⁑ 交流の日(4)
恙無く平穏無事に、両方のステーションのコアが、十分にチャージされた。
ホセと呼ばれたおじさんは、ウィルフリードと硬く握手を交わしてから、例の滑走路的な所を歩いて、茶色い南米宇宙船へと戻って行った。
向こうの宇宙船の扉が閉まったのを確認して、またその滑走路が、ギィーッという音と共に仕舞われた。
専門チームの面々は、しばらく機械に向かって、それぞれが色々操作をしていた。
そうこうするうちに、またゴオーーっという音がして、南米宇宙船が、段々と離れていった。
その様子は、モニター画面を見ても分かったし、実際、肉眼で見えていた「外」も、茶色の船碧から黒い空間に変わっていった。
「…」
外を…もっと近くで見てみたいな…
そんな風に思っているうちに、カイトとジョシュアが戻ってきてしまった。
「ご苦労様…」
ウィルフリードが2人に声をかけた。
2人は、安堵の笑みを浮かべながら頷いた。
専門チームの作業が終わって、彼らが撤収するのを見届けてから、ようやく僕らはエレベーターに乗った。
いったん体育館(いや、絶対違う名前だと思う)に戻って、他の皆も持ち場から戻って来ると…
カイはまた、全員を整列させた。
そして、総リーダーからの総括を聞くわけだな…
「今日の交流も、皆のおかげで滞りなく終わった」
ホントに…何も出番が無くて、
心の底からよかったー
「皆も分かっていると思うが、またすぐ68時間後に、次の交流が迫っている」
あ、確かに…
もう1件、予告のカウントダウンが出てた気がする…
「また、さっきホセとも話したが…先日苦戦を強いられた相手が、また違うステーションを攻略した事が確認されている。奴等はまた、ウチを狙ってくるであろう事は間違いない」
…やっぱりそうなんだ…
「このステーションの明暗は、君たちの戦闘能力にかかっていると言っても過言ではない」
「…」
それを聞いて、そこにいる全員の緊張感が高まっていくのが…僕にも分かった。
「それぞれのコアパワーの強化と、戦略の向上に、全力で取り組んで欲しい」
「了解です」
「分かりました」
皆が口々に言った。
それを見てウィルフリードは、フッと微笑むと…スッと振り向いて、そこを出ていった。
「あーやっぱり、またアイツらが来るのかー」
「どうやったら攻略できるんだろうね…」
皆がザワザワと話し始めた。
「…それって、リューイが…いや、僕がやられちゃった相手ですか?」
僕はカイトに訊いた。
「…ああ」
彼は頷いた。
そしてカイトは、皆のザワザワを押し鎮めるように言った。
「聞いての通りだ。とにかく俺たちに出来る事をしよう。個々のパワーを上げる事はもちろんだが、相手の攻撃力が、どれ程のものなのか…もっと知っておかないと、戦略は立てられないな…」
「リサーチは、どこまで調べてるんだろう…」
「そうだな、どの程度まで分析できているのか…リサーチとデベロッパーに確認しておこう」
…また何か、知らない単語が出てきたー
「俺はこれから、リサーチに行ってくる、レオとジョシュアも来てくれるか?」
「分かった」
「じゃあ他の皆は、とりあえず今日は解散だな」
「お疲れ様でしたー」
そして皆は、それぞれに散っていった。
部屋に戻る者…残って訓練を続ける者…
そんな中、カイトとレオとジョシュアの3人は、並んで廊下へ出ていこうとした。
「あ、あの…」
僕は思わず、彼らに声をかけた。
「僕も一緒についていっても良いですか?」
「…構わないが?」
「そーだね、何か思い出すキッカケになるかもしれないしね」
「だいたい…リューイが完全復活してくれたらなー、それだけで安心なんだけどなー」
「…っ」
うっかり言ってしまったジョシュアを、2人は黙って睨み付けた。
ハッとしたように、彼は肩をすくめて言った。
「…ごめん…」
「…いいえ…僕の方こそ、すいません…」
何となく気まずい空気になってしまった。
僕は、とりなすようにジョシュアに言った。
「…よかったら…もっとリューイの事…いや、僕の事を、もっと教えてもらえませんか?」
ジョシュアは、何ともいえない複雑な表情になった。
「リューイに、リューイの事をって…何か変な感じなんだけど…」
「ホントにすいません…でも自分では何にも思い出せないんです」
それを聞いていた、前を歩くカイトの胸の痛みが…また僕に伝わってきた。
「リューイは、とにかく半端ない能力の持ち主だった…恐らくは、戦闘部隊の他の全員でかかっても敵わないくらいね」
「…そんなに?カイトよりも強かったんですか?」
「うん…カイトも相当だよ、もちろん僕らなんか太刀打ちできない。それよりもリューイは飛び抜けて強かった」
「…」
そんなにだったのか…
だからこそ、こんな僕が乗り移ってしまっても、コアパワーが残ってるんだなー
「…僕にリューイの力が、戻りさえすれば、このステーションは安泰なんですか?」
「…分かんないけどね、それでもこないだは、リューイが自分1人の力で、このステーションごと動かしちゃったんだから…そんな事出来るのはリューイしかいないもの…」
「…」
ホントに超人何とか並みだよなー
カイトの、あの炸裂パワーより、もっと凄かったんだろうなー
「…本当にすいません…思い出せなくて…」
「…ごめんね、リューイを追い詰めるつもりは更々無いんだ…」
「そんくらいにしとけよ…」
カイトが、エレベーターのボタンに手を翳しながら言った。
僕の中で…またカイトの胸が痛んでいた。




