⁑ 日本人の魂
次の朝も(朝なのかどうかもわからんが…)
カイトに起こされて、僕は訓練に向かった。
いつものように小部屋に入って、さっそく僕は、ルイスに提案した。
「あの…もしダメじゃなかったら…床に座ってやってみてもいいですか?」
「えっ?…床に!?」
「…はい」
「ダメじゃあないけど…」
「じゃあそれでお願いします…」
そう言って僕は、スッと椅子から降りて、床にあぐらをかいて座った。
「…そんな事する人…初めてだわ…」
ルイスは呆気に取られたような顔をしていたが…
「まあ、好きなようにやってみて」
そう言って、また部屋の灯りを消して、出ていった。
僕は目を閉じた。
そこにコアが見えた。
うん…
やっぱりこの体勢の方が、断然集中出来る気がする!
僕はそのまま、じっとコアに集中した。
それでもやっぱり…ときどき睡魔に襲われはしたが。
そのうち…僕の目の中のコアが…
だんだんと大きくなっていく様な気がしてきた。
僕は、改めて背筋を伸ばして、あぐらをかいていた足を、坐禅の形に組み直した。
そして更に、コアに集中した。
まだかな…ルイスさん
絶対2時間経ってると思うんだけどな…
そんな邪念が、僕の中に生じた。
それでも、まだ声がかからないので…
致し方なく僕は、集中を続けた。
だんだんと…そのコアは…
また昨日のように明るくなりだした。
何かすごく明るくなった…
しかも昨日より大きくなった…
今なら、光が出せるかもしれない…
そう思った矢先に、ルイスの声がした。
「もっと集中して…それを右手に集めて」
「…んんんっ」
僕は右手を差し出した。
そして思い切り…そのコアを、右手に集中させた。
右手が、昨日のように…熱くなってきた。
「そのまゆっくり…そーっと目を開けてみて」
ルイスに言われて、僕は…
今度こそ、身体の力が抜けないように…そーっと、そーっと目を開けた。
「…!!!」
僕の右手の掌の上に…
青白い眩しい光が…確かに輝いていた。
「…うおあ…」
「そのまま…そのままなるべく消えないように頑張ってみて!」
僕は必死に、右手に集中した。
ふと気付くと、目を開けている筈なのに…
目の前にぼんやり…水晶玉が浮かんでいた。
僕はその水晶玉の光を、右手に送り続けた。
「そーっと…力を抜いてみて」
「…」
僕は、少しずつ…肩の力を抜いていった。
「身体の力を抜いても、コアのパワーを右手に送れるようになったら、大成功よ」
「…」
と…掌の上の光が、だんだん小さくなってしまった。
目の前のコアも、薄れていってしまった。
「あ…ああーっ」
僕は思わず声を上げた。
残念ながら、そのまま…光はスッと消えてしまった。
「…消えちゃった…」
「…」
それでもルイスは、目を輝かせていた。
「スゴい進歩じゃない!」
「えっ…」
「やっぱりリューイだわ…」
「…消えちゃいましたけど…?」
「目を開けてても、コアが見えたでしょ?」
「…はい、一瞬でしたけど…」
「普通の人は、それが見えるようになるのに、何日も何週間もかかるんだから」
「…」
「今日はここまでにしましょう…」
「…はい、ありがとうございました」
僕は立ち上がった。
ルイスがしみじみ言った。
「妙な事言い出したと思ったけど、床に座った方が集中力が高まる場合もあるのね…」
そりゃあ、そのための坐禅ですからね
「逆に勉強になったわ…ありがとう、他の子でも試してみるわ」
それを聞いて、僕はとても嬉しくなった。
この世界に来て、他の人から「ありがとう」なんて言われるのは、これが初めてだった。
僕はニコッと笑って、ルイスに頭を下げた。
そして振り返ると…
またも、小走りで、そこを出て行った。
「リューイが、あんな風に笑うの、初めて見たわ…」
残されたルイスは、ぽそっと呟いた。
「ホントに…人が変わっちゃったみたいね…」
「あ、ルイスさん…」
他の指導員が、ルイスに声をかけてきた。
「何?どうしたの?」
「僕の受け持ちの子が…もうだいぶ経ってるのに、どうにもオーラが伸びないんですけど…何か良い方法ありますか?」
ルイスの目がキラッと光った。
「そうなの?…じゃあ、ちょっと1回あたしに試させてくれる?」
「あ、はい…是非お願いします」
「実はね、ちょっと新しいやり方を教えて貰ったのよ…それ、試してみましょ…」
「…そうなんですか…」
ルイスは、楽しげに…彼と並んで歩いていった。
今日の訓練は楽しかったな…
みるみるコアが、大きく明るくなっていった。
やっぱり…出来るようになると楽しいんだなー
「…」
これも、坐禅のおかげだな。
昔の日本人はスゴいんだなー
まさに全世界に通用するんだな…




