⁑職人再び(1)
僕はカイトに連れられて、再びWorkshop階を訪れた。
改めて、そこに並ぶ武器工房を見ると…なるほど、コアのパワーを利用して、それを如何に強い攻撃に繋げるかっていう、そこを探求している感じがよく分かった。
昨日リカルドも言ってたっけ…
この界隈で武器を作っている人達と、僕ら戦闘部隊の肩に、ステーションの未来がかかってる的な事を…
そして僕らは、例の…キーファーの工房に来た。
「キーファー、調子はどう?」
カイトが、奥にいる彼に声をかけた。
「カイトじゃないか…久しぶりだな…」
そして彼は、カイトの背後から恐る恐る顔を出した僕に向かって言った。
「何だよ、偽物も一緒か…」
「…」
あーやっぱこの人…僕の事嫌ってるー
渋々な感じで、キーファーは、僕の事も奥の部屋に招き入れた。
そして彼は、僕らを椅子に座らせると…湯気の立った、茶色い紅茶のような物を出してくれた。
良い香りだった。
「そんで、今度は俺に、何を作らせたいんだ?」
「話が早いな…」
「悪いが、俺は武器は作らないぞ…ましてや偽物の為になんかはね…」
「…」
「武器じゃない…ただ、偽物に頼まれて作って欲しいってのは、当たってるな」
カイトは僕の方を見た。
「あの…キーファーさん…先日は本当にすいませんでした…」
「…」
「で、実は…キーファーさんに、楽器を作って頂きたいんです」
「はあ?」
「…楽器…って、分かります?」
「がっき…?何だそれ…」
「音を奏でる道具です」
「そんなの、ココじゃなくて、ファクトリーの方へ行ったらいいだろ」
「そういう報知の為の音じゃないんだ…ちょっと俺たちの概念には無い感じの音なんだ…」
カイトが後援してくれた。
「…」
キーファーは、何だかよく分からないような表情をしていた。
「あの…こないだのグラス、あるじゃないですか」
「ああ、リューイの?」
あーあくまで偽物扱いだなー
ま、本当にそうなんだけどね…
「あれを鳴らすような音で、色んな音が出せる道具を、作って欲しいんです…」
「…」
「まあ、口で言っても分かんないだろ?これからちょっと、リューイの部屋に来てもらえないか?」
カイトが言った。
「お願いします…実物を見て頂けたら、イメージが湧くと思います…」
「…」
それでもキーファーは、渋い顔をしていた。
「頼むよキーファー、この通りだ」
カイトは彼に向かって頭を下げた。
「それに…」
彼は続けた。
「もし、上手くいったら…このステーションの未来が開けるかもしれない…」
「…えっ?」
こないだもチラッと、
そんなような事を言ってたような…
何を企んでるのか、よく分かんないけど…
「…分かったよ、カイトがそこまで言うんなら…」
キーファーは、重い腰を上げた。
「まー見せてもらった所で、出来るかどうかは分からんからねー」
「…ありがとうございます」
僕も立ち上がって、彼に向かって頭を下げた。
キーファーは、テーブルの上のカップを片付けた。
僕は、自分のカップの中身を飲み干すと、それを彼に渡した。
「ごちそうさまでした…とても美味しかった…これは、桜の香りですか?」
「…!」
キーファーの手が、ピクッと止まった。
「…何で分かる?!」
「…えっ」
「…」
彼はしばらく、とても怪訝そうな表情で僕を見た。
そして、フッと笑いながら、呟くように言った。
「…やっぱりお前は偽物だな…」
もうー何でよー
ま、本当にそうなんですけどーー
「とりあえず行ってみるとするか…」
ほんの少しだけ、機嫌が治った感じのキーファーと一緒に…僕らは、僕の部屋に戻ってきた。
キッチンのテーブルの上に並ぶグラスを見て、キーファーは目を丸くした。
「何なんだ…これ…」
「ちょっとチューニングしますから、待っててくださいね…」
「…」
僕はそのグラスをひとつひとつ鳴らしながら、中の水量を調ていった。
「同じのがいっぱい欲しいって言ってたのは、これだったのか…」
キーファーは、僕の様子を見ながら呟いた。
「って…何に使うんだ、これ…」
「まあ見ててやってよ…」
カイトが宥めるように言った。
何とかチューニングが終わった。
えーと…何から聞いてもらったらいいだろうか…
散々考えた末に、
僕は、さっきの桜の話を思い出した。
そして、日本の…桜の歌を演奏してみた。
最初はグラスでメロディーを鳴らして…途中からは、日本語で、歌詞をつけて歌ってみた。
「…!!」
キーファーは、とても驚いているように見えた。
続けて僕は、先日カイトにも聞かせたアメイジンググレイスを、弾き語り…いや、鳴らし語ってみせた。
曲が終わったとき…カイトはまた、何とも言えない穏やかな表情をしていた。
一方のキーファーは、ただただ…驚きを隠せないといった表情だった。
「何なんだ…これは…」
「…音楽です」
「…おんがく?」
「そして、それを奏でるのが…楽器なんです」
「…」
「この…今、たくさんのグラスで出しているそれぞれの音を…1つの楽器で出せる…そんな道具を作って頂きたいんです」
「…」
キーファーは黙っていた。
それでも、彼の目が、創作意欲に掻き立てられて…爛々と光り輝いている事は、僕にも分かった。




