⁑ コアを感じる(2)
それから何度も何度も…
僕はルイスの指示のもと、目の中のコアに集中するっていうのを繰り返し試してみたが…
残念ながら、掌に光が現れる事は無かった…
「今日はこれくらいにしときましょう」
「…はぁ…はぁ…はい…」
「それでもスゴい進歩じゃない!」
「…ホントに…ビックリしました」
「このまま続ければ、最初の瞑想が無くても、シュッと出せるようになるからね」
「…」
それでも、あれだけやって…
あんなに頑張って、あのレベルだからな…
カイトみたいに、あんなシューッてヤツが出せるようになるのに、一体どんだけかかるんだろう…
僕はちょっと果てしない気持ちになった。
「明日も、同じ時間に来てね」
「わかりました…ありがとうございました」
僕はルイスにお礼を言って…
他に訓練してる子達の視線を避けるように、走ってそこを出た。
早足で廊下を歩いてエレベーターに乗って、48階に上がると、また早足で自分の部屋に向かった。
えーと…この辺だったと思うんだけどな…
間違えないで帰れるかな…
…と、
あれ?
おそらくこの辺…っていう辺りに近付いて来たとき…
1つの部屋の扉が、妙に光って見えた。
…ここか?
僕はその、光っている扉の横のボタンに手を翳した。
シュッと扉が開いた。
「…!」
当たりだ…
「…」
確かに、光ってたよな…
昨日までは全然わかんなかったけど…
これも、もしかして…訓練の成果なのかな…
とりあえず僕は、キッチンに行って…
またお茶を淹れた。
椅子に座ってそれを飲みながら…
僕は、さっきやったように、目を閉じてみた。
目の中に、まだコアが居た。
僕はそれに集中してみた。
ジワジワと…それは明るさを増していった。
だいぶ明るくなった所で…僕はさっきのルイスの言葉を思い出しながら、それを右の掌に集中させてみた。
「…んんんっ…」
思わず声が出てしまった。
そして、集中が途切れないように、そっと目を開けてみた。
右手が、だんだんと熱くなってきた。
それと共に、掌から…陽炎のようにユラユラとした何かが、滲み出ているのが見えた。
「…んんんーっ…」
それが限界だった。
フシューっと、身体の力が抜けてしまった。
もちろん、掌も何事も無かったように元に戻った。
それでもスゴい事だった。
そんなの、今までの氷威の身体だったらあり得ない!
このリューイの身体は、ちゃんとコアを感じる力を持っているって事を、僕は初めて実感した。
例えそれが…こんなチビっちゃいレベルでも…
「ふうー」
僕は、プライベートルームに行くと…
そのままゴロンとベッドに寝転んだ。
(僕も転生テーマで曲作ってみようかな…)
ふと僕は、そんなヒロとの最後の会話を思い出した。
「〜♪」
僕はまた…メロディーを口ずさんだ。
今なら、ものすごく実感のこもった曲が出来るな…
出来たところで、あのバンドで演れる事は、もう二度とないのかもしれないけど…
僕は、頭の中に湧き上がる何度もメロディーを、
何度も繰り返し…口ずさんだ。
何か…楽器が…あればなあ…
僕はふと、思い立って、再びキッチンに行った。
そして、戸棚をガサゴソと探してみた。
「…」
戸棚の奥に、ガラス…のような透明の、とても綺麗なグラスが2つ発見された。
僕はそれを取り出して、水を汲んだ。
そしてそれを、スプーンでそっと鳴らしてみた。
チーン…
まさに…クリスタルっていう音色そのものな感じの、美しい音色が響いた。
そして僕は、そのグラスの中の水の量を、少しずつ調節していった。
チーン…チーン…
やがてそれは、AとB…ラとシの音になった。
僕はそれを、順番に鳴らした。
ラーラーシー…ラーラーシー…
それは、地球の…日本の…
「サクラ」のメロディーになった!
僕は、その…ラとシの部分だけ、そのグラスを鳴らしながら…サクラを歌った。
他に何か出来ないかな…
僕は再び、そのグラスの中の水の量を調節して…
Cと、Gの音を作ってみた。
これなら、2コードの曲が出来ないかな…
「…ぞーうさん、ぞーうさん…おーはながながいのよ〜♪」
お、イケるイケる!
「わたしゃ音楽家、山の子リス〜♪」
おーこの曲も、実は2コードだったのか〜
「さいた〜さいた〜♪」
あ、これはダメだ…Fが出てきちゃう…
僕はそんな感じで…
いつまでも、そのグラスを鳴らしながら、日本の童謡を歌っていた。
同じグラスが、もっといっぱいあったらいいんだな。
せめてドレミファソラシド…で、8個。
黒鍵もあわせたら13個か…
でもなーせめて下のソから上のソくらいまでは欲しいな…そしたらプラス10個くらい…
いやでも、この同じグラスでそこまで広げられるだろうか…
「…」
さしあたりは、8個で我慢しよう…
そして僕は、フォーンの前に行って、手を翳した。
「…エルン…いますか?」
「なにー?どうした?」
すぐに返事がきた。
「あの…ちょっと欲しい物があるので、もし、時間があったら…またストアにつき合ってもらいたいんですけど…」




