⁑ 交流の日(1)
「あーごめん…すまなかった…」
「…」
ハッと我に返った感じに、
カイトはサッと僕から離れると…
プライベートルームの方に僕を手招いた。
「…」
僕は少しだけ顔を赤くしながら、彼の後を追った。
カイトは、例のTVともPCともつかない機械に、手を翳した。
ステーション○○との交流まで、
あと14時間31分…
例のカウントダウンの画面が現れた。
14時間後ってことは…
明日の訓練が終わったくらいの時間か…
「…」
ふと、僕は…自分が何となく、時間の感覚が分かるようになっている事に気付いた!
あーーこれも日本式修行の成果なのか!?
「交流のときは、いつも戦闘部隊が総勢で警備にあたる事になってる…」
「そうなんですね…」
…って、ええっ!?
…それって…もしかして…
「もちろん、お前もな」
「…」
僕は初心者教習生じゃないんですか…?
「あくまでお前は、戦闘部隊のメンバーだからな」
「…そう…なんですね…」
「まあ、今回の相手はつき合いも長いし…警備ったって、ホントに立ってるだけで大丈夫だから」
「…はあ…」
「とりあえず、お前の訓練終わったら、こっちに合流してくれ」
「…わかりました」
それだけ言って、扉に向かうカイトに…
僕は声をかけた。
「…あの…」
「…」
「歌…聞いてくれて…ありがとうございました…」
彼は微笑みながら、答えた。
「…こちらこそ…また、聞かせて」
僕は彼に向かって、深々と頭を下げた。
「また明日、声かける…」
そう言い残して、カイトは出ていった。
でも…そのとき既に僕は、
あと何時間後に、部屋を出なければいけないか、分かっていた。
僕はそれを…敢えて言わなかった。
それから僕はまた、椅子をテーブルにして、遅い食事をして…シャワーも浴びてから、ベッドに入った。
部屋の灯りが消え…僕は目を閉じた。
さっきの…カイトのくちびるの感触が蘇ってきた。
「…」
リューイ…
君も、こんな気持ちだったの…かな…
少しだけ、そんな風に思いながら…
僕は眠りに落ちた。
翌朝(朝なのかどうなのか、やっぱり分からないが)
僕はカイトに呼ばれる前に、目を覚ましていた。
洗面所で顔を洗って…僕はまた言った。
「リューイ…おはよう…」
昨日とは、少しだけ違う気持ちだった。
「リューイ、起きてる?」
カイトの声がした。
僕は、わざと少しだけ時間をかけて、フォーンの所にいって、答えた。
「はい…起きました…」
「ん、じゃあ終わったら来て、待ってるからね」
「わかりました…」
そう答えて、僕は少しだけ微笑みながら…
支度をして部屋を出て、教習機関に向かった。
「おはようございます…」
「おはよう、リューイ…今日、出動するんでしょ?」
ルイスは、いつもの小部屋に向かいながら、僕に訊いてきた。
「…あー、はい…そうみたいです…」
僕は、自信無さげに答えた。
「じゃあ、それまでに少しでもパワーを上げておかなくっちゃね」
「…」
そんな俄かに、役に立つほど上達するとは思えないけどなー
「そう言えば、昨日ね…リューイの真似して、初心者の子に座らせてみたら、スゴい効果があったのよ」
「…ホントですか?」
「あたしもビックリしたわー」
「それはよかったです…」
そういうわけで、今日も僕は座って集中に臨んだ。
「じゃあ、頑張ってね」
「はい」
いつものように真っ暗になった部屋で…
僕は背筋をピンと伸ばして坐禅を組んだ。
そして目の前のコアを、じっと見つめた。
…と、僕の身体のどこかから、昨日カイトから流れ込んだ何かが、じんわりと湧き上がってきた。
その感覚によって、僕の目の前のコアは、みるみる確実に、昨日より大きく明るくなっていった。
まさに、あの地下で見た水晶玉と同じように、発光しながら…ゆっくり少しずつ、色を変えていった。
何て綺麗なんだろう…
他の余計な事を考えるのも忘れて、魅入ってしまうくらいに、それはとても美しかった。
睡魔に襲われる事も無かった。
そのうちに…
その水晶玉の色の変化に合わせて、僕の頭の中に、メロディーが流れてきた。
何とも心地良い…
シンプルな、分かりやすいメロディーだった。
それは何度も繰り返し流れていき…
僕の精神を癒やしていった。
僕の力のこもった集中は、むしろ心地良い瞑想に、塗り替えられていった。
そろそろ2時間だと思うんだけどな…
「右手に集中してみてもいいですか?」
僕はルイスに言った。
絶対にルイスがそこに来ていると、
僕は確信していた。
「…いいですよ…」
ちょっとビックリした口調で、彼が答えた。
僕はそーっと目を開けた。
僕の目の前に、まだそのまま光り続けるコアが居た。
僕はそのまま、それを右手に映した。
「…!!!」
難なく、僕の掌の上に…
光り輝く炎の様な物が、浮かび出た。
「何か…出ました…」
「消さないように、頑張れる?」
「…はい」
元々、その癒しのメロディーのおかげで、肩の力が抜けていた事もあり…
僕が、その光の炎を維持するのに、特に何の力も要らなかった。
「スゴいじゃない!」
「…」
「じゃあ、もうちょっと頑張っちゃう?」
そう言いながらルイスが、壁に向かって手を伸ばすと、そこに白い的が浮かび上がった。
「あすこに向かって、それを投げてみて」
「…」
僕は、手の中の炎を…
思い切り、その的に向かって投げつけた。
シュルシュルシュル〜
ポンッ…
「…」
「すごーい!! 大進歩よ! 流石リューイ!!」
ルイスは、大声で叫んだ。
「はぁ…はぁ…」
確かに…何とか飛んで行って、当たった…
カイトの、火花炸裂するパワーに比べたら、
保育園児の夏祭りの的当てゲーム並みの弱さだけど…




