⁑リサーチ班
エレベーターが、researchと書いてある階に着いた。
僕の記憶が間違っていなければ、確か医療センターも、この辺りの階だった気がする。
実際、エレベーターを降りた景色も、医療センターと似ていた。
ただ、あっちは白が基調の造りだったが、ここは灰色とブルーが混ざった感じの、若干冷たい印象だった。
廊下をしばらく進んで、とある扉の前で…カイトはその扉の横のボタンに手を翳した。
「はい、どうぞー」
どこから聞こえてるのか分からない…その声が響いたと思うと、すぐに扉が開いた。
「失礼するよ」
「わおー!カイトじゃん…いらっしゃいー」
中から、何だかチャラい感じの人物が出てきた。
「レオもジョシュアも久しぶりー」
そして彼は、最後に僕の顔を見ると、僕に駆け寄ってきた。
「リューイ!!大丈夫なのー!?」
「…」
「…あのな、リカルド…」
驚かれる→引く→カイト又はエルンが説明する…
っていう、すっかり毎度お馴染みになったやりとりが、また繰り広げられた。
「…そーなんだ、リューイ…じゃあ、僕の事も覚えてないの?」
「…すいません」
「あの…2人だけの熱いひとときの事も?」
「…っ」
「余計な事言うな!」
カイトが、そのリカルドと呼ばれた、チャラ男くんの頭を掴んで言った。
「あははは、ごめんごめんー」
僕は、それが真実なのか冗談なのかわからないまま…
苦笑いを浮かべて、その様子を見ていた。
「そんで、戦闘部隊の精鋭が、わざわざ揃っておいでになったって事は…例の件だよね?」
「ああ…」
リカルドは、その部屋の奥に僕らを連れていった。
壁面に、あのTVの画面が幾つも並んでいた。
それぞれに、それぞれのチャンネルの画像が流れていて…何というか、まさにテレビ局のモニターのようだった。
手前には、デスクトップPCのような機械が何台も置かれていて、その中のいくつかには、やっぱり宇宙船のような物が映っていたり、また円形のレーダー画像だったり…
とにかく、いかにも色んな情報をリサーチしていますーっていう雰囲気が醸し出されていた。
「ヤツらの動きは?」
「…そーね、今んとこは静かだけど…」
リカルドは、その中のデスクトップのひとつの前に座って、何やらカチカチと操作をした。
画面に、黒い宇宙船が映った。
(いや、宇宙船とは呼ばれてないと思うんだけどね)
黒い鋼鉄製な感じに黒光りするそれは、何とか総統率いる何とか彗星のように、恐しく冷たい印象だった。
「相変わらず、不気味だよなー」
「うん」
「どのくらい分析できてるんだ?」
「前回やられたときの段階くらいはねー」
リカルドは、カチカチ操作を続けながら言った。
「でも、その後また…進化しちゃってるかもしれないからなー」
チャラ男が真剣な表情になった。
「デベロッパーも頑張ってる。せめて前回のリューイのパワーを、ステーションレベルで再現出来るくらいのシステムを目指しているらしい」
…なんかまた難しい単語が出てきた…
「でも、何よりウチの最大の特性は、ワークショップの武器と、君ら戦闘部隊の攻撃力だからな…」
リカルドは、ふぅーっと息を吐いて、
椅子ごと、僕らの方を振り向いた。
「まあ…ウチの戦闘部隊の全員が、リューイ並みのパワーを出せれば、安泰なんだけどなー」
「…」
…またそんな、無茶な事を…
「もうちょっと現実的な対策案はないのか?」
「いや、それが一番よ…君らのパワーを、顕著に底上げするってのが、何より確実な対策よー」
「…」
カイトは黙ってしまった。
「ま、それが難しいから…皆、そうでない方法を探ってるんだけどね…」
「…分かった…とにかく、俺たちは個々のパワーを磨く事に専念しよう」
「うん…」
そしてリカルドは、僕に向かって言った。
「リューイの調子は、どうなの?」
「あーあの…シュルシュル〜ポンくらいは出せるようになりました…」
「えっ、ホントに?」
カイトが驚いて言った。
レオとジョシュアも目を丸くしていた。
「スゴい進歩じゃん…やっぱリューイなんだな」
まあリューイの身体ってのもあるんだろうけど…
こないだの…カイトのナニのおかげって気もしないでもないが…
あとアレだな…
今日、どっかから聞こえてきた、あのメロディー
「!!」
僕は、ふと思い立った。
「部屋に…戻ります!」
僕は急いでその部屋を出て行こうとした。
「あ、おい…1人で帰れんのか?」
カイトが呼び止めた。
「はい、大丈夫だと思います…エレベーターに辿り着ければ…」
そう言って僕は、そのまま部屋を出た。
そして、走ってエレベーターに向かった。
48階のボタンを押して…
エレベーターを降りた後も、光る扉のおかげで、迷わず自分の部屋に戻る事ができた。
そして僕は、キッチンに直行し…テーブルの上に置きっ放しの、例のグラスの…とりあえず水量を調節して、チューニングを合わせた。
えーと…
僕は、まだ頭の中に残っていた…あのメロディーを、必死に再現してみた。
うん…
確か、こんな感じだった。
僕は、何度も何度も…それを鳴らした。
それを、確実に自分が覚えてしまうまで…




