⁑ コアを感じる
僕はステージに立っていた。
横にはヒロと迅…そして後ろには翔太…
いつものメンバーだ。
翔太がカウントを出した。
あれ…?
曲が始まっている筈なのに、音が聞こえてこない。
横を見ると、ヒロがいつものように、ギターのイントロを弾いていた。その手の動きから、その曲の…どこを弾いているのかすぐ分かった。
ヒロの手の動きと、翔太のドラムを叩く動きから…
歌が入るタイミングも、ちゃんと分かった…
僕は歌い出した。
…えっ?
歌ってるのに…聞こえない。
自分の声が、全然聞こえてこなかったのだ。
僕は必死に声を張り上げた。
それでも、聞こえなかった…
僕は泣きそうになりながら…歌い続けた。
…!?
ヒロ…?
横でギターを弾いていたヒロの姿が、だんだんと霞んでいった。
慌てて振り向くと…迅も…翔太も…
みるみるうちに、霞んで見えなくなっていった。
「うわあーーっ!」
僕は力一杯、叫んだ。
そして、その…自分の声に驚いて、飛び起きた。
「…!!」
夢…だったのか…
「はあ…」
僕は大きく溜息をついた。
そしてちょっと不安になって…
小さい声で歌ってみた。
「〜♪」
寝起きでガサガサ声ではあったが…
ちゃんと自分の歌声が聞こえた。
僕はとりあえず、ホッとした。
「リューイ…起きてるか」
フォーンからカイトの声がした。
僕は急いでベッドから降りた。
そして、フォーンに近付いて、言った。
「起きました…」
「…じゃあ、支度して、行ってこい…場所は覚えてるよな?」
「はい、大丈夫です…ありがとうございます」
僕は、洗面所に行って…顔を洗った。
鏡にはやっぱり…リューイが映っていた。
「おはよう…リューイ…」
僕は、呟くように言った。
そして僕はキッチンに行った。
エルンに教わったおかげで、今日はお茶を飲めた。
うん…緑茶とも紅茶ともつかない味だけど、これはこれで、十分美味いな…
朝、お茶を飲めるようになったってだけでも、だいぶ進化した気がした。
少しホッとして…
また僕は、例のピチピチの制服に着替えた。
あーあ…またあの眠くなる訓練か…
若干めんどくさいなーと思いながらも、僕は自分の部屋を出た。
シューッと閉じられた扉に向かって(ちゃんと帰って来れますように…)と願ってから…僕はエレベーターに向かった。
えーと…26階だったよな…
無事26階でエレベーターを降りて、僕は何とか自力で、昨日の教習機関に辿り着いた。
入ってすぐの所に、ルイスが待っていた。
「おはようございます…」
「おはようリューイ、調子はどう?」
「…いや、特に何も…変化なしです…」
「じゃあ今日も頑張ろうねー」
そう言ってルイスはまた、昨日と同じ小部屋に僕を連れて行った。
「リューイさん、おはようございます」
「あ、おはようございますー!」
すれ違う男の子達が、僕に向かって、目を輝かせながら声をかけてきた。
「…おはよう…ございます…」
僕は力無く、彼らに返した。
「…何か、リューイさん雰囲気変わったね…」
「やっぱり調子悪いのかなあ…」
「俺、聞いたんだけどさー」
「…」
「えっ、それホントー?」
「…」
あーなんかまた、色々ウワサされてる…
シュンと下を向く僕に向かって、ルイスが言った。
「気になる?」
「…」
「仕方ないわよね…なるべく気にしないようにするしかないわね」
「…はい」
昨日と同じく、僕らはテーブルを挟んで座った。
ルイスは手を上げて、部屋の灯りを消した。
昨日より、もっと暗くなった気がした。
「目を閉じて…コアを思い浮かべて」
「…」
僕は目を閉じた。
そこには既に、あの水晶玉が浮かんでいた。
「コアが見える?」
「…あ、はい」
「じゃあ、そこに見えるコアに集中して」
「…」
「そのまま集中しててね、また2時間経ったら様子を見に来るから」
「…はい」
僕はまた、必死にそれに集中した。
もちろん、たまに他の事を考えてしまったり…
たまにうつらうつらしたり、しながら。
ようやく長い2時間が経って…
ルイスが部屋に戻ってくる音がしたので、
僕はそっと目を開けようとした。
「そのまま…」
「…」
「そのまま、目を閉じたまま…最後の力を振り絞って集中してみて」
「…っ」
言われるがまま…僕は身体中に渾身の力を込めて、
目の中の水晶玉に集中した。
「…」
ふと…目の中の水晶玉が、ほんの少し明るくなったような気がした。
と、同時に…
身体中が、ジワっと熱を帯びてくるような感覚に包まれた。
「その感覚…」
「えっ…?」
僕は、目を開けた。
「今、少しオーラ出てたわよ」
「…ホントですか?」
「もう1回やってみる?」
「…はい」
僕はもう1度…
同じように、渾身の力で集中した。
目の中の水晶玉が、更にまた光った。
「そのまま手を出して」
「…」
言われるがままに、僕は右手を出した。
「その光を、今度はその手に集中してみて」
「…」
スゴく抽象的な言い方だなー
そう思いながらも、僕は、何となくそのように…やってみた。
そのうちに、じわじわと…
その右手が、熱くなってくるのを、僕は感じた。
「ほら、そのまま…目を開けられる?」
「…」
そっと目を開けて見ると…
「えええっ!?」
ビックリし過ぎて、僕は…
一気に身体の力が抜けてしまった。
それと同時に、集中も溶けてしまった…
「ちゃんと形になったじゃない」
「…」
本当に一瞬しか見えなかったけど…
僕の右手の掌の上に、確かに何かが光っていた。




