⁑更なる進化
「昨日はお疲れ様だったわねー」
すっかり日課になった初心者教習の、いつもの部屋に向かいながら、ルイスが僕に言った。
「何にもしてませんけどね…」
「何か、思い出した事はある?」
「残念ながら、何にも…」
「ま、いいんじゃない?着実に新たなパワーが出てきてるから…」
少し下向き加減になった僕に向かって、ルイスは、慌ててとりなすように言った。
「じゃあ、今日も頑張ってみて…」
「…わかりました」
ルイスが出ていった真っ暗な部屋で…
僕はまた、床に座って座禅を組んだ。
そして、スッカリ居座っている、目の中のコアに…集中していった。
昨日、散々再現した、あの同じメロディーが…また、どこからともなく、僕の頭の中に流れてきた。
やがて、目の中のコアが…眩しく光を放ち始めた。
流れるメロディーをBGMに…僕はその、美しい発光体の色が変化していく様子を、飽きる事なくいつまでも見入っていた。
ホントに…なーんて綺麗なんだろう…
メロディーに合わせて、放たれる光が…少しずつ僕に向かって飛んでくるような気がした。
そしてそれが…まだ僕の中に、小さく残っているカイトと反応して、身体の芯がゾクゾクとする感覚を湧き立たせていった。
何なんだろう…
この、何ともいえない感覚は…
心地良い瞑想に浸りながら…
僕は…その光のカケラとゾクゾクのせいで、どんどん身体が熱くなっていく気がしていた。
(リューイなんだけど…リューイじゃない…)
そんな僕の様子を見ながら…
ルイスはそんな風に思っていた。
(以前のリューイのオーラと…似てるけど違う…)
「投げてみる?」
「…はい」
僕はそっと目を開けて…目の前に光り輝くコアを、右手に移動させた。
それは、確実に…昨日よりも大きく、昨日よりも明るく輝いていた。
ルイスがまた、シュッと指を差して…少し離れた場所に、的を出現させた。
いや、その…シュッと的を出現させるっていう能力も凄いと思うんだけどね。
僕は…右手に耀く光の玉に、全神経を集中させた。
そして、その的に向かって、それを…投げるというか、飛ばしてみた。
「…はっ!」
それは、思いの外、真っ直ぐに…的に向かって飛んで行った。
シューーーッ
バンッ!
それは、割と大きな音を立てて、その的を破壊した!
いやそれでも、
例の、カイトのパワーには及ばなかったが…
「…」
「すごーい!すごいすごい!」
ルイスは大声を上げた。
「…昨日の今日で、こんなにパワーアップするなんて、普通じゃあり得ないわよー」
「…」
「それ、もう1回出来る?」
「…やってみます…」
僕は、まだ少し目の前に光っているコアを、もう一度、右手に集中させてみた。
「うううーん…」
さっきの、十分に瞑想して、貯めに貯めたパワーのときは、楽に右手に移って行ったのだが…それをもう一度…と言われると、どうにも上手くいかなかった。
「そんなに力まないで、肩の力を抜いて…」
ルイスが言った。
僕は少しだけ目を閉じた。
そしてまた…あのメロディーを思い浮かべた。
(…♪)
と、目の前のコアが、ジワジワと輝きを増してきた。
やがてそれは、瞑想によって貯めたときと、同じくらいに光り輝き…僕は再び、それを右手に移す事に成功した。
「うんうん…出来たじゃない」
「…」
ルイスはまた、的を出した。
僕は、さっきと同じ要領で…その右手の玉を、的に向かって飛ばしてみた。
シューーーッ
バンッ!
「…飛んだ…」
「やったわねー、集中無しでも連続でコア攻撃が出来る様になったじゃない!」
「…」
「そうやって、いつでもコアのパワーを自分でコントロール出来る様になれば、もうココは卒業よ」
「…いつも…は、まだ無理だと思います…」
実際、2度目の玉を投げた時点で…目の前のコアは、目を開けた状態では、すっかり見えなくなってしまっていた。
「どっかいっちゃったみたいです…」
「あははは、それにしても、すごい進歩よ。コアが安定するのに、もう何日もかからないと思うわ」
「…」
リューイの身体はすごいな…
こんな僕が、例え微力でも、あんなカメ○メ波みたいのを出せるようになるなんて…
そして僕とルイスは、出口まで並んで歩いていった。
途中、彼が僕に訊いてきた。
「座って集中するってのも画期的だったけど、もしかして他にも何か…コアを感じるコツみたいなものがあるのかしら?」
僕は信じてもらえないのを承知で、ルイスに言った。
「実は、メロディーのおかげもあるんです」
「…メロディーって?」
「…それを、プレゼン出来るように、今日はこの後、カイトと一緒に工房に行って来ようと思います」
「…」
彼は、何が何だかサッパリ分からないといった表情をしていた。
「…あとは、やっぱりルイスさんが、上手に教えてくれるおかげですよね…」
「やだーリューイったら、そんなお世辞を言えるようになるなんて…記憶を無くしたのも、悪い事じゃ無かったのかもしれないわねー」
「…」
「カイトの…戦闘部隊の所に行くの?」
「あ…はい」
「そしたら試しに、そこでも投げてみたらいいわ」
「…いやあ…どうでしょうね、それは…」
「じゃあまた明日ね、カイトによろしく」
出口で僕を見送りながら…
ルイスは改まったように言った。
「身体はリューイに間違いないと思うけど…あんたはやっぱり、リューイとは違うような気がしてきたわ」




