ…本当に、俺が分からないのか?」

「…」


僕は、すまなそうな表情で…再び小さく頷いた。


「…はあ…」

彼は、深く大きな溜息をつくと…

静かに振り返って、部屋を出て行った。



リューイって言うんだろうな…この身体…

僕は本当に、転生してしまったんだろうか…


僕は、あのときの事を思い出していた。

そして、ヒロが語った物語の事や、僕が、恐らくトラックにハネられる直前に、ヒロがあの世界に戻ってきていた事も思い出した。


ヒロは生きたまま転移したんだ…

だから戻って来れたんだよなー


僕はどうなんだろう…

あの高さまですっ飛ばされたって事は…

どちらかというと、生きてる確率の方が低いよなー


もし…死んじゃってたら…

もう戻れないのかな…



「…」


いやでも、これが夢って可能性もあるよな…

もっかい寝たら、ちゃんと戻ってるかもしれない。


僕は必死に目を閉じた。


寝よう…


身体の重さと怠さは相変わらずだった。

弱った身体で、短い時間に、あまりにも考える事が多過ぎたこともあり…僕はほどなく、再び深い眠りに落ちてしまった。




次に僕が目が覚めたときには…

口の酸素吸入器らしき物が取り外されていた。


「…うーん…」


「おはよう、リューイ」

「…」


例の白い服の人物が、僕の腕に、また何かの機械を巻いていた。


「気分はどう?」

「…」


全然醒めなかったなー

まだリューイなのか…


「だいぶ回復してきたよ、流石だな…」

「…」


僕は手を動かしてみた。

こないだは、全く上げられる気がしなかった両手を、何とか持ち上げる事ができた。


僕は自分の手を見た。


「…」


それは…見慣れた僕の手では…無かった。

たぶんそれは…リューイの手…だった。


「…ここは…何処ですか?」

僕は、声を振り絞って言った。


それさえも…聞き慣れた筈の、僕の声では無かった。

言いながら、それに気付いた僕は、愕然とした。


「医療センターだよ」

「…」


ああ…もう、そのレベルじゃないんだよ…僕が訊きたいのは!


心の中でそう叫びながらも…

僕は果てしない気持ちで途方に暮れてしまった。


「もう少ししたら起きれるようになるよ…」

言いながら彼は、僕の腕に、点滴らしい注射を刺した。


起きれるようになった所で、僕には何にも分かんないからなー


「すいません…」

僕は反射的に謝ってしまった。


「え、何が?」

「僕には…何も分かりません…」


「…」

彼はとても真剣な眼差しで僕を見た。


「本当に…何も覚えてないの?」

「…はい」


僕は小さい声で…でもキッパリと答えた。


「僕の名前は…氷威です…たぶん」

「…は?」


彼は、目を白黒させた。


「…たぶん…リューイっていう人の身体に…たまたま僕が入っちゃったんだと…思います」

僕は正直に…言った。


「…相当、混乱してるな…」

彼は、独り言のように呟いた。


「…信じて…貰えないですよね…」

「…」


コンコン…

ガチャッ…


そこへ、昨日のもうひとり…カイトと呼ばれた人物と、更に知らない人物が入ってきた。


「リューイ起きた?」

「…起きてるけど…やっぱりだいぶ混乱してるし、何も覚えて無いらしい」

「…そうか…」


「…」

カイトに連れられて来た、もうひとりの人物は…ゆっくりとした足取りで、僕のベッドに近寄ってきた。


「大変だったな…リューイ…気が付いてよかった」

「…」


「残念ながら…自分がリューイだって事も、覚えて無いみたいなんですよ…」

「…本当に?」

「カイトの事すら分かんないって言うんですから」

「…」


「…すいません…」

僕は、思わず自分から謝ってしまった。


「本当に…何にも分かりません…」



だいたい…言葉が通じる事さえ奇跡だよな…

まあ、そういう所は都合良く出来てるのかもしれないけど…


「力の使い方も、覚えてないのか?」

「恐らく…まあ、治癒能力は、無意識に発動してるみたいですけどね、この回復の早さから見ると」


「無くなったワケでは無いんだな…」

「たぶん…数値的には問題ないです」

「そうか…」


「そんな事はどうでもいい…問題なのは、リューイの記憶の方だ」

カイトが怒ったような口調で言った。



「ウィルフリードの立場だったら、そう考えるのは仕方ないよ…俺らがリューイの力に頼っていたのは事実なんだから」

「…」


「…リューイ…すまなかった…ゆっくりでいい、回復を祈っているよ」


ウィルフリードと呼ばれた人物は、そう言い残して、サッと振り返ると、スタスタとその部屋を出て行った。


「くそっ…大体あいつがもっと入念な作戦を講じていれば、こんな事には…」

「カイト、それは致し方ない。こないだの奴等の強さは、全くもって何もかも想定外だったんだから」


彼はまた、僕の方を見て続けた。


「それでもリューイ…お前のおかげで、このステーションは何とか持ち堪える事ができたんだ」



はえー…

そうなんですねー


リューイさんって、割と重要人物だったんですねー


ひとっつも…分かりませんが…




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